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壁ドン族の宿命

作者: 長井瑞希

「キャハハーー」

 右隣の部屋から聞こえてくる女の声。

 とにかくうるさい。

 たまに男の声も聞こえてくる。うるさい。

 あと、ピンポンダッシュのごとく壁をつついているのか、それともギシってるのか知らないけど、とにかくうるさい時がある。

 そう、隣の部屋は我が家ではない。他人の部屋だ。

 ワンルームにしては広く、一人暮らしにはうってつけの物件だったのだが、暮らしているとある問題に直面した。

 壁が薄いのだ。

 右隣は男が借りていて、左隣は女が借りている。

 右隣に住んでいる男は、先月までいなかった。たぶんどこかへ泊まりに行っていたのだろう。女の家か? くたばれ。

 左隣の女の部屋からは、テレビの音がごくまれに聞こえてきたが、バイトでもしているのかあまりその音が聞こえてくることはなかった。

 が、最近になって男がうるさくなった。しかも女を連れ込んでいる。

 壁が薄いといろいろと筒抜けなのだ。

 さすがに嬌声は聞こえてこないけど、夜更かししたら聞こえてくるかもしれない。むなしくなるからやらないけど。

 とまぁ、色々と大変な思いをしている。

 だが、俺には伝家の宝刀『壁ドン』がある。

 ただしイケメンに限る、なんて注釈がつくアレではない。正真正銘の『壁ドン』だ。

 いくら俺が引きこもりとニートを兼業しているだめな男とはいえ、やるときはやるのだ。

 準備はいいか?

 息を吸い込み。

 壁に向かって!

「ふんぬっ」

 どうだ、渾身の正拳突きは!


「……あれ?」

 壁ドンしたのに静かにならない。なんで?

「…………もしかして」

 ベランダに出てみる。

 日はすっかり落ちており、部屋の明かりがついている部屋とそうでない部屋が一目でわかった。

 隣の部屋は……ついてない。

 徹底的に無視して騒いでいるのかと思った。けど、違った。

「……いない?」

 隣からは、物音一つ聞こえない。

 だけども、あの男と女の騒ぎ声はどこからか聞こえてくる。

「あ、上か!」

 俺が住んでいるのは二階。声が聞こえてくるのはおそらく三階。

「こりゃ、必殺の天ドンをおみまいするしかありませんなぁ」

 床ドンならやりやすいのになぁ……。


 ……なんて想像してみたりして。

 現実は違う。

 あまりの壁の薄さに、正拳突きが貫通した。

 欠陥住宅過ぎてびっくりだね!

 穴の先では男と女が仲良くゲームしてましたよ。くたばれってんだ。

 一応事故ってことで処理してもらったけど……これから気まずいなぁ……。

 それからしばらくは静かだったけど、半年くらいしたらまたうるさくなってストレスがたまりはじめ。

 早く引っ越ししたいなって思う。マジで。

一人暮らしを始めるときは、壁の厚さを気にした方がいいとアドバイスしてみたり。

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