『力の在処(ありか)』
僕は円形の盆の前に座って、盆の中に入っている液体の中に手をいれた。
この盆は『自鏡盆』と呼ばれるもので、ゼウスが代々受け継いで来た自分の力を把握するための道具だ。
本来なら前代のゼウスがゼウスハンマーを使ってどのような力があるかを説明することによって力の継承が行われるらしいが、力の種類も様々で全てを把握できているゼウスは本当のゼウスだけであり、この役職になってからはいないらしい。
さらに僕の場合はゼウスハンマーがなく、前代ゼウスであった父も人間の世界に帰って貰ったのでいないため、何もマニュアルや説明書がない段階でゲームを始めるような状態だった。
そのため、仕事が終わってからの時間は自分の中の力探しと今、把握している力の強化に時間を割いていた。
盆に吸い込まれるような感覚を覚えて目を開けると、それまでの景色は一変して大空に浮いていた。
実際は盆の前に立っているのだが、自分の精神世界とでも言うべき場所に入った。
僕の精神世界は馬鹿みたいに広く、空から見下ろして力の断片を見つけて掴むことによって力の種を獲得することができる。
どこにあるのか、どんな形なのか、そんなこともわからないままどこまでも続く空を移動しながら、何かを見つけては飛び付いて調べていく。
そんなことを繰り返して行く。移動することに肉体的な疲労はなく続けようと思えばいつまでも続けられるが広い広い空の上から物を探すというのは砂浜の中から砂金を見つけるようなもので簡単なことではなかった。
力の種は見落とすこともあるし、自分の状態によってもそこにあっても見えないときもあると聞いた。
どんな力が存在しているかを知らないとその力だと認識できないらしい。力の位置は変わらないから、探し続けていれば見つかるらしいがそれも精神的に疲れる。
とりあえず、今日は神器を手に持った状態で精神世界に立っていたことに驚いたが、ムラクモさんが言っていたように神器が僕らの力の触媒としての役割があるなら力探しにも役立つのかもしれないと思っていると、神器が意思を持ったように震え出した。
僕が不思議に思って神器を目の前に持ってくると震えは止まった。
よくわからなくなり、また神器を下げると震え出した。
これは…………………もしかして、そう思って剣先が向いている方に進むと光っている物が浮いている。光に近づくと震えは大きくなっていくので僕は確信した。
そして手を伸ばして光を掴むと光は神器に吸い込まれるように消えた。そして神器の鍔の部分に新しくトンカチのようなマークが入った。その力に集中すると力の種の内容がわかった。
『製作』の力、虹川さんがやっていたが僕達ができなかった神器を作ったり等の色んな物を作る力のようだ。
神様は万能ではない。自分の一族の力以外は基本的には使えないが、人によっては神様としての基本能力で遠いところまで見える千里眼や瞬間移動等が使える人もいるらしい。
物を何もないところから作るのにもどうやらレベルがあり、僕の種の状態の力ではまだ虹川さんのように神器を作り出すことまではできないようだ。
小さな小物くらいならできるみたいなので後で試してみよう。
それにしても何時間も探しても一個も見つからないことがあるのに今日は神器を持っているだけで10分もしないうちに見つけることができた。
どうやら神器が近くに力があると反応して教えてくれるようだ。
新しい発見を色々としたが、どこまでも続くこの大空にどれだけの力の種があるかわからない。
今後、どんなことがあるかわからない以上、どんなことにも対応できるようにするためにたくさんの力が必要になると思って、その後も力の種を探したが、そう上手くいくものでもなく、見つけられたのは1つだけだった。




