『決意』
「た、確かに迷惑な行為をしてしまう人は自分さえ良ければそれで良いと思ってるかもしれません。
ここにいる他の神様達にも危険な目に遇うことができない理由があるのかもしれません。
あなたの考えが正しかったとして、この世界が間違っているのだとしても誰かを犠牲にしてまで正そうとすることが良いんですか?」
僕が言ったことをウツセミは鼻で笑い、
「なぜ、全世界に溢れるエゴを許容して、自分のエゴを通そうとすることが非難されなければいけないのか理解に苦しみます。
権力を持った者、例えば大国の大統領があの国が嫌いだというエゴをそのまま国の政治に反映させたら、被害を被るのはどちらの国も権力者ではなく国民であることを忘れているのではないですか?
不利益は常に弱い者に降りかかる。
他者の苦しんでいるところを見て不憫だとか、可哀想だと思うか?
それも、上から眺めていることで、この人達よりも幸せだと自分の優位性を確認しているに過ぎない。
差し出された救いの手が、100%の善意であることなどない。
他者に優しくする自分、良い行動をしている自分に酔っているだけだ。
ボランティア等ときれいな言葉を作っても、それは持っている者が持たない者に『ほどこし』をしている行為に他ならない。
特に神のそれは酷すぎる。
自分達で不幸な人間を作りだし、『試練』という名前を与えて、不必要な苦しみでもがく人間達を笑いながら見てる。
何で自分がこんなひどい目に遭わないといけないんだと思ったことはないか?
それも全部、神の遊びのためだと思ったら許せなくなるのは必然だろう。」
「斜めから見るのと正面から見るのでは見え方は違う。
お前の歪んだ見方がこの世界のすべてだと思うな!」
ミナモさんの言葉と共に攻撃が飛ぶ。
「ならば、正面がどこかを決めるのは誰だ?
自分が歪んでいるのではなく、私が歪んでいると思うのはどうしてだ?君達が正しいと思っているように私も自分が正しいと思っている
さあ、この場にいる最も神の世界から遠かった者よ、私と彼らとどちらが正しいと思う?」
ウツセミは僕を指差して聞いた。
僕にはわからなかったどちらも言っていることには納得できることがある。どちらが正しくてどちらが間違っているのかを判断することができる人がいるのだろうか?
『正しい』とは何か、『間違い』とは何か?
ボンヤリとこれは正しくて、これが間違っていると教わったことはあっても、流動的な判断材料に基づいての判断は時に正反対の答えになる時もある。
僕が考えている間も静寂が早く答えを出せと言わんばかりに僕を包んだ。何が正しいかはわからない。でも、僕にも信じたいことはあった。
「僕は……………………正しいことが何かはわかりません。
でも、信じたいことや信じたい人はいます。
お父さんやミナモさん、ムラクモさんの言うことを僕は信じたいです。」
僕が意を決して話した言葉をウツセミは呆れたような顔で笑い、
「地を這っているだけの青虫では、世界が見透せないようだ。
では、次に会うときまでの宿題にしよう。
一つ、神とは何か?
一つ、この場にいた誰が本当に正しかったのか?
一つ、天罰を下すのはなぜか?
楽しみにしておくよ。」
ウツセミが言い終えた瞬間に大きな破壊音と共に土煙が巻き起こり、ウツセミは土煙のなかに消えた。




