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神様ゲーム -天罰を下すのは-  作者: TAKEMITI
ゼウス決定戦
39/136

『case28 飛び出した自転車』

「case28 高校生男子。

帰宅途中の交差点で、自転車の前輪が車道に飛び出している。」

 あまり、その現場が想像できない。僕が見たことがないからなのだろうが、ちょっと出ているくらいなら別に気にする必要もないのではないかとも思えてしまう。

 それに自転車の場合、自分が乗るサドルから前輪の先まで少し距離があり、そのほんの少しの差で車道に出てしまい気がつかないことだってあるのではないだろうか。

 車側の立場からも考えてみると、確かに自転車が車道に出ていることによって起こる弊害は色々あるのかもしれない。

 例えば信号のない横断歩道なら、歩行者等が優先されることから横断妨害の違反金を払わなければいけなくなったり、あるいは突然飛び出してくることを想定して中央線よりを走らなければいけなくなったり、普通に通れるはずだった道を少し工夫しなければいけなくなる。

 いつもと違うことをすれば、それだけで思いがけないことが起こる可能性も増えるというものだ。

 飛び出していた側の高校生の事情も考慮しなければいけないかもしれない。

 例えば、お腹が痛くてトイレに向かって急いでいたのかもしれないし、さっき言った通りに自転車の構造上の都合で飛び出していることに気がついていないのかもしれない。

 本人が気づいていなくても、誰かに迷惑をかけているのだとするなら天罰を受けるべきなのだろうか?

 あまり納得がいかず、『中』を選択した。


1.車のサイドミラーと前輪が接触した勢いで転ける。

2.自転車で走っていたところ、脇道から車が飛び出してきて、車は停止したが驚いて転ける。

3.上級生に喝上げされる。


 3 は今回の内容に関係が無さすぎるのでない。

1は車の勢いにもよるが、そんなに大事故になるようなことではないだろう。ただ、高校生の過失でサイドミラーに傷がつく、あるいは大破した場合に修理費を払う必要があるかもしれない。

 そうなれば、もっと引っ込んでおけばよかったと後悔するかもしれない。

 2はまったく関係ないところで、自動車側の観点から同じように飛び出してきたものに対する怖さというのが、伝わって良いのかもしれない。悩んだが、車が壊れたら困る人もいるだろうし、サイドミラーが壊れただけでなく、他の事故にも繋がりかねないので危険だと思い、2を選択して『決定ボタン』を押した。


・天罰対象

 高校生男子

・行為

 交差点で自転車の前輪が車道に飛び出している。

・天罰内容

 自転車で走っていたところ、脇道から車が飛び出してきて、車は停止したが驚いて転ける。


 僕は『⚡』ボタンを押し、雷が二本落ちた。『結果報告』が表示され、

「男子高校生は赤信号で自転車を停車させ、スマホを見ていました。

あまり前を見ていなかったので自分の自転車が車道に入っていることに気がつきませんでした。男子高校生は気づいていませんでしたが目の前を通っていた車は自転車を避けて走行していました。

 翌日、彼が登校しようと自転車で走っていると脇道から猛スピードの車が飛び出してきました。幸いぶつかる前に車が停車したので、事故にはなりませんでしたが、驚いた弾みで転んでしまって手首を捻挫しました。

 今回の評価はBです。経験値を60獲得しました。」

 僕としては良い感じで天罰を下せたと思ったが、評価としてはそこまで高くなかった。『評価内容』に進み、

「今回の天罰は、飛び出していた自転車側の身の安全が大事だった訳でも、それを避けた車の損傷具合が大事だった訳でもありません。

 重要なのは起こる可能性がある第二次、三次の被害です。

自転車を避けた車を、さらに避けた対向車が歩道に突っ込んだり、電信柱に激突したり、急ブレーキをかけたために後続車に追突されたりとさらに大きな事故に繋がる危険な問題なのです。

 対向車目線では、自転車が反対車線の車道に出ていることまで確認してはいません。そうなると、突然対向車が自分の側にふくらんできたように見えるので、あたらないための措置を何かするでしょう。

 歩道に突っ込んだ先に歩行者がいれば、サイドミラーに傷がつく程度のことはほんの些細なことです。

 お店に突っ込んだりすれば、お店の修繕費からダメにした商品の弁償まであるでしょう。そうなればサイドミラーを直すお金よりさらに沢山のお金が必要になるでしょう。

 確かに男子高校生は、怖い目に遭ったのかもしれませんが、なんの関係もない人やお店が被害を受けてしまう可能性に比べれば甘すぎると思われます。

 天罰の結果は、そのまま対象者に降りかかりますが、その結果の先に起こることに関しても考慮が必要です。

 今回の天罰でも、車が飛び出してきたときに他の歩行者等がいた場合どうなるのかということや車の運転手の急ブレーキでの二次災害も想定しなければいけません。

 かなり天罰を下すことにも慣れてきているようですが、過ぎた力を行使している以上、その結果についても多くの責任が生まれます。

天罰の『その先』を意識して、天罰が下せるようになれば良いですね。」

 確かに道を通行しているのは対象者だけではない。他の人達もいるなかで、対象者には対して危害が及んでなくても、天罰に巻き込まれた人というのも出てくるだろう。

 今回のcaseでいうなら、男子高校生は登校中だったのだから、同じように学校へ向かう生徒がいても不思議ではない。

 そういった人達にまで危害が及ぶのであれば、天罰としては不公平さすら感じることになるのだろう。

 とりあえず、累計経験値が1130、今日だけで310の経験値が増やせたので、ランクを確認することにした。

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