『case41 出せよ指示機!』『case42 衰えを知れ。』
僕は電車を降りて、バイト先に向かって歩いていた。何も考えずに歩いていると急に車が左折して来た。もう少しで轢かれるところだった。
あの車が後ろから来ていたのは知っていたが、左折の指示機は出ていなかった。
そして僕に当たりそうになったにも関わらず、車はそのまま走り去ってしまった。
指示機は絶対に出さなければいけないもので、歩行者や自転車からすれば車が自分の方に来ないことを確認する手段になるし、後続車としても前の車が何の前触れもなく曲がれば追突の危険性がある。
なぜ出さないのかが僕には到底理解できないが、どんな理由があったとしても、自分を含めた周囲の安全のために指示機は出さなければいけない。僕は天罰を下すことにして、
・対象 車の運転手
・行為 指示機を出さずに曲がる。
・天罰内容 指示機を出さずに曲がって、後ろからトラックに追突され、首に軽傷をおう。
僕は『実行』と心の中で言い、その場を離れた。
あの運転手が、二度と同じ過ちをせずに天罰を受けないことを願いながら。
昼からのバイトも終わり、帰り道の途中で横断歩道でもないところをわたろうとしているおじいさんを見つけた。
ちょうど時間帯的には帰宅する人の車で車の列がほぼ絶えることのない状況になっている。
横断歩道に立っていれば、歩行者優先なので車も止まらなければいけないが、横断歩道でもない道なら車も止まらないだろう。
しかも位置的には数メートル行けば信号つきの横断歩道があるのだからそちらに向かって歩いた方が安全だし、必ず渡れるチャンスが来るが、おじいさんは信号の方には行かず、渡れるチャンスをうかがうかのように、左をキョロキョロ、右をキョロキョロとしている。
車の列が本の少しだけ途絶えたのを見るとおじいさんは渡り始めた。
でも、僕みたいな若い人なら渡れたであろう、そのチャンスはおじいさんのチャンスとはならなかった。
近くの側の車線はなんとか通り抜けたが、奥の車線はどんどんと車が来ていた。運の悪いことにおじいさんが渡っている少し前の曲がり角で大きなトラックが曲がったため後続者がおじいさんに気がつかずにスピードをあげながら、突っ込んできた。
車はおじいさんに気づき急ブレーキをかけ止まったが、後ろから追突されてしまった。
事故を起こした車やその周囲の人が駆けつけるなかで、おじいさんは何もなかったかのように去っていった。
あのおじいさんが原因で事故が起こったのに、おじいさんはこの場から消えてしまったのだ。
無責任にもほどがあると思い、天罰を下すことにした。
・天罰対象 おじいさん
・行為 横断歩道でもないところを渡り、事故の原因になったにも関わらず、その場から消えた。
・天罰内容 同じように横断歩道でもないところを渡ろうとして、スピードの速い車を避けようとして転び、右手首と足首を捻挫する。
僕は『実行』と言いながら、車に近寄って自分のできることを手伝った。他の人が警察に連絡し、僕は救急車を呼んだ。
警察が来たあとも、おじいさんがいた話等も警察にした。
昔ならできたことも年を取ることで、できなくなっていくことを自覚し、年相応の行動をとるべきなんだと思う。
無理をして何かをすれば、自分のことを危険にさらすだけでなく、周りの誰かをも危険にさらしてしまうのだと自覚してもらいたいものだ。




