『case20 詰められない座席』
あと経験値10というところで『B級神様』になれなかったので、次に進んでみた。
「case20 駅の待合室にいる人達。
暑い夏の日、駅の冷房のきいている待合室の限られた座席に、荷物を広げたり、中途半端な場所に座り座席を占領している。」
バーベキューの時の大学生のように何人もへの天罰だ。
個人的な行為に対しての天罰が多かっただけに、全員を改心させるような天罰を選択するのにはなれていない。
行為自体も判断が難しい。確かに冷房のきいた待合室に入りたいと思う時はあるけど、みんな同じ気持ちだから普通に入れないときだってある。
『重度』を選ぶほどの事にも思えなかったが、このゲームを始めたときに例題で『優先座席に荷物を広げていた20代男性(僕のこと)』に対しての天罰では、自分がそういうことをやっているから迷惑な行為だと対して思わないのだろうと言われたことがあった。
ここで天罰を要求されているということは、僕にはわからないけど他の人から見たら迷惑な行為なのかもしれない。
つめて座れば20人くらい入れるのに、荷物や座り方が雑なために7・8人しか入れていないなら、入れている人よりも入りたかったが入れなかった人の方が多くなるのだろう。
そう考えると、入れている人が入れなかった人に迷惑をかけているということになるのだろうか?
何度考えても『重度』にするほどの事には思えず、『中』を選んだ。
1.冷房が故障して、外より暑くなる。
2.駅員に注意される。
3.強面の人が大勢で強引に席に座ってくる。
最近、思うのが誰かに注意されるというのは結局のところ、受け手がどのように聞くかによって効果が異なる。
意味のある注意とそうでない注意に分けられてしまうのだろう。
説得力のある人とそうでない人がいて、普段からしっかりとしている人の言うことなら聞く気になるが、普段からだらしない人が正論を述べていても『お前には言われたくない』となるのではないだろうか。
そういう意味では3は強面の人達による力技なので、対抗するのが難しいのかもしれないが、まじめに他の人が座れるように座っている人もいるのではないかと思うと、複数人いる中の一部がマナーが悪いだけだとするなら、とばっちりを受ける人達が出てしまう。
それならいっそのこと、待合室自体が使えなくなれば、みんなが平等に暑いのを我慢することになるので、それの方がいいなと思い、3を選択して『決定ボタン』を押した。
確認画面に進み、
・天罰対象
待合室に座っている人。
・行為
座席を占領している。
・天罰内容
待合室の冷房が故障して、外より暑くなる。
僕は『⚡』ボタンを押して、雷が三本落ちた。
『結果報告』が表示される。
「真夏の猛暑日、駅の待合室には多くの人がつめかけていた。
冷房の効いた待合室は25人が座れるようになっており、入るだけなら40人くらいはできるのだが、先に入っていた15人くらいが席や床に荷物を広げてしまっているため、他の人達が入りにくい雰囲気を作っていた。
理由はわからないが、突然冷房が故障して待合室内はサウナ状態になり、外にいるより汗だくになってしまった。
今回の評価はBでした。経験値を40獲得しました。」
よし、とりあえず『B級神様』になるための経験値の獲得に成功した。しかし、B評価ということはもっと最適な天罰が他にあったということになる。
難しい判断ではなかったが、表示された選択肢のなかでは納得のいく内容だっただけに気になって、『評価内容』に進んだ。
「今回の天罰は不特定多数の人がいる状況で、それぞれの人が思い思いに行動していたために、偶発的に起こってしまった迷惑な行為でした。
一人が荷物を広げていたからといって、この待合室の規模から考えると迷惑になることもないかもしれません。
また、一人が座席を広く使っていたとしても、他の利用者が詰めて座っていれば、迷惑な行為にもならなかったかもしれません。
今回の行為では、荷物を広げて座る人や座席を広く使っている人や、その両方のことをしている人がいたために、定員よりも少ない人数しか待合室を利用できなくなっていたのです。
今回の天罰は、猛暑日の暑さのなかで涼をとりたいと考えていた人達の中のごく一部が迷惑な行為をし、そのような行為をする人が複数いたために、多大な迷惑をかける行為になってしまっていたので、複数人を一発で懲らしめるには適当な天罰だったでしょう。
しかし、この内容の天罰は無差別なものになり、ルールを守って待合室を使っていた人々や体調が悪くて休みたいと思っていた人達にまで効果を与えてしまいました。
できるだけ、行為を罰されるべき人間にだけ下せる天罰が理想でしょう。」
確かにそうだ。
待合室にいるすべての人がルールを守っていなかったのではなく、その一部が行っていただけの可能性を僕は考えずにいた。
待合室が外の環境より快適になるようになっているのも、利用者の中に体調が優れない人や子供、老人等をいたわる目的もあるのではないだろうか。
普通に利用することには文句はないが、必要としている人がいるのに、それを邪魔する人間だけを排除するような天罰が良かったのだろう。
もしかしたら2や3の選択肢の方が良かったのかもしれない。
人が人に天罰を下すということは本当に難しいものだと今になって強く実感した。




