『天野VSコト・アレキ』
カグチとサイガ・フウシの戦いが始まったので、僕もカグチさんに合流しようとすると、アレキの指先から雷が放たれ行き先を塞いだ。
「あなたの相手は僕達です。」
「大人しく降伏してください。
無駄な争いをする必要はないじゃないですか?」
僕が言うと、コトが
「あなたにとっては無駄でも、私達には重要な意味のある戦いなんです。
カグチさんがどうなろうと、私達は気にしませんがカグチさんはきっとカナミさんの助太刀に行きます。
そうなるとバグが不利になるので、我々は全力であなた達を止めなければいけないんです。
それに、あなたは神になってまだ間もない。神同士の戦いには慣れていないんでしょう?
あなたを倒すことができれば我々に対する見方も変わるはずです。
能力の優劣ではなく、いかに上手く使いこなすかで価値を決める世界になるはずです。」
正直に言うと僕は先ほどの攻撃も含めて、一方的に遠距離から不意討ち的な攻撃をする事に関してはかなり上達したと思う。
ミナモさんから近づかれる前に倒す方法を作っておけば、敵の数を減らせる上に楽に勝負が決するからだと言われたからだ。
僕は仕方なく神器の剣を抜いた。
正直に言うと剣を構える必要はないが接近戦になった場合は少しくらいの気休めにはなるからだ。だが、僕の意図とはまったく違うとられ方をしたようでアレキが
「本気モードってことですね。
それならこちらも………………」
アレキが何かをしようとした所で、空が一面真っ赤に染まった。
正確に言うなら、カグチの出した大きな炎の玉が空を覆い尽くしたのだが、僕は初めて見る光景に太陽が落ちてきたらこんな感じなのかなと悠長に思ってしまった。
そんな僕を引き戻したのは、アレキとコトだった。
「ヤバイですね。あれが落ちてきたらこの辺は焼け野原になりますよ。」
「フウシもあれは消せるかわかりませんね。
とりあえずこの場所から離れた方が良さそうです。」
そう言って東の方へと移動していった。このまま逃がす訳にはいかないので僕も後を追った。
アレキとコトを追いかけならが、後ろを見るとカグチの作った大きな炎の玉が、小学生の頃理科の実験でやったろうそくの火にビーカーを被せておくと少ししたら火が消える実験と同じような感じで炎の玉が消えた。さっきのコトの発言からフウシという人が炎を消せるようなことを言っていた。
カグチさんの心配をしながら、アレキとコトに追い付くとアレキは雷をまとった剣を抜いていた。よく見ると、僕が先ほど遠隔攻撃で倒した敵が倒れていた。
仲間が倒れているところに誘導されたのかと思ったが、倒れている人たちは動けそうにもないようだ。
わざわざ仲間が倒れている所に誘導する意味もないかと思い、僕も神器を構えた。アレキは剣を構えて少し前進したのに対して、コトは少し下がり地面に座り込んだ。
僕は意味がわからずにコトの動きに目がいった。
その隙をついてアレキが一気に距離を詰めてきた。意味のない陽動だったのかと思うと、コトは何か大きな物を取り出した。
実物を見たことはないが、あれは琴という楽器ではないかと思う。
名前の通り、琴を使う能力なのかと考えたが、音を伝える楽器から神の能力を推察すると音を衝撃波のようにする攻撃しか僕には思いつかなかった。
アレキの攻撃を避けて、牽制の意味も込めて剣を大振りした。
牽制の意味があったようで、アレキは少し下がった。
コトは息を大きく吸い込みゆっくりとはいて、琴を弾き始めた。
その音色はとても穏やかでゆったりとしていて、攻撃をされているという感じではなかったし、実際にダメージを負うこともなかった。
先ほどの座り込んだのと同じで意味がない、ただの陽動だと思いアレキを見るが、アレキにも動きがない。
僕が向かい合っている二人には変化がないが、先ほどとは僕の視界が少し変わっていた。
幻覚を見ているわけではなく、アレキ達の後ろに倒れていた人達が消えている。
何かが動くのが視界の隅に見えてそちらを見ると、剣や槍等の武器が飛んできていた。
先ほどはミナモさんの水壁によって防がれた武器の投てき攻撃だった。僕は攻撃を避けて、周りを見渡すと倒れていた人達が回復していて僕を取り囲んでいた。
「クソ、あんな攻撃は反則だろ。」
「何の前触れもなくドカンは予測無理だな。」
「やられた分やり返すぞ!」
周りの人達の士気が高まっていくのを感じる。コトの弾いてる曲も少しアップテンポのものになっている。僕はコトに向かって、
「音楽で傷を癒したり、鼓舞したりする能力ってことですか?」
「人は好きな物を楽しんでいる時にリラックスして疲れを癒したりします。アスリートがレース前に好きな音楽を聴いてテンションをあげる事だってあります。
音楽とは、人を良い方向に向かわせるための指針になる存在です。
僕が奏でる音楽は誰かの背中をそっと押すくらいの力でしかありません。」
「この人達のテンションの上がり方は以上じゃないですか?
ある意味ドーピングをしているようにも見えますよ。」
「海賊が歌を歌うのはなぜだか知ってますか?」
「楽しいからですか?」
僕はそんなことを考えたこともなかった。映画とかアニメとかで海賊は陽気に歌っているイメージがあったが、それも昔から伝わってきたイメージの話であって『なぜ?』と聞かれても『そういうものだと思っていた』としか答えられない。
コトの聞きたい答えはそういうことではないと思った。コトは淡々と
「怖いからですよ。
無法者である彼らは誰に何をされても文句は言えない。
自分達より強い者に出くわせば死ぬ。
海とは穏やかで安全な場所ばかりではなく、予想外の嵐や大波によっていつ船が沈むかもわからない。
そんな恐怖を抱えながら、彼らは海を進んでいたんです。
死への恐怖から目をそらすために陽気なフリをして、歌を歌い、酒を飲んで騒ぐ。
海賊の歌にはそのような意味があった。恐怖が大きいほど曲は陽気に、声は大きくなる。
彼らの士気が上がっているのは、あなたへの恐怖が大きいからですよ。
あとは、音楽の好きな人は曲に影響されやすい。
ここには音楽の好きな仲間が多かったというのもあります。」
「この戦いはそんな状態でもやめられない戦いだってことですか?」
力の差を見せて勝つ。敗者からすれば屈辱的な敗け方になるだろうが、この多人数を相手にするなら勝てないと思わせて、降伏を勧めるのが僕の戦略だったが、恐怖してもなお立ち向かおうとしている人達にその戦略は無意味だと思った。
「その通りです。
私達には叶えたい夢も通さなければいけない筋もあります。
あなたに勝てないからと諦める事はできません。」
コトの言葉は全員の意思を代弁したものだと言うことが雰囲気から伝わってくる。僕は剣を握る手に力を入れ直した。
真剣に戦うことが彼らに対する礼儀だと思ったからだ。




