『case40 塞がれた自販機』
ファミレスのバイトが午前だけだったので、次のバイトに向かうため駅に行くと次の電車まで少し時間があったので、ホームのイスに座り、空を見上げていた。
夢で見た父の言葉が本当なら、僕が悲しめば雨が降るのかと思い、悲しくなるようなことを想像してみた。
映画の泣けるシーンを回想したり、漫画の一場面を思い出したり、色々としてみたところ、悲しい気持ちにはなった気がしたが、空は何も変わらなかった。
やはり、夢は夢であり実在することも実現できることもないのではないかと思う。
気分を変えるために、イスから立ち上がって自販機に向かうと、自販機の周りにサラリーマン風の人達が5、6人集まって話していた。
別に自販機で物を買おうとしていること自体に引け目を感じることもないし、正々堂々と自販機に向かえば退いてくれるだろうと思って自販機に近づいたが話に夢中なのか、誰一人としてその場から動かない。
僕が自販機を覗き込んだりしても誰も僕を見てすらいない。
僕もだんだんと腹が立ってきて、ここまで近づいていても誰一人として動かないこと自体が許せなくなったので、天罰を下すことにして、
・天罰対象 自販機を囲むサラリーマンたち。
・行為 自販機を囲んで話していて、自販機を使えなくする。
・天罰内容 持っていた飲み物をぶつかられた拍子に重要な書類にかけてしまう。
僕は心の中で『実行』と言ってから、自分がぶつかると面倒なことになるなと思い、その場から離れた。
そのままイスに戻って座ると少し見た目の怖いおじさんが自販機の方に向かっていき、無理矢理に自販機のところまで行った。
その時、缶コーヒーを持っていた男にぶつかり、思いっきり目の前の男が持っていた封筒にコーヒーをかけてしまった。
慌てて封筒をハンカチなどで吹き始めるサラリーマンたち。その横で我、関せずと言った感じでコーヒーを買うおじさん。
サラリーマンの一人が文句を言おうとしたが、周りに止められて、おじさんもそれを横目にみながらその場から離れていった。
慌てたサラリーマンの中には電話で何かを一生懸命に話している人もいた。
電車が来たので僕もイスから立ち上がり、電車に乗った。




