『トレーニング』
僕は自鏡盆から顔を出した。液体の中に顔を入れていたが濡れているわけでもないから、そのまま近くに置いておいた書類を手に取った。
書類には『天罰用件 初級』と書かれている。
本来ならC級の神様が行う天罰が必要な件をまとめた書類である。
この世界では雑用として扱われるが、その数は膨大な量となっていた。全部を下級神にやらせるのが今までのやり方だったようだが、僕の場合は力の使い方になれる必要もあるし、何より自分が少しでもやることによって下級神の人達に行く仕事が減らせるという一石二鳥だなと思ってやっている。
『携帯電話を使いながら自転車に乗っている。』
よくある光景だし、かなりの人がやってしまっていることだから、その数もたくさんになるため、かなり面倒な事案として存在していた。
周りの人が危ないだけでなく、自分も被害者になったり、加害者になったりもする危険な行為なのにやってしまう人は後を絶たない。
個別に対応することもできるが、件数で見ても世界中で見れば何千万人という人がやっていることであるため一律で天罰を下すことにした。
ゼウス決定戦の時のように天罰を多く下すとランクが上がることはないが、自分の持っている能力やスキルを高めることはできる。
さっき見つけた『製作』の能力を使ってみることにして、内容を考えた。
あまり危険なものにすると、年齢や性別、そのときの健康状態、場所によっては死に至る可能性もあるので、制限をつけておかなければいけない。
危険なことをしているという認識を持ってもらうためにもある程度の痛みは必要だろう。
携帯に意識が集中してしまって周りが見えていないことが一番危険なのだから、視界を広げておかなかったからひどい目にあったといった感じの内容が良い。
石にタイヤがあたりこけて、軽いケガをする。
これなら、誰かのせいでこけたのではなく、自分の不注意が原因になるし、都合よく石が落ちているわけではないから、自分の能力で作り出せば能力を高めることもできる。
ケガも軽いものなら次から気を付けようですみそうだ。
僕はその内容に決めて、書類に書き込んだ。
天罰用件の書類に天罰の内容を書き込むことで天罰は実行される。
能力を使うため、疲労感はあるし、造り出す石の数もたくさんなため、経験値を貯めるのには最適な天罰となった。
しかし、天罰を下すことが自分のためになる事ばかりではない。
天罰が必要なことというのは、誰かが迷惑だと思ったことやムカついたこと、怒ったことに対する制裁であるため、その処理をする度に神様には『イラッド』と呼ばれる負の感情が貯まる。
少し時間を空けたり、解消する方法があるが貯めすぎると良くないらしい。人間で言うところのストレスのようなモノだとミナモさんは言っていた。
ただ、今回の天罰は量は多かったが、日常にありふれた光景なだけに貯まったイラッドはそんなに多くはなかった。
僕はその後も何件か天罰を下して、今日のトレーニングを終わらせた。




