『Case15 疾走するバイク』
バイト先の常連さんの話やその他のことについてのことが脳裏をよぎり、さらに昨日の突然の頭痛やその後に見えた映像のこと等が起こったことから、この『神様ゲーム』がただのゲームではないことを感じながらも、『神様ゲーム』を起動した。
僕も馬鹿じゃない、わからないのであれば検証すればいいだけのことだ。偶然なのか、それともこのゲームは本当に天罰を下す物なのかを確かめればいい。
「Case15 20代男子大学生。
渋滞する道路で、路側帯を自動二輪で駆け抜け、次々に車を追い越していく。」
これは、確か道路交通法に違反する行為だったはずだ。
こんなの天罰を下さなくても、警察が取り締まればいいだけの話じゃないか。そんなことを思いながら、『重さ』を決める。
犯罪行為なんだから『重度』でいいだろう。
そう思って、『重度』を選択した後で、
このゲームがもし本当に天罰を下す物だった場合、この男子大学生はどうなってしまうのだろう、という考えがよぎる。
しかし、『重さ』を変えることはできないから、表示された選択肢から出来るだけ軽いものを選ぶことにして選択肢を見た。
1.車と接触して右肩を脱臼する。
2.左折車に巻き込まれ大怪我をする。
3.トラックを追い越そうとして、バランスを崩し転倒して、後続車に轢かれて死亡する。
3はもしものことがあった場合に取り返しが効かないので即座に選択肢から外した。
肩を脱臼するくらいなら、まだましな気がしたが、これが本当に天罰を下すものの場合、天罰の効果は薄いだろう。
この学生も怪我をするなら何かしらの教訓を得られるものであるべきだ。
そうすると、選択肢は2の方が良い。
でも、実際に起こるなら・・・・・・・・・・・・・。
僕は頭を抱え込み考えるが、判断がつかない、ただのゲームだと割りきることができたなら迷わず2だ。
でも、本当に天罰が下るなら一番軽い怪我の1を選択するべきだ。
そんな時に、頭にフッと浮かんだ言葉があった。
『どんな結果になったとしても自業自得。』
『肉体的に苦痛を与えたり、後遺症を残してでも、反省をさせるための天罰』
1つはゲームを始めた時の説明文の一部で、もう1つはこの前、佐藤君が言っていたこと。
そこで僕の考えは、見えないなにかに背中を押されるように2を選択していた。
確認画面へと進み、
・天罰対象
20代男子学生。
・行為
路側帯を使ってバイクで車を追い越していく。
・天罰内容
左折車に巻き込まれ大怪我をする。
僕は『⚡』ボタンを押していた。
雷が3本落ちて、『結果報告』と表示される。
おそるおそる進むと、
「渋滞を無視して路側帯から車を調子にのって追い越していた学生は信号のない交差点を左折しようとした車に巻き込まれ、転倒して、バイクの下敷きになった右腕と右足を骨折して、3ヶ月の入院が必要な大怪我をしました。
今回の評価はAです。経験値を50獲得しました。」
僕はなにも考えることなく、『評価内容』に進み、
「今回の行為は、本来なら警察によって取り締まられなければいけない犯罪行為です。
しかし、その周知が足りないために、知らず知らずのうちに行ってしまっている行為でもあります。
大怪我をした学生が自分の行為が原因で、大怪我をしたと認識するのは意識が回復して事故の話を警察にしたときでしょう。
当然、確認を怠って左折した車の運転手にも責任はありますが、事故の原因は学生の行為だったことは間違いありません。
学生は反省する前に、事故の原因となった行為に対する社会的制裁を受ける形になります。
今回の天罰は、警察が取り締まりきれない行為を明るみに出す天罰であったため、評価はA評価です。
『introduction』でも説明しましたが、迷惑な行為をしている人に天罰が下るのは自業自得であり、あなたに責任はありません。
同様に、天罰が下るのは条件が揃ったときであるため、学生がこの行為をしさえしなければ、天罰の機会は来ないことになります。深く考えずに、迷惑な行為をなくすために天罰を下していきましょう。」
『条件が揃ったとき』とは、要するに『渋滞の道』を『バイクで車を追い越す』行為があったときで、そういう行為をするバイクの運転手がいなくなれば、永久にこの天罰が実行されることはないという意味だと僕は思った。
そして、この天罰が下る前にこのような行為をする人がいなくなることを願ってパソコンを閉じた。
しかし、その願いは叶わなかった。
怖くて2日間パソコンを触らずにいたところ、テレビのNEWSで男子大学生の事故の情報が流れていたのである。
初めは偶然で片付けようとしたが、『渋滞の道』、『バイクで車を追い越す』、『バイクの下敷きになり、右腕と右足を骨折』、
『入院3ヶ月』、このワードが聞こえてきた時に僕は確信した。
『神様ゲーム』は、神様に代わって天罰を本当に下すゲームだということを・・・・・・。




