『天野一族』
話についていけない僕を尻目にミナモさんが、
「日本の神で一番偉い神様は誰か知っているか?」
聞かれても神様の名前なんて知らないし、色んな神様がいるなかで序列みたいなものがあることすら知らなかったので
「わからないです。」
「まぁそうだろうな。
日本は八百万の神がいると言われている。
些細な物にでも神が宿っているとされる。何より、日本は神道と呼ばれる神を敬う宗教があり、神社が多く建てられている。
さっきの話に戻るが、日本で一番偉い神様は名を『天照大神』という。聞いたことくらいあるだろう?」
「その名前なら聞いたことあります。」
「お前らの一族である『天野原』という一族は『天照一族』の分家で能力的にはかなり天照に近いものを持っている。
母親から聞いてわかっていると思うが、『天野原』の力は天候を操る力を持っている。
大雨を降らせて洪水を起こさせたり、土砂崩れを発生させたり、太陽の照りつけを厳しくして猛暑にしたり、雨を降らせずに水不足にだってできる。
だが、この能力は強すぎるからあまり天罰には向かない。」
「回りの人とかを巻き込んでしまうからですか?」
僕が聞くとミナモさんは頷き、
「人は自然には勝てない。いくら科学が発展しても、頑丈な家を建てる技術を得ても、被害を減らせるだけでなくすことはできない。
人間にできることは被害を減らすための準備をして、そして無謀なことをしないことだけだ。
それほどに危険な力をお前が持っているということを自覚しなければいけない。
自らの『能力』が、誰かの救いの手になる反面で、誰かを傷つける拳にもなることを力ある者は常に考慮しなければならない。」
「僕には何ができるんですか?そんな危険な力では天罰には使えないですよね?」
「太陽の光を眩しいと思ったことはあるか?
雨に降られて濡れたことはあるか?
雪が降って凍えたことはあるか?
常に近くにあるからこそ気づかないこともある。
『力』の使い方はお前が考えて、いくらでも応用がきかせられる。
要は使うお前がどう使うかにかかっているということだ。
お前の力の使い方に口出しはしない。だが、今のうちに力の使い方は覚えておけ。『決定戦』がどんな戦いになるかわからないからな。
俺達の時は候補者同士の一対一の勝負でトーナメントだった。
シシガミにお前が太刀打ちするためには能力を最大限に使いこなさないと厳しいものになる。
caseをたくさんこなして、力を使え、俺ができるアドバイスはこれくらいだ。
あとは………………………………」
ミナモさんは言いにくそうにしていたので、僕が
「どうかしたんですか?」
「セイが、お前の親父が、お前をいつも見てるからな…………」
そう言ってミナモさんは光に包まれて消えてしまった。
『お父さんが僕を見ている』、それだけで少し嬉しい思いになるのは離れていたからこそ感じる気持ちなのかもしれない。
いつもそばにいて、説教されるのを疎ましいと思う人がいるとして、そんな経験のない僕には聞くだけで羨ましい話だったからだ。
僕はミナモさんに言われた通り、caseを続けるためにパソコンに向かった。




