肉でも魚でも持ってこい 3
レジナス王国、王都トトリは都合三つの区域に分けられている。
世間一般の認識はさておき、統治する側の王族に分けたつもりなどはなかった。レジナス王は、アイリス教の枢機卿という役割を代々担っている。王にして敬虔な信徒であり、神の教えである博愛の精神を常々説いていた。
各々の思想にこそ違いはあれど、戴く神の教えは同じくしている。このことからすれば、区別を用いる必要はなかった。
ならば何故、三つに区分されているのか? それは区分けを望む者がいることに他ならない。異なる種族はおろか、同族であっても出自によって貴賤はある――かように言って憚らない者たちが、確かに存在している。
およそアイリスの教えに忠実でない者たち。その代表格とも呼べる人物が、この日、王都トトリへと入ろうとしていた。
黒塗りの馬車は、まばらながらも街道を歩く人たちを割って進む。その様には権威的な圧迫感があった。何を急ぐか、御者台の人物は市井には目もくれず鞭を振るい、馬は狂ったように走らされていた。黒衣を纏うこの男は、只管に前を目指す。
「お待ちくださいっ」
間もなく馬車は王都へというところであったが、寸前で門兵が声を、身体を張って制止してみせる。必死さを相貌に携えた兵を前に、馬はその足を止めていた。
「通行証を――」
見せろ、などと気軽には言えない。大英雄より王都の安全を守ることを、この兵士は仰せつかっているにも関わらず、である。兜に隠れて見えないが、その下の額には油汗が滲んでいた。
大戦時、私兵団を率いて国を救った英雄、それがヴァリスナードだ。彼の人が持つ影響力は実に強く、王国に忠誠を誓う騎士の四割、兵士・傭兵の実に六割は、黒鎧をシンボルにした英雄の傘下にあると言っていい。
「この無垢なる者が、汝には見えないのか?」
国に絶大な影響力を誇る陣営の兵士を前にしながら、黒衣の御者は淡々と言葉を放った。瞳こそ兵士を捉えてはいるが、吐かれた声は機械的であり、眼前の人物へ何の配慮も必要ないと物語っている。
「規則、ですので」
勿論言われずとも見えている。それをわかった上で、兵は絞り出すようにして答えた。
この黒塗りの馬車には、白い隼が描かれている。すべてが白色にあって、瞳のみが澄んだ水色をした隼――この小さくも尊き鳥を知らぬ者が、レジナス王国にいようものか。馬車に掲げられたシンボル、これこそがアイリス神を象徴する“無垢なる者”である。
まして、馬車に堂々と“無垢なる者”を掲げることを赦される人物など、そうはいない。敬虔なアイリス教徒程、神の威光を着るようで恐れ多いと述べる筈だ。そうであれば、赦された者は高潔にして博愛を広める者――検問を無断で越えるようなことは決してあり得ない。
つまり、この人物は教えを広める立場にあって、アイリス神の言う博愛を実践する者ではない。その従者とあれば、機械的ながらも傲慢な考えを口にしてみせる。
「規則、か……それでは言い直そう。この馬車に乗っている方が、どなたか知っているか? 彼の方から、無用に時間を奪おうとしておると、汝はしておるのだが、いかがか」
「――存じません。私は、大英雄、ひいては王の命を受けて、任に就いている。何人足りとも、顔をすら確認をせずに通すことは出来ません」
互いのやり取りは、音にすれば静かであった。だが、ここには激しい応酬が繰り広げられている。お互いの目的を思えば、ぶつかり合うことは必至。片や主人を迅速に届けようとするアイリスの信徒、片や神に護られた地を守り通そうとするアイリスの信徒だ。
お互い任に忠実であり、務めを果たそうとしているだけであるから、誰にも否は認められない。
「何を、揉めているのです?」
静かな鬩ぎ合いの中に、言葉が割って入った。馬車の扉を開いて現れた人物は、長身痩躯。後ろへと金の髪を流した佇まいは精悍の一言。黒衣を纏ったその人は、堂々巡りをする人たちの前へ姿を見せた。
「司教、あなたがこの場に出て来られる必要など……」
黒衣の神父が現れた途端、御者はこれまでの勢いを失って、只々低姿勢を貫く。歯切れ悪い部下に向けて、主はアイリス神が如く慈悲深い笑顔で柔和に頷いていた。
「何、馬車の中身を検めさせればよいだけのこと。我らが主神は、争いを望みません」
お騒がせをしました――このように伝えれば、御者の懐から許可証を取り上げ、門兵へと掲げる。
「確かに、通行許可を確認いたしました、ご無礼をお許しください――アジード司祭様」
「いえいえ、よいのですよ。無礼かどうか、それは私にはわかりません。ですが、そうだったとしても、それは汝が磨かれた、職務への忠実さ故のものです。我らが主神はきっと微笑んでくださることでしょう」
にこりと笑えば、アジードは恐縮する兵を前に音もなく車内へと戻る。上質なローブを翻す姿は、敬虔に心を捧ぐ求道者さながら。門兵を前にした姿勢は神父然としていた。
しかしそれも束の間。検問を通れることで落ち着いたか、司祭は腰を下ろすと表情を変える。
「王都に入るだけでも、面倒なものだな」
走り出した馬車の中であれば、これらの音は外へと漏れない。
「アジード様、彼の英雄は――」
「お前の意見など、聞いてない。無駄口を叩くな」
「飛ばすように言います。すぐに目的地へと!」
アジードの高弟の一人である男は、言葉を呑んだ。師の瞳が放つ光、その冷たさに脅威を覚えていた。この男は直接的な物言いはしない。だが、遠回しに出された言葉が、直接的に、最短距離で影響を及ぼす。彼に楯突いて無事であったものを、この弟子は知らない。
車内は魔導器による光源で、十分な灯りが保たれている。それをして尚、男の白い肌は目立つ。それよりも、鋭い目から放たれたものには幾分も強いものがあった。その視線を受ければ、馬車内に居た高弟は時を経ずして御者に指示を送る他はない。
「ヴァリスナード、あの色狂いが……」
憎々し気に呟かれた言葉は、馬の蹄が立てる音に消える。荒々しく馬車が門をくぐれば、皆その様を見ることに意識を取られてしまう。門兵も、黒塗りの馬車を憮然とした表情で見送った。
この時、門の上を緑色の光が通過していったが、それは誰の目にも止まらなかった。
「おーー、広ーい!」
「あ、コラっ――」
はしゃぐ言葉を聞きながら、ティアは右手を突き出す。伸ばしたところで、既にキリカは手の届かないところへと走ってしまっていた。空を切った手が空しく、何とはなしに二度三度と手を握ったり開いたりを繰り返してみた。
(走り出す気持ちが、わからんではないが……)
足元には気を付けてくれよと、魔女は思う。灯りこそあるが、全体的に薄暗い。まして段差が多くあれば、心配ばかりが先に出てしまう。幼馴染みの少年と再会したことが悪い、どうにも心配性が移った気がしてならなかった。
ヴァリスナードの手伝いを行えば、解放される頃には夕刻を迎えていた。キリカは率先して手伝っていたものの、成人前の少女が行うには、些か退屈さが勝る内容であった――そりゃあいい加減に暴れ出しくもなろうものだ。
王国きっての料理コンテスト、その会場設営にしてこれ程地味であれば、ティアでさえも身体が凝り固まることを覚える。
「あ――」
「……言わんこっちゃない」
ほれ見たことか。ティアがそのように思ってしまう位、赤髪の少女は足を取られて前へとつんのめる。次には痛みを訴える声が響くとも思われたが、その妙な期待は裏切れらた。
キリカは両手を前に投げ出した姿勢のままであっても、地面への激突を免れていた。
「おや、お二方もお着きでしたか」
走り込んだキリカを受け止めつつ、凛とした声が通る。特徴的な声もさることながら、金髪碧眼の女性騎士となれば、間違えようもない。
「ジュラス、すまんのう。何かと迷惑をかける」
声を発しながら近づくティアは神妙に会釈をしていた。子どもはあまり好きではないが、当人がネギの勇者の弟子とあれば、幼馴染としては身内感覚で謝ってしまう。
「迷惑だなんてとんでもない。先生なら、笑って許してやれと言うところですよ」
にっこりと微笑むジュラスであったが、腕にキリカを抱えるとその笑みを倍加させてみせる――こいつ子ども好きだったか。大英雄の堅物秘書と言われる騎士も、案外と女らしいところがある。などと思えば、この魔女の口の端も持ち上がるものだ。
「こら、キリカ。この騎士姉ちゃんはバカみたいにお人好しなんだから、甘え過ぎたらダメだぞ?」
「はーい」
青い鎧に身を埋めていた少女であるが、すいっとその身は持ち上げられる。仔犬のように主の膝元へと運ばれていったが、何とも自然過ぎてジュラスすら注意も払ってはいなかった。むしろ、自分の名前が相変わらず覚えられていないことへの抗議に気が取られている。
青色の鎧から緑色のそれへ。男の膝元に移されたキリカは、うずうずとした衝動もあるものの、満足したように大人しくしている。しばらく離れていた主人の元へ帰った犬のようですらあった。
「ぉ……」
その光景を、愛用の杖すら取りこぼして魔女は目を瞬いた。
「なぁジオ、ここは闘技場か? レティアのも大きかったが、これはすごいな」
「闘技場っていうか、催事場かな。確かにでかい。えーっと、ジュロン、これは何だっけか?」
「催事場であってますよ。ただし、先生が建てたものですから、むやみやたらに大きいのですが」
後、私の名前はジュラスですよ。などとやり取りがティアの前で繰り広げられていた。
「ぉ、ぉ……」
食べ物でも詰まらせたか、声を吐き出そうにもままならない。背丈の低い魔女は、突き出した手をわにわにと握り開きを繰り返していた。意識がここに非ずといった様子だが、その耳にはこの会場の説明が届く。
ヴァリスナードが行った最大の功績は二つある――片方は、大戦終結前後に勇者ギルドを設立したことだ。これにより力のない人も、魔物に怯えすぎることなく、ひたすらに農作業に打ち込むことが出来た。残る片方は、終戦後真っ先に荒れた王都のインフラ整備を行ったことだ。これもまた、ギルドを求めて訪れる人々の居住地を整えるなどの効果をもたらした。
大英雄の才覚は、絶好機を逃さない鼻の良さにこそある。王都に人口が集まれば、他の町との物流を促進することに気を割いた。増える人口を賄いつつ、ギルドに登録した勇者を連れては地方への魔物討伐を行う。この際に荒れた地があれば同様にして建物と道を整備して回った。
各地にはそれぞれ権力者が居るのだが、時には自身の功績を翳し、時には一層町が栄えることを仄めかした。この辺りがヴァリスナードの商才を物語るところであった。ただ、一定インフラが整ったところで、辞めることも出来なかった。これは彼も想像出来なかったことであったが、建築に利権を持つ人たちが益々の事業拡大を狙っていた。
そんなこんなで、王都には何のために建てたかもよくわからない箱物が幾つか存在した。権力が拡大しすぎたこと、無駄が大いに生まれたこと、これらも大英雄に引退の二文字を意識させる要因であったが。
「なるほどな、じっちゃんはスケールがでかすぎて、大雑把だったりするもんな」
うんうんと、ジオは首を縦に振る。決まった催しもない会場であったが、一般市民を十分に収容して尚、彼が座るビップ席なども用意出来ようものだ。暗い場内でも既に席がほぼ満席であることもわかっていた。そうであれば、適当に溢しながらも感謝があった。
「ジオも到着していたのは、よかった」
師匠の膝に乗り、足を振りながらキリカは笑う。労働も既に終えたため、後はイベントを見守るのみだ。だが、観察眼の鋭い少女は、顔を上げてやや渋い表情も作ってみせる。
「よかったんだが、そろそろ……声をかけた方がいい人がいるぞ?」
「ん?」
弟子の言葉がけに、疑問を浮かべる少年。当のキリカにしてみれば、いやいや、視線を向けるのはこっちじゃないぞ、と思うところである。
「何か、忘れてい――痛っ!?」
頭頂部に衝撃を受け、ジオは思わず声を出した。痛みは大したことはないが、こんなにくつろいでいる時に襲撃を受けることに驚いていた。続いて、隣に誰かがドカッと座り込めば、益々混乱は深まる。
「いや、ジオ殿。貴方はもう少し考えた方がいい、本当に」
腕組みをした姿勢で少年の隣に座るティアを瞳に収め、ジュラスは溜め息交じりに忠告を溢していた。人様の名前を覚えないだけでなく、幼馴染も放ったらかすこの男はどうしたものか。まして、ティアの並々ならぬ想いを知る彼女としては、この勇者バカが強く頭を打ち付けて心を入れ替えればいいとすら思う。
「みんな、えらく不機嫌だな。ティア――」
「知るか。朝に市場デートをして、夕刻にはコンテストを高みの見物か。お前、いい身分になったのぅ」
知らないと言いながら、少女の紫の瞳は不機嫌さを物語っていた。これにはどうしたものかと困惑するジオであったが、視線をどちらへ向けても知らんぷりを通される。膝元でくつろぐキリカすらも視線を合わさないものだから、この少年は困りに困った。
「ジオ殿、早くティアちゃんに謝った方がいいですよ?」
「そ、そうか。その、なんだ、よくわからんが俺が悪――」
「わからんとか言わない。ともかく謝る!」
「……すまん、ティア」
神経質ではあるが、理不尽なことでは怒らないのがジュラスだ。そのことを知っているジオは、二言もなく謝るに徹した。彼にしてみれば、本当に何故ティアが不機嫌かがまるでわかっていない。だがよくよく考えてみれば、ティアに張り合ってよかったことなど一度もなかった。
「よいよい。ジュラス、気を遣わせてしもうたな」
むすっとした表情は崩すことをしなかったが、返した声は幾分か和らいでいた。ふん、と鼻を鳴らして腕組みをしてみせるが、彼女の仕草はどう見ても幼女が背伸びしているようにしか見えない。
「何か言いたそう、だな?」
幼馴染みである三人のやり取りに慣れていないキリカは、ついティアを物珍しい目で見てしまっていた。口を開くことも躊躇われたが、目のいい少女はこの状況につい一言を挟んでしまう。
「ティアな、この騎士姉ちゃんはバカみたいにお人好しなんだから、甘え過ぎたらダメだろ?」
「――っ」
心底不思議そうな目で赤髪の少女は溢す。つい直前に言われた言葉をそのまま伝えていただけであるのだが、これが思いの外、魔女の胸に刺さった。
「痛っ――何で俺が殴られるんだよ?」
「知らん。弟子のやったことは、師匠の責任じゃろうが」
再び杖で少年の頭をどやしつけ、ティアは今度こそそっぽを向いた。
「責任は取るが、理由も聞かされず殴られるのはなぁ……」
「おいジオ、何か始まったぞ!」
口ごもるジオが何事かを続けようとしたところで、真下に座る人物から声が入る。思わずキリカへと視線を向けようとするも、注意は催事場の中心へと奪われてしまった。
わぁわぁと沸く声は、確かにそちらへと注がれている。いつしか観客席の灯りは消え、代わりに舞台中央、一点に光が集められた。そこには人々の視線を受けつつも、全く動じない青年がいた。黒い外套をまとった男は不敵に笑う。
むしろ落ち着き払った姿を観衆へと見せつけ、男は緩慢ながらも大仰に動作を取ってみせる。手にしたものは玉ねぎであろうか。丸のままのそれをおもむろに口にした。
一斉に観衆から出されるものはどよめきへと変わる。どう考えても生の玉ねぎであった。シャクリ――軽快な音が、魔導器を通して大きく響き渡る。誰もが呆気に取られ、この人物が次に取る行動を注目していた。
「大英雄ヴァリスナード……私の知識が確かであれば、彼は大戦を終結させた人物だ。彼の功績は、争いを収めたことではなく、その先。そう、人々に営みを享受するそのゆとりを取り戻した」
淡々とした語りと共に、絞られていた光が舞台全体へと広がり始める。
レティア闘技場の舞台よりも一回りは大きい。そこかしこに調理台を据えられたここは、王国随一の料理コンテストの場に相応しく、会場からは再び歓声が送られた。
「料理、それは人類が手にした最も身近にして、最良のエンターーーテイーメント!」
会場の明るさと共に、男の声のトーンが一段は上がる。更に主催者席までも灯りが広がったところで、身に纏っていた外套が脱ぎ捨てられた。
「レディース、アンド、ジェントルメーーン。そしてそして小さきお子たちよ! この会場天辺に鎮座するモニュメントを見たか? わたーしは見た、金色に輝く玉ねぎを。終戦の大英雄の好む食材はネギ、今宵我々は一流の料理人がこの食材を如何に調理するか、国内最高峰の職人たちが集うこのコンテストが、今、幕を開けるーーっ!」
一息に長台詞が紡がれれば、聴衆は五人の料理人へ熱い視線と歓声を注ぐ。いずれも王都一と謳われる面々だ。作られた料理が観客にも提供されるとなれば、沸かない訳がない。
「申し遅れました。わたーしはさすらいの吟遊詩人、リバーハインドでございます。先日、ひょんなことから王都の通行証を入手したところ、あれよあれよと言う間にこの地へ立っております。エンターテイナーを自称して止まないわたーしは、この状況、国一番の料理人を決めるこのコンテストの実況を賜ったことに、興奮が隠せません!」
さあみなさま、類稀なる才能の饗宴を享受しましょう――市民へと余すことなく訴えかけ、吟遊詩人の男は仰け反ってから身体を折りたたむ。こめかみに指を添えること数秒、流石に酸欠に陥ったようであった。しかし、次の瞬間には姿勢を正し、リバーハインドはコンテストの主旨説明へと移る。
「なぁ、ジオ。あれって……」
「最近出来た知人にそっくりだな、うん。俺が王都の通行証をあげた奴に、よく似ている」
他人事のように呟く少年であるが、その表情はどこか感慨深げであった。主催者の紹介が場内では進められていたが、ジオは人々の注意を引きつけるリバーハインドへと視線を注ぐ。
流石は吟遊詩人と言った様子で、つらつらと淀みなくヴァリスナードの栄光が語られている。本人から既にそういった話を聞かされていたネギの勇者は、瞳をぐるりと動かして、王国一を競い合う料理人の姿を納めていた。
その五人はおよそ自信に満ち溢れた立ち居振る舞いをしている。ただその中に、何とも場違いな人物も見られた。
「ジオ、カンナの姉ちゃん、緊張してないか?」
「あー、そうかもな」
緊張は別に悪いもんじゃないぞ? そのように応じながら、勇者は依頼人を見た。不安から癖である髪いじりをしつつ、彼女の瞳は右へ左へとギョロギョロと忙しなく動いている。
「そう心配するでない。カンナは、あれで案外肝の据わった女じゃぞ?」
そこそこに気分が落ち着いたか、魔女はキリカへいつものように尊大に語ってみせた。あれはきっと、様々な食材や慣れない調理器具を如何に扱うかを考えているからだ――声には出さず、炎の料理人の健闘を祈る。
「さてさて、お待たせいたしました。王国料理コンテスト、ここーに開幕です!」
吟遊詩人が口火を切ったことで、各々料理人が動き出す。レティア闘技場と比べても遜色のない熱気に包まれ、コンテストが開催された。




