『父の言葉』
眠りにつくのに時間はかからなかった。
色んなことが起きて、それを整理するだけの元気もなくて、一日で一個も天罰をしないままベッドに倒れこみ、
「家について考えるとか………………………」
僕はそう呟いて、そこで意識が途切れてしまった。
「星、テレビばかり見て怠けてないで本を読みなさい!
知識は人の人生を左右するとても大事なものなんだ。
テレビなんかより本を読みなさい。」
祖父の怒鳴り声が聞こえる。5歳の時の僕は祖父の言っていることの意味が全くわからなかった。
当然と言えば、当然である。24歳の今なら理解できるが5歳の子供に言うことではなかったのだと思う。
昔気質でまさに雷オヤジと言われるくらいに怒鳴っていたし、頑固で決めたことは曲げない人だった。
当時の僕は何で怒られているのかもわからずに泣くことしかできなかった。僕が縁側で泣いていると父がやった来て
「雨が……………降ってきたね。」
僕がお父さんを見ると、お父さんはとても悲しそうな顔をしていた。
雨が降っているのがそんなに悲しいことなのかと子供心に思った。
僕は父に向かって
「お父さんも泣きたいの?」
お父さんは笑顔になって、
「星は優しいね。
お父さんは大丈夫だよ。」
お父さんの笑顔を見ると、僕はいつも元気がでてくるからお父さんの笑顔が大好きだった。お父さんは少し真面目な顔になって、
「星、泣いちゃダメだよ。
星が泣けば、お空も悲しんで雨を降らせてしまう。
星が怒れば、お空も怒って雷を落としてしまう。
星が寂しさで震えれば、お空も震えて雪を降らせてしまう。
だからね星。
星はいつも笑っていなさい。そうすればお空も笑って晴れになるから。できるかな?」
僕はお父さんの言っていることの意味がわからなかったが、祖父の言っていたことに比べれば何となくではあったが意味がわかったので、笑顔になって元気よく「うん!」と言った。
お父さんが優しく頭を撫でてくれて、空を見上げるといつの間にか雨は止んでいた。
僕は勢いよくベッドから起き上がった。
そうだあの時、父は涙を流す僕を慰めるために言っていた言葉かあった。もしあれが本当のことなのだとしたら………………
思えば色んな場面で急に雨が降ったり、急に雷が鳴ったり、時期でもないのに雪が降ったこともあった気がする。
たまたま見た夢で勝手に決めることはできないし、夢なのだからもしかしたら自分の都合のいいように脚色されているかもしれない。
そんなことを考えていると、また意識が薄れて眠りに落ちてしまった。




