『case46 抱かれた犬』
色々とわからないことが起こった後でcaseをこなして眠りにつき、目を覚ますと昼になっていた。ちょうど午前のバイトがない日だったのでよかったがもしあれば確実に遅刻どころか無断欠勤するところだった。
僕は支度を整えて、部屋を出てバイト先に向かった。
寒いと思っていたら、雪が舞い始めた。
僕は『雪』をテーマに天罰の内容を考えてみることにした。
雪が降るとどんなことが起こるだろうか?
真っ先に思い付くのは、滑って転ぶことだろう。でも、それもある程度積もっていないといけないし、道が凍結するのには氷点下になる必要がある。雪が降っているからと言って必ずしも凍結するとは限らない。
それならもっと直接的な被害がないかを考えてみる。
例えば、今はそんなに強く降っていないから、雪で前が見えないということはないが、吹雪になれば前が見えずに何かにぶつかったり、交通機関がマヒしたりして、困ったことになるだろう。
他にも雪だからこそというものはあるだろう。
例えば、雨だと傘をさすが、雪ならささない人もいる。
寒い時期なだけに、濡れたままでいると風邪を引いたり、インフルエンザ等も流行する季節なだけに病気になってしまうこともあるだろう。
時期的にイベントも多いこの季節だからこそ、自分だけ病気で参加できなかったというのだけは避けたいだろう。
ここで『ダメだな』と思ってしまうことがあった。それは天罰としてそれをどう当てはめていいのかもわからないことだった。
視界不良による事故や交通麻痺は、天罰対象だけでなくたくさんの人に迷惑をかけてしまうし、一生の思い出を奪う権利が僕にあるとも思えない。
迷惑行為をしている人だけが苦しみ、そして反省して行いを正してくれるのがベストだが、僕の考えたものではそれも少し難しそうだ。
そんなことを考えていると信号待ちの一台の車が気になった。
運転手の膝の上あたりに何か動くものがあった、いや、いた。
僕も犬の種類は詳しくないからわからないが小型の犬を籠にもいれず、自分の膝の上に乗せているのだ。
どう見ても、大人しくしている感じではなくはしゃぎ回っているようにしか見えない。
たまに助手席に乗せている人とか、窓から犬が顔を出しているのを見たことはあったが、それは明らかに種類が異なっていた。
明らかに運転の邪魔になっているし、僕がこんなことを考えている間に信号は既に青になっているにもかかわらず、犬にかまって出発する気配すらない。後ろの車からクラクションが鳴らされてはじめて気づいたように発進していった。
犬を可愛がるのは人の自由だと思うが誰かを危険にさらすような可愛がり方をしてはいけない。
・対象
30代女性
・行為
犬を膝の上にのせて車を運転した。
・天罰内容
木からの落雪の音に驚いた犬が暴れ、人気のない場所で電柱にぶつかる。
僕は『実行』と心のなかでいい、あの運転手が早く犬を何とかすることを願った。車のながら運転による事故はあとを絶たず、被害者もたくさん出ている。
車関係の天罰を下すたびに思うが、車という人を殺してしまう物を操作するときくらい他のことを我慢すればいいし、重要なことなら停車すればいい。
法律も厳しくなることが決まったみたいだし、一人の勝手な事情で誰かを危険にさらすような運転手が減ればいいなと思った。




