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神様ゲーム -天罰を下すのは-  作者: TAKEMITI
ゼウス決定戦
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『カミのエゴ』

「アハハハハハ」

 ウツセミの高笑いがその場に響き渡る。笑い声でなのに音の振動は小さな衝撃波を伴っているかのように僕は感じた。

「しまった、ゼウスのチカラを完全に取り込んでしまったか!」

 ムラクモさんが言い、いつの間にか隣まで来ていた父が

「しかし、あのチカラに耐えるためには時間がかかるはずです。

 全力を出せない今のうちに拘束するしかありません。」

「そういうわけだ、星、戦えるお前とミナモしかいない。無理かもしれないが使い物になるのはお前らだけだ。

 準備はできてるな?」

ムラクモさんに言われ、僕はまだ高笑いをしているウツセミをみた。彼がどんな理由でこんなことをしたのかはわからない。でも、彼がこれからしようとしていることが危険なことであることはわかる。

「はい!」

 僕は返事をして剣を構えた。

「君に何ができると思っているんだ?

 私を止めることが正義だとでも思っているのか?」

 ウツセミは天を仰いだまま僕に向かって言った。

「そんなことはわかりません。

 でも、志士上君を利用して殺そうとしてるあなたを僕は許せません。」

「ナゼだね?

 志士上がゼウスになれば人類は全滅させられていただろう?

 あいつのこれまでの人生は寂しさと悲しさだけでできていた。

 どこかのクズな男のエゴによって、あいつの母親は襲われ、自分の子供が性犯罪の被害者になったことを隠そうとする親のエゴで、この世界に生まれ、母親の恨さばらしのために暴力を振るわれ、そして邪魔になったという理由から棄てられた。

 誰かのくだらない欲望のために、そいつらのエゴによって、あいつは存在していたんだ。

 そんなやつが誰かの幸せを願うゼウスになると思うか?

 人間のためには志士上は死んだほうがよかったと思わないか?

 断言しよう、そんなことはあるわけがない。

 あいつはきっと自分の苦しみを世界に向けて発散しただろう。

別に人間がどうなろうが私はかまわなかったが、あいつは君と出会って少し変わってね。

 最後の段階で全てを話して協力者にしようと思っていたが、君の存在が真っ黒だったあいつの心にほんの小さな点くらいではあるが白い部分を作った。

 その点を君と言う存在が少しずつ拡げていくのを感じた。

使い物にならなくなったので、協力者にせずに消すことにしたわけだ。

 つまり、君が現れなければ志士上が死ぬこともなかったというわけだ。直接、手を下したのは私だが殺すきっかけを作ったのは君ということだよ天野星。」

 ウツセミに水の攻撃が襲いかかったが、ウツセミは避けることすらなく受け流した。攻撃したミナモさんが

「他人のエゴの話ばかりだな。お前が志士上を利用しようとしたのもお前のエゴだろうが。」

「ああ、その通りだ。

 この世界に存在する人も動物も神でさえも自らの欲望を叶えるために生きている。

 どんなに善人に見える者でも、人に良く見られたいとか金儲けのためだったりするものだ。

 人のエゴなど取るに足らないことばかりだが、その量が多すぎるために天罰を下す必要がある。

 どうしようもないのが神のエゴだ。

 中途半端にチカラを持っているだけにそのエゴは時に大惨事を引き起こす。

 だから、我々は立ち上がらなければ行けない。

 分散された神のチカラを集め、ごく少数の神による世界の支配がなされなければいけない。

 増えすぎた神が世界を歪ませているのだ。」

「それもお前の勝手な思い込みだろう。

 神が下す天罰は救いであり、教えだ。

 お前の言うような懲罰的なものではない。」

 ムラクモさんが言い、父が

「強すぎる欲望を抑えて共存していくためにルールは生まれたんです。

規則や法律を守るものに加護を、守らぬものに罰を与えることで、世界の共存が実現したんです。」

「押さえ切れていないから、人は人を殺し、人を傷つけ、物を盗む。

自分の権力のために誰かを貶めていることは人でも神でも変わらない。

 無くならない犯罪が欲望を抑えられないことを証明しているのですよ。」

「秩序は確かに穴だらけのザルだ。

 だが、無ければ全てが無作為にこぼれ落ちる。

 役に立たなくても受けとる部分を作ることで救われる者がいる。

お前の言葉はすべての高望みから来る妄言でしかない。」

 ミナモさんが言い、攻撃のために手を構えた。

「私が悪者なのだとして、あなた達が正義の味方だとするなら、ここにたくさんいる神があなた達を助けるために立ち上がらないのはナゼですか?

 変化を、世界がクズだと、私の考えの実現を望んでいるものがいるからではないですか?

 チカラに怯え、自分の身を守ることに精一杯だからではないですか?

 全てはエゴから生まれる世界の歪みだと思いませんか?」

 僕らは何も言えなかった。周りにはたくさんの神様がいて、動けるもの達もいるはずなのに誰も加勢に来ないのはウツセミの言う通りなのではないかと思うことばかりだったからだった。

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