『カナミVSバグ』
周りを見回すとカグチと天野はそれぞれ、フウシとサイガ、アレキとコトに邪魔されて、こちらに合流できないようだ。
敵側としては分散して、ある程度勝率の高い組み合わせで向かってきているようだ。
だが、能力が未知数のゼウスである天野はおそらく誰が相手をしても倒す事はできないだろう。
フウシが力を上げていたなら、カグチを困らせるかもしれないが、倒す事はできないだろう。
つまり、彼らの仕事はあくまで時間稼ぎで、バグと自分の戦いの時間を稼ごうとしているしか思えない。
戦闘能力で言うなら圧倒的に自分が不利だ。
カナミは自分の置かれた状況を整理していた。
他の二人に合流することも考えたが、バグの能力は一対多数の方が効果的になるので、自分の方から合流しようとは思えなかった。
「向こうの戦いはあまり心配してないんだろ?
お前は卑怯な奴だからな、自分が不利だとか思ってんだろ?」
バグが言ってきた。
「そのための布陣なんだろ?
お前が俺と一対一でやるためにあいつ等に無理させてるとしか思えないな。」
「わかってんだろ?
俺らの狙いは壁を動かす事を阻止する事じゃない。
お前を倒す事なんだよ。」
「お前らが俺のやり方が気に入らないってのは、もう50年以上前から知ってるよ。
俺とお前のケンカで最終的に俺がリーダーになったが、あの勝敗にも不満をお前が持ってたのは知ってる。
言いたい事があるなら面と向かって言え。
こそこそ隠れて悪巧みしてないでな。」
「ほざいてろ!
生まれ持った力こそがこの世界を支配する権利なんだよ。
なのになぜ、お前が俺の上に立ってやがる?
今なら確実にお前を倒す事ができる。このまま、俺の力を使って上層界も木っ端微塵にしてやる。」
「そんな事が言えるほど力を手に入れたっていうのか?
お前のそれを他の奴が見たら負け犬の遠吠えだと思うんだろうな。」
「だま………………、なんだ?」
辺り一面が真っ赤に染まり出した。空を見上げると大きな炎の塊が空一面を覆い尽くしていた。
「カグチの攻撃だな。何をしてるんだ?」
「フウシの風を止める力で攻撃を防がれ過ぎてキレたんじゃないか?
器の小せぇ奴だな。
だが、さすがにフウシもあれを防げるとは思えないな。
移動するぞ、このまま巻き込まれるつもりはないからな。」
バグはそう言うと走り出した。天野の方を見ると向こうも避難し始めたようだ。バグを無視する事もできないからカナミもバグを追いかけた。
バグは腕を組んで仁王立ちして、カナミが来るのを待っていた。
既に大きな炎の塊は消えている。フウシがあれを消せるとは思っていなかったので驚きはしたが、既にどうでも良かった。
カナミと戦うことが今の自分の存在理由だからだ。
カナミの姿が近づいてくる。自然と口角が上がる。
今、この瞬間のために俺は生きてきたのだから。
仁王立ちのバグは笑っているように見えた。余裕を感じているようだ。つまり、罠を仕掛けたりもしている可能性がある。
慎重に場所を選んで地面に立つとバグが、
「さぁ、50年前の続きだ。
今度こそ、お前を倒して俺が頂点に立つ。」
「猿山の大将になりたいがために仲間を犠牲にしてるのか?
正直に言うが、天野はそこが知れないぞ?
とんでもない遠隔攻撃だけじゃなく、他にも能力をたくさん持ってる。頂点になるなら天野を倒さないといけないがお前ではあいつには勝てないよ。」
短い付き合いだが、底知れない強さを持っている事は確かだ。
「黙れ、臆病者め!
長い者に巻かれてそうやってその立ち位置を得たんだろ。
立ちはだかる壁は俺が全部粉々に爆破してやるよ。」
どうも正常な判断ができていないようにカナミには感じられた。
バグが手を上げた。バグの能力は体から発する音で爆発を起こす能力で、音の大きさによって爆破の威力が変わる。
あの構えなら指を鳴らすかあるいは他の部位を叩く等の攻撃だろう。
指を鳴らす程度の音ならたいした威力にはならないが、叩く力によってはかなりの威力になる事も考えられる。
バグは指を5回鳴らした。小規模の爆発が5回起きたが、そういう能力で、爆発までのリミットや発動条件をわかっていれば避けるのは難しくない。
慣れとは怖いものだなと思った。
前回、戦った時は避ける事ができずに何発かくらい、ギリギリの状態だった。
リミットに関しては予想よりも2・3秒ほど早くなっている。
避けれない程でもないが、こちらの油断を誘うための罠である可能性も拭えない。
地面に向かって手をかざし、地中の鉄分から金属の槍を造り出して構えた。
金属を思いのままに精製・加工できる能力。
それがカナミの力だが、硬度の高い物やレアメタルのような物は精製に時間がかかるし、レアメタルに関しては精製・加工共に成功率が低く扱いにくい。
そのため、事前に造っておき、それをストックする事で戦闘に使える。
争い事等があってもカナミは話し合いでの解決を優先するのは、戦いたくないと思うのと同時に万が一に備えて強力な金属を温存するためでもある。
先程作った槍は、この場所にある鉄分から作った物だが、攻撃形態のある金属を持つことによって、攻撃形態に加工した金属を簡単に呼び出す事ができるからだ。
とりあえず、槍を構えて地中の鉄分から矢を造り出してバグに向かって放った。どこからともなく爆発するバグの遠距離攻撃に対し、てカナミは造り出した武器を使って直接攻撃する方が得意なので、距離を詰めるための牽制の意味で放った。
バグは中規模の爆発を一つ起こし、爆風を使って矢を打ち落とした。ここまではお互いに計算通りの攻防が続いている。




