『case16 返されない商品』
「case16 40代主婦。
スーパーで買い物中に違う売場に商品を放置する。」
『神様ゲーム』を起動して、画面に写り出された言葉を呟いた。
スーパーでバイト経験がある僕はこの行為がいかに迷惑な行為であるかを知っている。
スーパーが大きければ大きいほど売場同士の距離は離れていくので戻しに行くのも大変なことはわかるけど、店側の事情としては商品の管理の問題や売場の担当も違うことから面倒なことになりかねない。
さらに、お客さんからしても商品が雑に並べられていれば良い印象は持たないだろう。そうなれば店の客離れが起こることもあり得るなど重要なことなのである。
しかし、この程度の行為で『重度』は重すぎるので『中』を選択する。
1.警備員に注意される。
2.店員に怒られる。
3.近所の人に見られていて評判が落ちる。
警備員に注意されるは、身体が大きくて強面の人なら効果があるかもしれないけど、見た目が怖くない人なら逆ギレされそうだと思う。そうなれば、店員さんにも同じことが言える。
要はどんな役職の人に怒られるかではなく、誰に怒られるかが重要になってくるということだ。
3は、近所の人に見られたことによって、どんな効果があるのかわからないが、何か辛い目にあうだろうし、『近所の人』というのが特定できなければ、それはそれで怖いものを感じた。
僕は3を選択して『決定ボタン』を押した。
確認画面に移動して、
・天罰対象
40代主婦
・行為
商品を別の売場に放置する。
・天罰内容
近所の人に見られていて評判が落ちる。
僕は『⚡』ボタンを押し、雷が二本落ちた。
『結果報告』と表示され、
「40代の主婦は、買い物中に一度買い物かごにいれた商品を財布の残金では足りないことに気付き、近場の売場に商品を置きました。
しかし、その行為を近所の人に見られたことによって、評判が落ち、町内会等で主催した行事の参加率が悪くなるなどの問題に悩まされるようになりました。
今回のの評価はB評価です。経験値を40獲得しました。」
僕は結果に対して考えることをせずに、『評価内容』に進んだ。
「今回の天罰は、誰かが一生懸命にやっている行為に対して、何の苦労もしていない人が無に返す行為です。
スーパー店員さんもお客のニーズに答え、より良い商品を分かりやすく配列するための工夫をしていることでしょう。
悪気がなくても、人を傷つけてしまうことはあります。
しかし、今回の行為は自分本意に考え、勝手な場所に商品を置いてしまったことは店側の営業努力を踏みにじることであり、同時に、一緒に置くことによって品質の低下を起こし商品を売れなくする可能性すらあり、金銭的なダメージを店側に与える行為でした。
警備員や店員に注意されたとして、一時的な反省や怒りを与えたとしても根本的な解決がなけば、同様の行為は無くならないでしょう。
その点、今回の天罰は天罰対象のみでなく、近所の人達に行為の悪質性が伝わり、他の人が同様の行為をすることに対して、やった人が悲惨な目にあったことから、抵抗感を与える効果がありました。
天罰を評価する基準は、それぞれ違いますが一回の天罰で多くの者を改心させられるような天罰が望ましいでしょう。」
今までの『評価内容』の基準もわからなかったし、誰がこの評価をしているのかわからなかった。
もし、この評価を『ゼウス』がしているなら、文句の一つも言いたくなる。そんなことを考えていると画面に
「あなたの現在の累計経験値は400となりました。
『B級神様』になるには累計経験値を500にする必要があります。
あなたが望む『神の力』が手にはいるかは保証できませんが、現実に向かい合い、立ち向かい続けることが、あなたに足りない力を与えることでしょう。
逃げずに現実に立ち向かい、あなたが知らないあなたの事情を知ることを目標にしてみてはいかがでしょうか?
神になる理由は、現実と向かい合った先に見つけられるモノなのですから。」
僕は2つのことに気がついた。
まずひとつ目に、この評価をしているのは、きっとあの『神使』と名乗った男なのだろう。
そして二つ目は、『神の力』が手にはいる前にこのゲームの参加者である、鈴木さんの知り合いの『日野さん』という人に会えば何かを変えることが出きるかもしれないということだった。




