『謎の少女達』
今のところ、この会議室に入ってくるのは今この場所にいる五人だけのはずだったので、ドアが開いたことにも驚いたし、ドアの開き方もドアが壊れるのではないかと思うほどの勢いであった。
皆が一様にどんな人物が入って来たのかと見たが、その場に立っていたのは和装の小さな女の子とその従者らしき格好をした女性だった。
誰かが何かを言うだろう、その場にいた全員がそう思ったため、しばらくの沈黙がその場を支配した。そして口を開いたのは和装の小さな女の子だった。
「このような場所で、この程度の人数でヒト共はその運命を決められているのかと思うと不憫だな。」
顔はおっとりとしているがその口から出た言葉は辛辣だった。従者らしき女性が
「まだこの体制になって日が浅いので致し方ないかと思います。
雑魚は雑魚なりに必死に泳いでいるのですから、批判してあげては可哀想でございますよ。」
地井さんの眉毛がピックっと上がるのが見えた。だが、どう考えても自分の子ども達と変わらないくらいの年齢に見えたのか文句を言うことはなかった。
「ふむ・・・・・そうであったか。
これは失礼した、ところでゼウスとやらはどれだ?」
誰でもないのかと思ったが「僕です。」そう言って、少し前に出た。
「そうか、お主がそうか。
ムラクモ殿が話しておられたイメージとは少し違うが、まあ良いであろう。」
ムラクモさんは最高神器と呼ばれる天照大神の神器が付喪神のように意思を持った存在であり、僕のかなり遠い祖先になるらしい。
そんな人の名前が出たので、ムラクモさんの知り合いなのだろう。と、言うことはミナモさんならこの二人が誰かわかるかもしれないと思って、ミナモさんの方を見るが、ミナモさんも明らかに嫌悪感を丸出しにして『こいつら誰だ?』と目で訴えていた。
「あの~、あなた方はどちら様ですか?」
僕が聞くよりも早く、虹川さんが聞いた。
和装の少女が答えようとしたところで、従者らしき女性が少女の口を手でふさぎ、少女の抵抗も無理やり力で押さえつけてから
「こちらのドチビは、ある高貴な家の方です。
おいそれと名を名乗るような軽はずみなことはしないものです。」
従者の『ドチビ』という言葉に反応して、少女が力づくで手を振り払い、
「おい楓、誰がドチビだ!」
「これは失礼いたしました。この中でドチビはチホ様以外いませんでしたね。
特定できるような悪口を言ってしまい申し訳ございません。」
「いや、謝るところそこじゃない気がしますけど・・・・・」
僕が言うと、『チホ』と呼ばれた少女が
「そうだぞ、ゼウス。いいことを言った。
できれば、もっとこいつをへこませるようなことを言え。
主人である私が許可する。」
日頃の恨みがあるのか、味方ができたことを嬉々として喜んでいるのが伝わってくる。
少し可哀想な子なのかもしれないと思っていると、少女が
「おい、お前らその顔をやめろ!私を憐れむような目で見るな!」
僕が周りを見ると、確かにみんなが可哀想にという顔をしていた。ただ、ミナモさんに限っては、ただ面倒くさいという顔であったのは確かだ。ある意味、興味もなく、存在自体を相手にしていないわけだから、ミナモさんが一番ひどい気もする。
従者らしき女性が
「お可哀想なチホ様、初対面の者達にも伝わるそのイタサでございますね・・・」
後半の言葉は笑いが混じり、こらえきれなくなったように小さな笑い声が聞こえた。
怒ったからなのか、恥ずかしいからなのかはわからないがチホという少女の顔は真っ赤になっている。
そしてドアの方に駆け出して振り返り、大きな声で
「お前ら全員、覚えておけよ!」
とまるで、雑魚キャラの捨て台詞のように叫んで部屋から出て行ってしまった。
従者は笑いがこらえきれずに大きな声で笑い、お腹を押さえて笑い続けてから、チホの消えた方に向かって
「チホ様、今の・・・・・・プッ・・・雑魚キャラの捨て台詞みたいでしたよ~!」
そう叫んだ。遠くでチホが何か言い返しているようだが聞こえてこない。
楓と呼ばれた従者は僕達の方に向かって軽く会釈をして、
「お騒がせしましてすみませんでした。
また、ご機会に恵まれましたらお会いしましょう。」
そう言って、足早にチホの消えた方に歩いて行った。




