『議会』
「だ~か~ら~、ここの国ばかりが経済的に潤うと他の国が破綻するんだって何回言ったらわかるんだよ!」
部屋に響きわたる声が響く。部屋には若い女性が二人、中年くらいの男性が一人、20代の男が一人、そして見た目からは年齢が推定できない男が一人の五人がいた。人数に対して部屋はとてつもなく広く、本来なら40人くらいは余裕で入れそうな部屋である。先ほどの声の主に中年男性、地井 陸道が
「だからな、地球の資源は有限なんだよ。
だから、どこか一カ所に利益を集中させると、バランスが崩れるんだよ。
そうなるとお前の望んでる平和な世界になる前にどこかで戦争が始まる結果になるんだよ。」
地井さんの言うこともわかったが僕、天野 星は反論した。
「地井さんの言うこともわかりますけど、バランスの話をするなら元々、経済先進国に傾いているところを発展途上国に傾けて、その差を埋めるところから始めないことには対等な関係が作れないじゃないですか。」
「バランスなんてものは取ろうとしてもどっちかに偏るもんなんだよ。
それなら、今までの実績を加味しても先進国が主導していくのが問題解決には早道なんだよ。」
ゼウス決定戦が終わって2か月が経っていた。人から神になった者を『人の神』と呼び、その最高位についている者を『ゼウス』と呼んだ。
ゼウス決定戦は一位となった志士上 絶が自らの補佐役のウツセミによって殺害されたことで二位となった僕、天野星が繰り上げでゼウスとなって、その戦いに幕を下ろした。
ただ、今までのようにゼウスに全権を委ねる制度を廃止して、議会を作ることによって人の神の意見を取り入れる制度の構築を考えたが、ゼウス決定戦以前から人の神であった者達からの信頼を得ることができず、今現在は、先ほどから話している地井陸道、ゼウス決定戦の予選の時から連絡を取り合っていた虹川 十色、従妹の星河優輝、そして僕の補佐役だったミナモさんの五人で議会を行っていた。
僕と地井さんの言い合いを少し離れたところで見ていた虹川さんが
「毎日、同じようなことでぶつかってるよね。
進歩とかないのかな?」
「えっ?で、でも世界の動きを決める重要な話し合いなわけだし、どっちも間違ってないから答えが出ないんだと思うけど・・・・」
優輝ちゃんが言うと、つまらなさそうに腕組みをしていたミナモさんが
「答えが出ないのは新しい考えが出てこないからだ。
二人の意見がどちらも正しいなら、第三者の意見で落としどころを探す必要がある。お前らも見てないで参加すればいいだろ。」
「ミナモさんは参加しないんですか?」
虹川さんの問いにミナモさんは
「星の奴がうるさいから、ここには来ているが俺はほぼ隠居だと思え。
だいたい、見た目と違って本当は80代なんだからのんびりさせろ。」
僕や優輝ちゃんお祖父ちゃんと一緒にゼウス決定戦を経て神になっていたミナモさんは二十歳くらいで歳が止まっているため、地井さんや僕よりも見た目は若く見える。でも、ミナモさんの言う通り、年齢で言うなら地井さんの二倍は生きていることになる。地井さんが
「俺より若いんだから、もっと働いてくださいよ。」
「人を外見で判断する奴の言うことに耳を貸す気はない。」
ミナモさんがビシッと言いきった。優輝ちゃんが
「さっきの話ですけど、利益を比率にして、星君の言うように発展途上国が先進国に追いつくために必要な割合にそって、配分して、途上国も先進国も無くなってきたところで、半分ずつとかにはできないかな?」
「その利益の比率をどうやって決めるのか、利益を発展途上国が国の発展に使うかまでは言いきれないんじゃないかな?
一部の人が利益を独占しちゃうみたいなことは起きると思うけど?」
虹川さんの言うこともわかる。僕はミナモさんに向かって、
「人の行動を決めることとはできるんですか?」
「お前の親父の晴は自由主義だったから、大まかな方針を決めたらあとは人任せだったよ。でも、行動の強制はできる。
そうやって、戦争を起こしてきたゼウスも過去にはいたからな。」
「じゃあ、利益の使い方などに関しては強制して、他のことにはあまり介入しないようにする方針で、優輝ちゃんの案を採用しませんか、地井さん?」
「そうだな、このままいくら話してても決まらないもんな。
他にも問題は山積みなんだから、もっと効率的な議論をしていかないとな。」
地井さんはそう言って椅子に座り、
「もっと人を増やして、各問題に対して専門の議会を作れるようにならないと、俺らの知らないところで戦争が始まるなんてことにもなりかねないぞ。」
「でも、人がたくさんいるだけでもダメじゃないですか。
僕達と同じように世界の平和だとか考えてくれる人じゃないといけないですし、人数が多すぎても話し合いが難航して決まらないなんてことが実際にありますよね。」
僕が言うと、虹川さんが
「それに、日本人しかこの場にいないのも問題じゃない?
世界のいろんな問題を日本人だけで話し合うのも難しいよ。」
ミナモさんが何か言おうとしたところで、部屋のドアが勢いよく開いた。




