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神様ゲーム -天罰を下すのは-  作者: TAKEMITI
ゼウス決定戦
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『case37高速カーブ』・『case38縦列停車?』

  僕は運送のバイトも終え、社員の人に看板を貰って用意してもらった椅子に座った。普段なら、暇すぎてダルいバイトであるが、今日は体調が良くないことから動かなくても良い仕事は救いだった。

 交差点の邪魔にならないところに座ってオープンハウスや新店舗の広告を見せているだけ、たまに社員の人がサボってないかを確認しに来るくらいで、特に制約があるわけではないが、長時間他のことをしたりするのは、広告塔としてイメージが悪いので、この会社は携帯や本を読むのも10分くらいとなっており、インターバルも10分となっている。

 つまり一回携帯や本を読み始めたら10分以内にやめなければいけないし、やめてから10分は何もせずに看板を持っていなければいけない。だいたい二時間くらいで終わる仕事だし、トイレにいきたくなれば社員の人に電話すればトイレの間だけ代わってもらえるので、そこまで辛い仕事というわけでもない。

 歩道の邪魔にならないところとなるとかなり車道に近い位置になるので近くを車が走り抜けていくこともたまにあった。

 僕が椅子に座って、30分くらいが経ったときだった。車のナンバーを足したりして遊んでいると、急に「危ない!」と叫ぶ声が聞こえ、僕が回りを見ると、僕の本当にすぐ横を車が左折していった。

 社員の人が駆け寄ってきて、

「天野君、大丈夫?もうちょっと中に入ろうか?」

 どうやらさっき叫んだのは社員の人だったようだ。大きな道だし、車も飛ばしているから減速もせずに曲がってきた車が僕に当たるのではないかとヒヤヒヤしたのだろう。

「大丈夫ですよ。この場所にいればさっきから何台もあんな感じで曲がっていきますから。」

「そう?まあ、天野君が大丈夫なら良いんだけど、危ないことがあるかもしれないから、回りもちゃんと見ててね。

この前、別の会社の看板持ちの人が車にはねられた事故もあったみたいで、うちも警戒してるからさ。」

「わかりました。」

 社員の人がどこかにいってしまうと、確かに減速せずにカーブを曲がるのは危ないと思う。

 高速で曲がることは、歩行者や自転車が横断していたときに対応ができなかったり、運転操作を誤る危険性があるため、できる限り低速で曲がった方が良い。

 だが、後ろの車のことを考えたり、急いでいたりするとどうしても直線とおなじスピードでカーブに入ってしまう人がいるのだ。

 見た感じでは、すべての車が高速で曲がっているわけではなく、20台に1台くらいの割合かもっと少ないくらいだろう。

 事故が起きる前に、誰かが悲劇に遭う前にやめてほしいと思ったので、


対象 高速でカーブを曲がる運転手

行為はそのままで、高速でカーブを曲がった。

天罰内容 高速で曲がった先に車が出てきてあと少しのところで激突するところで車が停車した。


 僕は『実行』と心の中で言い、交通マナーをしっかりと守って安全に走行してほしいと心から祈った。


『case38 縦列停車?』

 だが、僕の祈りはあまり通じなかったようで、目の前ではいくつもの交通マナー違反が繰り返されていた。

 いつもはあんまり気にしていなかったが、よく見ていると速度が明らかに法定以上出ていたり、赤信号なのに突っ込んだりと危険な行為から、かなり遅いスピードで走っている車もあった。

 最低速度も法律で決まっているから、ゆっくり走りたくても限度というものがあるだろう。

 次に気になったのが、信号のすぐ横にガソリンスタンドがあり、そこから出てくる車で、赤信号で停車している車の前、停止線を越えたところに無理矢理割り込んでいる車がいたことに驚いた。

 確かに交通量が多くてなかなか車列に入ることが難しいのはわかるし、いくら待っても入れない可能性だってあるが、停止線を無視して車列に入ろうとすると横断歩道上に止まることになったり、最悪の場合は曲がり角から少しはみ出しかけるところで止まることになってしまう。

 ガソリンスタンドがある場所が悪いとも言えないし、難しい問題ではあるが、曲がってきた車とぶつかることや歩行者などの横断を妨害することにもなるので曲がりやすい方向に出てからUターンするなりするべきなのだろう。


対象 停止線を越えたところに割り込み停車した車の運転手。

行為 停止線を越えたところに割り込み停車した。

天罰内容 曲がってきたトラックにサイドミラーを壊される。


 僕は心の中で『実行』と言い、体にいきなり重い物をかけられたような疲労感を感じた。

 昨日からの疲労に加えて、今日も5件の天罰を下したのだから、それなりの代償を払っていることになるのだろう。

 そんなことを考えていると社員の人が駆け寄ってきて

「どうしたの、天野君?

つらそうだね、何かあったの?」

「いえ、今日は朝から体調が悪かったので、それです。

大丈夫です、もう少し座ってたら終わりなので。」

「ええっ、そういうのは始めに言ってよ。

 もっと日陰とか交通量の少ない楽なところとかにしたのに。」

「すみません。」

「とりあえず、ちょっと早いけど上がっていいよ。

どうせ、客なんて来ないんだから。」

社員が笑いながら言ったので、僕も笑い、お言葉に甘えて早めに切り上げさせてもらった。


 道路を挟んだ反対側の歩道でニコリと笑いながら、誰もいない空間に向かって

「ねえ、彼はどうかな?

 彼はどんなキレイな『色』をしてるかな?」

 何もない空間から、話しかけた人に向かって

「前提が間違ってるよ。

 彼が『キレイな』色であるかはまだわからないのですから。」

 無邪気な笑顔を浮かべたまま、

「そうだね。どっちにしても明日が楽しみだよ。」

 そう言って長い髪をたなびかせながら去っていった。

  たまたま通りかかったおじさんが呟いた。

「誰かと……話してたよな、今の娘?」

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