『忍び寄る影』
僕は部屋に帰るとシャワーを浴びて、パソコンを起動した。
『神様ゲーム』を開いて、今日の天罰に関しての評価をみた。
『case39 並んだ自転車』
評価 B
事案発掘評価 B
経験値 通常(50)+事案発掘(20)=70
『詳細』
『case40 塞がれた自販機』
評価 A
事案発掘評価 A
経験値 通常(70)+事案発掘(30)=100
『詳細』
『case41 出せよ指示機!』
評価S
事案発掘評価 A
経験値 通常(80)+事案発掘(30)=110
『詳細』
『case42 衰えを知れ!』
評価 B
事案発掘評価 C
経験値 通常(60)+事案発掘(10)=70
『詳細』
『case43 詰まったトイレ』
評価 A
事案発掘 S
経験値 通常(70)+事案発掘(40)=110
『詳細』
現在の総括
獲得経験値 460
累計経験値 2500
僕は累計経験値を見て、一位のシシガミどころか虹川さんの半分以下であることが気になった。
別に『ゼウス』になりたいわけではないし、神使も僕を『ゼウス』にしたいわけではないようだからこだわることではないが、負けて良い勝負があるのかと心の一番奥で思ってしまう。
要するに勝った先の賞品よりも目の前の勝負を真剣に戦うことが大事なのではないかと思う。
僕は今まで気がついていなかっただけで、実は負けず嫌いだったのかもしれない。
そんなことを考えていると、電話がなり、画面を見ると運送のバイトでいつも同じトラックに乗る前田さんからだった。
「もしもし、天野です。
どうかしましたか?」
『ああ、ごめんね。実はうちの営業所に50代くらいの女の人が天野くんのことを探してるって訪ねてきたんだよ。
何で探してるのかとかは聞いても教えてくれなかったらしいんだけど、何かうちの偉いさんが探されてる天野くんって大丈夫?みたいになってたんだよ。
その女性に心当たりとかある?』
「前田さんのところにも来たんですか?
他のバイト先にも来てたみたいなんですよ、そんな感じの人が。
でも探されるような人間でもないですからね。
50代くらいの女性の知り合いなんていませんしね。」
『そっか。
お母さんとかはないの?』
「あっ、あるかもしれないです。
でも、しばらく会ってないですけど、バイト先とかは教えてないので、来れるわけもないですし…………………」
『そうなんだ。お母さんは大事にしなよ。俺も最近になって親孝行って大事だなって思うようになってきたからさ。
まぁ、俺の親は両方死んでるけど、嫁さんのご両親はお元気だからそっちに何かできたらなと思ってるんだけどね。』
「はい、考えときます。」
『じゃあ、とりあえず問題はなさそうでしたって上に報告しとくよ。
じゃあ、また今度ね。』
そう言って、前田さんは電話を切ってしまった。
お母さんとは連絡を取ってないし、バイト先も教えてないから訪ねてくること自体が不可能だと思うし、それに古い知り合いに会ったこともないから誰かから聞いたとしても、何ヵ所もバイト先に現れることなんてできないと思う。
お母さんではない50代の女性にバイト先にまで来るような知り合いはいないし謎は深まるばかりだった。
疲れたのでベッドの上に寝転び、静かに目を閉じた。
「なぁセイ。
お前はあいつのことをどう思う?
いろんな経験を積んであいつは神に近づいてるぞ。
C級にもしないで、普通の人として暮らさせてやった方がよかったんじゃないか?
………………………………こんなこと聞いても、しゃべることも許されてないお前には返事もできないよな。
彼女も動き出したよ、それもお前の仕業なのか?
すべてが見えてるお前はいったいあいつをどこに連れていきたいんだ。そのために俺はあいつをどう導けばいいんだ?
教えてくれ、セイ……………………………」
天野から『神使』と呼ばれる男は暗い大きな部屋の真ん中にある大きな結晶に向かってすがり付くように言った。




