『神々の戦い』
僕が衝撃から起き上がると、既に臨戦体勢のミナモさんとフラフラではあるが立ち上がっている父の姿が見えた。
フラフラの父に向かってウツセミが
「封印から目覚めたばかりの、しかもゼウスの力さえ失ったあなたが私と戦って勝てると思っているのですか?」
「それでも……………戦わなければいけないときはあるでしょう?」
立っているのもやっとのように見える父に向かってウツセミはゼウスハンマーを向け、
「それではあなたから葬ってあげましょう。」
そう言ってハンマーを振り下ろした。雷撃がまっすぐに父に向かう。父には避けるような力が残っていないのかその場で悔しそうな顔をしていた。僕が直撃すると思った瞬間、どこからか現れた豪華な装飾がついた剣が雷撃をかき消した。
誰が投げた剣なのかと周りを見たが、立ち上がっている人はミナモさんと父だけで、剣だけ投げたような人も見当たらなかった。
だが、次の瞬間僕はさらに驚いた。
「セイ、私を使え!
お前も私の子孫だから使えないことはないはずだ」
剣が喋っている。僕は驚いていたが、この場にいるべきもう一人を思い出すと答えはすぐにわかった。
「すみません、ムラクモさん。」
父はそう言って剣を握った。先ほどまでフラフラだった父は回復したかのようにシャキッと立ち、剣を構えた。
「セイ、俺の力を貸すことに依存はないが、時間をかけると今のお前の状態では俺の力にも耐えられない。
勝負は急いだ方が良いぞ。」
「わかってます。
ウツセミさんがゼウスの力を使いこなす前に制圧します。」
父はそう言うと剣をウツセミに向けた。剣先から炎の塊が6つ現れた。先ほどウツセミにかき消された塊よりも小さいが、その炎の熱気が離れた僕のところまで届いてきた。
凝縮された炎の塊だったのだろう。父が剣先を少しつき出すと炎の塊はウツセミに向かって飛んだ。
ウツセミも今回は体を動かして6つの塊をすべて避けた。
当たらなかった炎の塊は地面に当たると火柱を作った。
ウツセミが反撃しようとゼウスハンマーを構えると今度は後ろから水の槍が無数にウツセミを襲った。
ハンマーの力を使ってなんとか防いだウツセミに次は父が雷を剣の形にしたものを飛ばした。
目の前で起こっている漫画で見たことあるような戦いを僕はただ見つめることしかできずにいた。
「元ゼウスとナンバーツーの二人を相手にしてもまったくひけをとらないとは、なんと凄い力だ。」
ウツセミは楽しそうに言っている。攻撃されている数ばかりで自分からは一切攻撃をしていないにも関わらず、ウツセミには余裕があった。実際、父とミナモさんの攻撃はすべて防がれていてウツセミにダメージを与えることはできていなかった。
「セイ、このままでは………………」
ムラクモさんの声が響き、父が
「もっとお願いします。」
「しかし、これ以上はお前の体が持たないぞ。」
ムラクモさんが必死に言っている。先ほどの会話から父の体はもう限界に来ているのだろう。
僕は立ち上がり、父のもとに走った。それに気づいたウツセミが嘲笑を浮かべて
「息子君、君に何ができる?
他のタヌキ寝入りをしている奴等みたいに大人しくしておくべきだったな。」
そう言うとハンマーを掲げた。攻撃が来るかと思ったがミナモさんの攻撃から避けるためウツセミが後退したので、その隙に父のもとにたどり着いた。
「ムラクモさん、僕に力を貸してくれませんか?」
父は驚いた顔で僕を見て、優しく微笑み
「星、大きくなったな。」
「親子の再会を喜んでいる暇はないぞ!
セイ、ああ、息子の方のな。
お前も私の力を使うことはできるが、今まで神の力を戦闘に使ってこなかったお前では、神の戦いにはついていけない。
………………だが、父親の方の晴も限界が来ているな……………
わかった、戦い方は俺がそのたびに教える。
無理はせずに、ミナモの援護を心がけろ。
それでいいなら力を貸そう。どうする?」
「お願いします。」
僕が答えると父が
「ダメです、危険です。僕ならまだいけますから。」
「父さん、今は休んでください。
僕ももう子供じゃないですから。」
僕はそう言うと父が握っていたムラクモさんの柄の部分を握った。
父は一つ息をついてから、「無理はするなよ」と言って剣を離した。




