『case2 石を蹴る少年』
「少年は帰宅途中で、見つけた石を蹴りながら歩いていました。石を蹴ることに夢中で周りを確認しないどころか、前すら見ていませんでした。ふらふらと歩いていたので、道行く人の邪魔になっていました。
・・・か、小さい頃は僕もやってたかもしれないな・・・」
そんなことを呟いて僕は、昔を思い出すと今ほど車もたくさん走っていなかったし、危ないことも少なかったからできたことなんだろうなとか思いながら、『軽度』を選択する。
1.蹴った石が散歩中の犬に当たり、飼い主に怒られる。
2.蹴りすぎて、草むらに入ってどこに行ったかわからなくなる。
3.蹴ろうとしたら、間違ってコンクリートの地面を蹴って、つまさきが痛くなる。
まず、1は当たった犬が可哀想だからやめておこうと思い、2は内容的に天罰といえない気がしたので、3を選択して『決定』ボタンを押す。画面が確認画面へと進み、
・天罰対象
少年
・行為
石を蹴りながら歩いていた。
・天罰内容
蹴ろうとしたら、間違ってコンクリートの地面を蹴ってつまさきが痛くなる。
僕は内容を確認して『⚡』ボタンを押す。
この前のように雷が人に落ちるアニメーションになり、『結果報告』と表示される。
「少年は、地面をかなりの力で蹴ってしまい、つまさきが30分くらい痛い状態が続きました。
今回の評価はCでした。経験値を10獲得しました。」
まあ、どっちとも言えない結果な気がした。30分間も痛いのは何か別の怪我なのではないかと疑ってしまうし、他の人から見たら、どんな風に写ったのかとも考えてしまった。『評価内容』を確認すると、
「今回の天罰は、つまさきを強打するという少年に対して実害があるものであり、人に迷惑をかけていたという事実は認識していませんが、本人が痛い思いをしたことにより、次を無くす効果は少なからずあったと思われます。」
ピンポンダッシュの時の評価内容でもあったが、どうやら天罰とは痛さをともなっている方が、その行為をした人に反省を促す結果を得られるのかもしれないと思った。
翌日・・・
バイト終わりで道を歩いていると、いきなり、
「痛い!」
という声が聞こえて、声のする方を見ると男の子がつまさきを押さえてしゃがんでいた。
最近では少し声をかけただけで不審者扱いされることもあるらしいから、僕は面倒を避けて、そのまま通りすぎた。