『case1 ピンポンダッシュ』
「小学生の男子は友達と一緒に近所の家でピンポンダッシュをした。
・・・か、昔はよくあったイタズラだったかもしれないけど、今は家の作りとかから考えるとできなくなってるんじゃないかな。」
そんなことを言いながら、『重さ』でそれしか選択できない『軽度』を選択した。画面に具体的な天罰内容が表示される。
1.ピンポンを鳴らしたところで、その家の人に見つかり怒られる。
2.鳴らしたところで、親に見つかり怒られる。
3.鳴らして、逃げようとしたら転んで、膝を擦りむく。
なるほど、その場で見つかって怒られるのか、それとも見つからないけど怪我をするか、どっちもイタズラの代償としてはあり得る話かな。
僕はよく考えずに2を選択し、『決定ボタン』を押した。
画面が確認画面へと進み、
・天罰対象
小学生の男子
・行為
ピンポンダッシュをした。
・天罰内容
鳴らしたところで、親に見つかり怒られる。
僕は『⚡』ボタンを押した。
すると画面が切り替わり、黒い雲から雷が落ちるアニメーションになり、そして雷が人に落ちた。
『結果報告』の表示が出て、
「少年はピンポンダッシュをしたところ、親に見つかり、叱られた上で、その家の人に謝りにいきました。
その行為に対して親は、お小遣いを3ヶ月無しにしました。
今回の評価はDです。経験値を5獲得しました。」
まあ、イタズラくらいなら親に怒られて終わりだからこんなものでいいかと思ったが、『評価内容』を確認すると、
「少年のピンポンダッシュは、それ自体が危険な行為ではありませんが、家主がチャイムに反応して、何らかの二次災害を招く恐れもあり、危険な行為です。
同時に家主が危険な人物であった場合も想定しなければいけないので男の子にとっても危険な行為と言えるでしょう。
親に怒られたくらいで、子供がその危険度に気づけるかどうかは子供次第ですが、実害のある天罰が有効だったと思われます。」
この文章を読んで、ピンポンダッシュがただのイタズラですまされた時代が終わったのだと実感した。
翌日、昼過ぎにバイトに向かって歩いていると一軒家の玄関先で頭を押さえられた男の子と頭を手で押さえるお母さんを見かけた。
「本当にうちの馬鹿息子がすみませんでした。」
側を通りすぎたとき、お母さんが言っているのが聞こえたが、僕は気にすることなく通りすぎてバイトに向かった。