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神様ゲーム -天罰を下すのは-  作者: TAKEMITI
ゼウス決定戦
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『導きの夢』

あまりにショックが強すぎたため、『神様ゲーム』を起動できずに3日が経った。

鈴木さんや佐藤君に相談しようかとも思ったけど、信用してもらえなかった時のことを考えると、それもできずにいた。

バイトに行って、仕事を終えて、なにもする気になれずにベッドに横になる。

天井を見上げながら、自分が下してきた天罰を思い浮かべる。

本当に対象者に天罰が下っているなら痛い目に遭ったり、恥ずかしい目に遭ったり、会社をクビになったり、事故で大怪我をした人だっていることになる。

僕が下した天罰は人を不幸にしているのではないか、このゲームの言うように行為を悔い改めるための天罰は下せているのだろうか。

答えのでない疑問に悩みながらもゆっくりと目を閉じた。


目を開くと、辺り一面真っ白な世界が広がっていた。

どこまでも続いているような真っ白な世界のなかで、ポツリと僕だけが立っている。

「な、なんだこれ?

確か、ベッドの上にいたはずなのに・・・・・」

そう呟いたあとで、ベッドの上にいたのだから

「ああ、これは夢だな。

考え事してる間に寝ちゃったんだ。」

そう自分に言い聞かせるように言って目を閉じ、『起きろ、起きろ』と心のなかで何度も思った。

しかし、夢から覚めることはなく、現実に戻ることができない。

「天野星、あなたに足りないものは現実を受け止める力だ。」

いきなり声がしたので、声の方を向くと見たこともない男が立っていた。僕が驚いて何も言えずにいると、男は

「高校受験の時も、『自分ならもっと賢い高校に行ける』と言い張って滑り止めの高校に入り、大学受験も同じ過ちを繰り返して、やりたいこともない大学に進んだ。

なにかに真剣に取り組むこともなく、ただ回りの顔色を伺うだけの日々でお前は何を得た?

大学を卒業して、就職できなかったのも、現実を受け入れきれずに『自分にしかできない、自分に見あった仕事があるはずだ』なんて都合の良い言い訳をして、誰にも必要とされないかもしれない恐怖に怯えてるだけなんだよ。」

「誰だ、何で初対面のやつにそんなこと言われなきゃいけない?」

「私が誰なのか、なぜ私がこんなことを言うのか、それは全部あなたならもうわかっているはずだ。」

「わかるわけないだろう、ここはどこで、あなたはいったい・・・・・。」

僕が言いかけたところで、男は背中に納めていた白い大きな翼を広げる。

「私は神の使い、便宜上のため神使と呼べ。

あなたはパソコンゲームの真実に気づいているのに、目を背け、

現実から逃げるための言い訳を探している。

そんなに、あの事があなたから現実と向かい合う力を奪ってしまったというのですか?」

「・・・・・・神使。

あなたが僕の何を知ってるのかは知らないけど、偉そうに言うな。」

「そうですね。では、私は私の仕事をします。

まず、あなたがされていた『神様ゲーム』は、1000年に一度、すべての神の頂点である『ゼウス』の称号をかけて、候補者たちが競い合う戦いです。

この戦いの形式は、時に軍師となり自分の仕えた大名に天下をとらせるかや一番短期間にお金持ちになれるのが誰かを競ったり、一番単純なものでいえば、一対一で一番強いのは誰かを競うもの等がありました。

今回は現『ゼウス』が、争いを好まない上にゲームオタクで、仕事をしない人だからこの形式になりました。」

「『神様代行になって迷惑な人に天罰を下す』って、そういうことなんですか。」

「察しが良くて助かります。

現『ゼウス』は、候補者の中から『天罰』を正確に的確に下せる者を探しています。

それは、自分が『ゼウス』になったときに一番大変だった仕事のひとつだからです。」

「その『ゼウス』になると何が良いんですか?

僕みたいな普通の人間が急に神様になるなんて信じられないですよ。」

「正確に言うなら、『急に』神様になるなんてことはありません。あなたは一度半覚醒状態の時にゼウスを決めるお祭りの説明を受けているはずです。

そこで『どこの一族の』という言葉を聞いたと思います。」

「そ、そういえばそんなことがあったような・・・・・」

「つまり、あなたは基から神として生まれ、そして、神になるための試練を受けていたのです。」

「その試練が『神様ゲーム』ってことですか?」

「あのゲームは『ゼウス』の気まぐれであり、先程も言いましたが職務放棄でもあります。

ただ、『ゼウス』の決定がこの世界の全てである以上、このゲームを通して次代の『ゼウス』を決めることに変わりはありません。

話を戻しますが、あなたは神の一族である天野原一族の末裔です。あなたの素質が基準以下なら、このゲームを見つけることもゲームを起動することも操作することできません。

この意味がわかりますね?」

神使の言葉で、誰も知らないゲームだったこと、佐藤君が操作できなかったことを思い出した。

「神の一族にしか存在を知らせない、プレーすることもできないゲームだったってことですね。だから佐藤君が操作できなかった。」

「ご友人はただの人ですからね。

我々の誤算は、インターネットなるものの存在を軽く見すぎていたことです。

本来なら知られるはずのなかったゲームを世間が認知し出してしまった。それはその場にいても、誰に会わなくても世界と繋がることのできるインターネットのせいです。

余計な邪魔が入れば、それだけ候補者が神の適格から外れてしまいます。

ふるいにかけているのに、ひとつも残らなければ意味がありませんからね。」

「僕は別に『ゼウス』になりたいとは思わない・・・です。

だいたい、神になるってどういうことなのかもわからないですし、お祭りで神様を決めるのもどうかと思います。」

神使はため息をつき、

「人の寿命は、長くて100年ほどです。

神になると病原菌や身体に異常をもたらす物質がない天界で生活することになるため、病死や事故死などの死亡原因はなくなります。そのため、200年は生きることができるようになります。

外見も神になったところで止まり死ぬまでそのままです。

永遠の若さを手に入れることが可能になります。

神の仕事は様々で天罰を下すのもその仕事のひとつです。

その他に気候を調整したり、時には疫病を流行らせて人類の進歩を後押しすることもあります。

気に入らなければ、動物を全滅させることもできます。

それほど強大な力を手にすることが出きるのも『ゼウス』になりたい人の目的になるでしょう。」

「僕は別に永遠の命も強大な力にも興味はありません。

そんなものをほしい人だけでお祭りをしたら良いじゃないですか。僕はただ平穏に今まで通り生きていければそれでいいんです。」

「あなたが勘違いしていることが多くありすぎて何から訂正すれば良いのか困ります。

まず、神になっても永遠の命は手に入りません。神が死ぬから次の『ゼウス』を決める必要があるんです。

二つ目、平穏に暮らしたいと仰られましたが、それは他の誰にも保証できないものです。

次代の『ゼウス』が、人類を絶滅させることもないとは言いきれません。実際にそのような考えの『ゼウス』は存在しました。

好戦的で戦争を引き起こす様な人が『ゼウス』になれば、第三次世界対戦、核戦争が起こるかもしれません。

先程も言いましたが『ゼウス』が全てである以上、その判断が世界を大きく変えてしまうのは明らかです。

自分の望みを叶えたいのなら『ゼウス』になるか、同じ様な望みを持つ同志を探して、協力するしか道はありません。

そして、まだまだありますが、もう時間もありませんので、最後にひとつ。

このゲームの参加者に拒否権はありません。

70億人の中に混じったほんの一握りの神の一族の中から、さらに『ゼウス』になる適格を有した者のみが、神によって参加を許される、それがこのゲームなのです。

あなたは『C級神様』になっていますから、第一次予選は突破しています。

一次予選を通過した者は『神の力』が顕現していきます。

最初はおそらく『神の目』でしょう。他にも能力はありますが、天罰を下された人間がわかるようになり、下された天罰の内容まで見えるようになります。」

僕は頭痛がしてからの映像が見えたことを思い出した。

「そ、その『神の力』って言うのはなんなんですか?」

「『神の力』は人によって違います。

火神、水神、雷神、風神等と言われる『神の力』もありますし、色んな物の能力を引き出す力も存在します。

ただ言えるのは、『ゼウス』になればすべての力が手にはいるということだけです。」

「どうやって手に入れるんですか?」

「時間と共に勝手に発現する者もいれば、何かのきっかけを必要とする者もいます。ですが、『神の目』が使えるようになるのも速い者で、『B級神様』になってからだと言われていますので、『力』が欲しければ頑張って天罰を下しまくることですね。

それでは時間ですので、お話はここまでです。

あなたの望む『平穏』とやらのためにも『あなたが』努力するしかもう道はないんですよ。

それではまた。」

「ち、ちょっとまだ・・・・・・・・」

僕は勢いよくベッドから起き上がり手を前につき出して、

「聞きたいことがあるんだよ!!」

白い世界は無くなり、いつもの僕の部屋の風景が広がっていた。

つき出した自分の手を見つめながら、

「あれは夢じゃない。現実を受け止める力・・・・・、そんなものを欲しくても手に入らないじゃないか。」

僕はそっと手を下げて、頭を抱えながら呟いた。

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