アイリスの子らに祝福を 2
「いい天気だよなぁ」
御者台に座ったジオは何の気なしに問い掛ける。王都は目と鼻の先、大きな門が遠くに見えていた。晴天に恵まれているのは確かだ。「えぇ、間違いねぇです」と手足の長い従者は同意してみせた。
「まだ門の外なのに人がたくさん……。祭りでもあるのか?」
「アイリスの祭りは春ですぜ。こいつはガッシュの結婚祝いの集まりでしょう」
へぇ、こんなにも集まるのか。
ジオは素直に感心していた。暁の勇者ガッシュとはこの国で知らぬ者のいない勇者だ。黒鎧の大英雄と並び称されていたが、今では彼こそがただ一つきりの希望とさえ謳われている。
知ってはいたが、実際に目にするとまた違う想いが湧いた。実感したとでもいおうか、自身との違いに頭を下へ傾けてはぼそりと呟く。
「やっぱり凄いやつなんだな、カラシ色の勇者は」
「暁の勇者なんすから、当たり前で。ガッシュをそんなぞんざいな呼び方するの、旦那とヴァリスナードの御大くらいなもんすよ」
コーディーが呆れたように言うのも尤もなことだ。頭ではジオもわかってはいる。わかってはいるが、妹を巡り対立した日からガッシュのことは正面から見ることが難しくなってしまった。
因縁云々はさて置いたとしても、正統派の勇者と自分が比べられると不貞腐れそうにもなってしまう。そこを自覚した上で、ジオはなるべく素直に心情を吐露した。
「カラシの人を見ると、どうしても張り合いたくなっちまうんだ」
まったく未熟なことだと勇者である彼は自戒を込めて独白される。
「えー、そこまでハッキリおっしゃいます?」
あまりに正直な告白だっただけに、コーディーは少々面食らってしまった。尚も翳った表情を浮かべる主を隣に見れば、出来る限り顔を真摯なものへ変えた。
「勇者としての道は違えたが、性質的には近さを感じてる……。そんな風にガッシュは旦那のことを言ってたさ。あっしが見てても思うすよ、あの兄ちゃんは考え方が御大によく似ておいでだ」
暁の勇者との会話や、その後のやり取りを思い出しながら語られていった。幾らにぶかろうともこれは慰めだ。ジオは何事かを言おうとしたが、それよりも先にコーディーの方が口を開く。
「んで、一方の旦那は立ち居振る舞いが御大によく似てる」
今聴かされたものから少年勇者の顔は驚いたものになる。意外だと表情で示す主へ更に言葉は続けられた。
「二人とも似てるから、似てないところがすっげぇ大きく見えるんじゃないですかいね?」
「むぅ……」
「その唸り方、御大がよくするやつですぜ」
「俺が、じっちゃんに? そいつはないだろうよ」
腕を組み、ジオは首を捻った。「そらもうそっくりよ」などと隣から届けられるのを困惑した様子で聴いている。
(そりゃ、真似出来るなら真似たいさ)
先日もオッサンと話していたところであるが、ヴァリスナードが父親代わりなど畏れ多い。名もなき勇者である彼は、自身があの大英雄と似ているなど、とても思えたものではなかった。
その想いを知ってか知らずか、コーディーは手を大きく振りながら話題の軌道修正を図る。彼が始めた話だとしても、いつもの幸薄い顔にヘラヘラとした笑顔を乗せる図々しさがあった。
「この際ね、御大の話は脇に置いてくだせぇ。あっしが言いたかったのは、ガッシュ――ウィゴッドもジオグラフィカエルヴァドスも、どっちとも立派な勇者ってことでさ。比べるもんじゃねぇです」
「……それは、自信持てってことか?」
「そういうことっすわ。ああ、うーん……。従者の身が偉そうに言っちまいやした。すんません」
戸惑いは一層深くもなった。熱弁されたところで、ジオが謳われぬ勇者であることに変わりはない。だが、妙に器用な男が必至にあれこれ話すのだ。
皺が刻まれそうになった額へ、拳をこつこつと当ててジオは表情を整えていた――お兄ちゃん、また変な顔してる。そんな言葉が聞こえてくるようであった。
「んあー、謝ることじゃないよ。コーディーは俺を気遣ってくれたんだから」
いつもの間抜け面のまま、隣の男へは言葉を返す。コーディーがいつもの様子で話してくれたのだから、それに応えねばならない。主とはそういうものなのだと思う。
意識などしていなかったが、言われてみるとこの返事の仕方もヴァリスナードがよくするものに似ているのかもしれない。どうやら無意識の内に影響されていたらしいと、ジオは納得しにかかった。
「わかった。わかったよ、コーディー。何はともあれ、俺が腐ってちゃいけないな」
ふぅ、と息を吐けば、糸のような目を見開いて浮かれている従者の姿が映った。
「そうそう、旦那はそうでなきゃなんねぇ! となると、後のことはどうします?」
「と、いうと?」
「ほら後ろ、姐さんがムスーっとした顔で見てますぜ。おお怖っ!」
美人の睨みはガチでヤバいっすね、などと告げては笑い出す。
それこそ心外な話であった。ジオは咳払いを一つすると、後ろの美人にも聞こえるような音量で声を出す。
「ティアとは王都で一緒に出掛ける約束をしてる。心配はいらないぞ」
「え、マジですか? そいつはめでたい! ですけど、王都でデートっすか。ついには旦那も大人の階段を上っちゃう? それもあんな美人と……、ズルいぞ旦那!!」
その美人に苦労しているから態々御者台に座っている筈であった。
感謝を捧げようとしていたジオも、コーディーがからかい半分に語り始めれば辟易とするのを止められない。
「えーと、コーディー。デートの前にな、頼みたいことがあるんだが」
「へぇ、なんでしょ」
「繰り返し言ってるが今の俺は加護が上手く使えないようなんだ。じっちゃん宅に着いたらな、緑色鬼になった俺の拳を受けてくれ。何、一月前に拳を綺麗に捌いたんだ、問題ないだろ?」
からかい半分に対抗するため、こちらは冗談半分。
そのつもりであったが、コーディーは手綱を放り投げると共に馬車から飛び降りていた。
「旦那、関所が混んでるみたいだから様子見てきますわ!」
遠ざかって行く背中越しに「旦那の本気相手とかマジで無理だから!」などと、いっそ清々しい程の叫びが聞こえてくる。
「オッサン、あいつ俺の拳を捌いてたよな」
「その筈ですが……。はて、あの顔はどうやら本気で無理だと思ってらっしゃる」
単純な疑問をジオは呟くと、荷台から顔を覗かせたキョウジも同じように不思議そうな顔をしてみせる。一月前、オッサンが同意するようにコーディーは緑色鬼の本気の一撃を正面から払っていた。
「あー、ひょっとしたら!」
パンと両掌を打ち合わせてオッサンは得心したと顔に表してみせる。
「ひょっとしたら、今の彼ではなかったのかも知れませぬ。あの時のシャロ様も別の時間から来てましたし」
「どういうことだ。コーディーって何人もいるのか?」
従者は一人で納得していたようだが、ジオは未だピンとこない。
「これよりもっと先、未来のコーディー殿が連れてこられた可能性がありますれば。何せ相手はあのシャロ様ですので……。何が起こっても不思議ではありますまい」
未来から人を連れて来るなど、想像もつかない話であった。だが恐ろしいことにあのシャロならばと思ってしまう。
冗談と思いたかったが、オッサンの顔は真剣そのもの。それを保証するように、幼少期にシャロが「私は姉であって姉ではない」とふざけたことを言っていたことが思い出されていた。
(まぁ、あのシャロだもんな)
オッサンの言うとおりなのかもしれない。
が、確かめたくとも、ジオが幾ら刻印の魔法を使おうともシャロの姿はどこにも見つけられないでいた。コーディーとのやり取りで少々気弱になってしまったのは、ずっと見守ってくれていた姉と連絡がつかないことも手伝っている。
「とにもかくにも、全てはじっちゃんとこに行ってからか」
治療に王都へ出ていたティアは戻ってきたが、姉からの連絡はある時を境にパッタリと途絶えてしまっている。
不審な様子はなかったかと尋ねたくもなったが、荷台を振り返ることは怖くてジオは手足の長い従者が戻るのを黙って待った。
ネギの勇者一行の馬車がトトリの関門を前にした頃、コーディーが戻って来た。息せき切って走る彼は御者台に手をかけるなり、長い腕を伸ばして水を要求する。
主に代わり手綱を握っていたオッサンが革袋を手渡すと、奪い取られるようにして移動したものがトプンと音を立てていた。
「ご苦労様でした」
「んぐ、オッサン、あれだ! 人が多い!」
見ればわかることを大声で告げている。何のための情報収集かと思わないでもないが、年齢では中年に達した男は動じることもなく次へ話を促す。
「問題はなかったのですかな?」
「あー、ないっちゃないさ。単に人が多いから時間がかかってる。問題があるとすりゃあ、その門兵が黒騎士ってことくらいかね」
「ほう……」
コーディーが言うように、大きな問題はないようだ。オッサンは相変わらずの顔のまま行列の先頭を睨む。少し気になるのが正直なところ。それでも列はゆったりと進んで行くので、それ以上言葉を挟むことはなかった。
少し時間を置いた後、彼らを乗せた馬車も関門へとようやく差し掛かる――問題はこれからであった。通行証を出しているのに門兵である黒騎士は随分と渋っていた。
「あー、さっさとしてくんねぇかな。こちとら病に耽る大英雄の見舞いなんでさ」
「コーディー殿、少々お静かに。騎士殿よ、何か不審な点でも?」
落ち着きのない男を太い腕でオッサンは押さえる。相変わらずおっとりとした雰囲気で語ってはいるが、その目は漠然と全体を見渡し始める。
急遽門番を任されたにしては、この黒騎士は年若い訳でもない。かと言ってベテランにも見えなかった。王都へ入る前でこれならば、この先はもっとややこしいことになるだろうと、目を光らせて状況の把握にオッサンは努めた。
眺めることしばし。台本でも確認するように何度も通行証を見ていた騎士は、緊張した様子で口を開く。
「こちらへ、移動願えますか?」
「ほぅ……」
横ではコーディーが抗議のために立ち上がろうとしていたが、それは再び腕が伸ばされて止められた。オッサンは見た目には穏やかな表情のままに緊張を高めた。
(我々が目的のご様子ですな)
見やれば兵がざっと十人を越えて集まっている。
どうやら時間稼ぎもあったらしい。それがわかったところで、取り囲まれる形でネギの勇者たちは兵の詰め所へと連れて行かれることに変わりはない。
馬車を停めた後に通されたのは、四人が入室すると息苦しさを覚えるサイズの部屋であった。騒ぐコーディーを羽交い絞めにしつつ、オッサンは主へ目配せする。
「ようし、ふっ飛ばしてやろうぞ――ええい、なんじゃエル!」
「ちょっと静かに頼むな。コーディーと同じ扱いされたくないだろ?」
オッサンが危惧していたのは、姪御の気の短さであった。恐るべき早さで察したジオは、彼女の肩に優しく手を置いては用意された椅子へ導いた。
「ん、んーーーー、わかった。大人しくしようぞ」
日頃は怒鳴っているところであるが、コーディーと比べられてはさしもの魔女も堪ったものではない。ローブのポケットへ手を突っ込んでは沈黙を貫いてみせる。
「して、我々がここに呼ばれた理由は?」
続いて椅子へ座ったオッサンは淡々と尋ねた。狭い室内、大柄な中年男が陣取るだけで圧迫感が生まれる。
「あー、いや、何と言いますか」
歯切れの悪い言葉を出すのは、尋問役の黒騎士だ。鎧を纏った者と黒衣の神父らしき者の計二名。しどろもどろとしているのだが、こういう手合いの方が却ってややこしい。
キョウジはどうしたものかと、先代ネギの勇者との旅の記憶すらも引き摺り出して交渉を始めた。
「困りましたな、手足の長い彼が言うとおり、我々はヴァリスナード様のお見舞いに来ましたところ。通行書を提示した後の足止めには、それなりの理由が欲しいものですぞ」
淡々と語るオッサン。結局のところ、権威にはより大きな権威をぶつける方が早い。
世話になった大英雄を利用する形なので、申し訳なく思う。しかし今は三代目ネギの勇者であるジオが一番大切なのだ。ありとあらゆるものを利用してでも相手の魂胆を見抜こうと、熊のようなつぶらな瞳を細く絞る。
じわじわと攻めるオッサンを前にしても、黒騎士は退くことはなかった。
「理由も何も、現在の状況はお分かりでしょう? これまでにご覧になられたとおり、暁の勇者の成婚祝いに便乗しようとする不逞の輩は排除せねばなりません」
「ははぁ、困りましたな」
事務的に告げる言葉は正論そのものだ。だからこそ、余計に性質が悪い。誰であろうと尋問するという建前が通されてしまった。主が勇者であることを告げる前に押さえつけられた形だ。
黒騎士たちはこちらの身分などに関わらず、それこそ事務的に調べを始める――白々しいがそんな体が用意されていた。
「おたくらな――」
「ちょっと黙ってろ」
またしてもコーディーが騒ぎ出そうとしたが、今度はジオが比較的優しく殴ったことで鎮静化された。
主の判断に感謝しつつ、オッサンは次に出す言葉を慎重に選んだ。ここで暴れては、それこそ不穏分子として国教を敵にしかねない。
「我々は暴れる気などありませぬがー……、参考までにお聞かせ願いたい。どの程度の時間がお入り用か?」
手は出さないが、口と睨みは存分に利かせる。規則は守る。だが不当に拘束されるつもりもない。
その意志表示を示したところ、鎧を纏っていない方の騎士が震えながらも指を突き付ける。
「主神アイリスに楯突いたか。これより、職務権限の範囲内で貴方たちを拘束する」
「これはこれは……」
両掌を上へ向けてオッサンは困ったと仕草で表した。これはどう考えても横暴過ぎる。
問答無用で拘束されたし――恐らくはこのような指示があったのだろうと推察するも、きな臭さを覚えてしまう。
悲しいかな、オッサンは今の王都の情勢をこれで推し量ることが出来た。
大英雄ヴァリスナードの権威失墜。これが彼らの目指すところなのだ。
「ふぅむ、困りました」
結論が見えても、オッサンはゆったりとした動きで困惑を示してみせた。王都の中に入ったのならばいざ知らず、ここで不当な扱いを受ける謂れはない。
だが無情にも尋問役の黒騎士は淡々と次の言葉を口にする。
「困ったところで、我々には関係がない。諸君らを拘束させてもらう」
「待って欲しい!」
オッサンが慌てて出した言葉は、誰に向けてのものであったか。壁に背を預けていたジオが、僅かながら動こうとしていた。
短気はしないと信じている。だが、例えばフラティラリアが何処かへ連れて行かれればどうなるだろうか? 自分で想像しておきながら、オッサンはここに来て必死になった。
主には人間種の勇者で居てもらわねばならないのだ。
ジオが暴れ出すくらいならば、いっそのこと己が暴れてしまおうか。途中まで考えていたことだが、これまでならば迷うことなく判断するところであった。しかし今となっては妻の顔が脳裏を過ぎってしまい、オッサンの動きは一瞬遅れる。
惑う中年を前に扉がキィと音を立てて開かれた。
「待て。その人たちは招かれている人たちだ」
ネギの勇者一行の正面。王都へと通じる扉が開かれては、そのような言葉が出されていた。
「あ、いや、彼らは――」
「私が責任を取る」
戸惑う黒騎士たちへ、闖入者はきっぱりと告げた。
入って来た人物は髪こそ茶髪であるが、それ以外は黒色を纏っている。この場に居る黒騎士と同じように見えるが、鎧の端には細やかなな装飾が見られれば地位が上だとわかる。
何より、その男の顔を覆うものは、冑ではなく仮面であった。その風変わりな黒騎士が、腕を伸ばしてネギの勇者一行へ背後の扉を抜けるよう示している。
「通っていいのか?」
これまで黙っていたジオが確認のために囁いた。
無機質な黒色の仮面と視線が交錯するが、このユニークな騎士は黙っている。むしろずっと尋問ならぬ尋問を続けていた騎士が困ったようにしてる。
「ああ、いえ、その……」
事務的に受け答えがされていたが、視線は泳いでいく。右へ左へ動いた後、仮面の黒騎士と目が合わされた後には下へと落ちた。
「問題ない。王都トトリへようこそ、三代目ネギの勇者」
周囲へ睨みを利かせながら、仮面の騎士はジオたちを促す。
「面倒かけたな」
他の誰かが言葉を出すよりも先に、ジオは壁から背を離した。去り際にいつものように振り返らず右腕を振って行く。
オッサンが怪訝な顔をしていたが、それには構わず先へと進む。それを穏やかな様子で見送った後、仮面の男はピクリと身体を震わせた。
震えたまま手を伸ばす。
「待て――いや、勇者に向けてではない。そこの手足の長いキミだ」
「あっしですか?」
主に続いて二番手で扉を通ろうとしたところ、コーディーが呼び止められた。黒騎士に何かと因縁のある彼は、声音には出さなかったが顔色は厭だと告げている。
何より、座る茶髪のこの騎士が持つ佇まいには覚えがある――精霊が直してくれた背中の傷が疼く気にもなった。
「……不躾な質問だが、ネギの勇者とは一体何なのだろうか」
淡々と尋ねてくるその声色には、やはり聞き覚えがある。
コーディーは瞬間的に頭がカッと熱くなった。が、大袈裟な程に溜め息を吐いては、眼前の黒騎士へ向けて人差し指を揺らしてみせた。いつものとおり、胡散臭い、軽薄な顔で告げる。
「青臭い生きものさ。吐いた青臭い言葉を実現していく、そんなバカげた存在ですわ」
言い終わると、鼻息を荒く吐いてコーディーは現在の主の背を追って歩き出した。
もう部屋を出て行こうというところ、何となく気になって後ろを振り返る。仮面を被った人物は迷いながらも口にする。
「キミは今、満足か?」
黒色の仮面の下、よく見知った瞳は射貫く程に強くコーディーを睨んでいる。
どこぞの誰かは知らないが、こうも問われては黙ってはいられない。パフォーマンスであるとわかるよう、大仰に溜め息を吐いてから彼は言った。
「満足はねぇでさ。けどね、俺のようなチンピラにも、あの少年は夢を見させようとする。真っ直ぐな人を見てたら、俺もちゃんと出来るんじゃないかと思う……。まぁ真っ直ぐ過ぎるので、あんたの髪の毛の先程度には腹黒くなってもらいたいけどな」
そんじゃもう行くわ、告げれば振り返ることもなかった。
ローブを纏った少女と半裸の男が王都へと続く扉を抜けるのを見送り、仮面をつけた黒騎士は黙って首を縦に振った。
ネギの一行が扉の向こうへ消えた直後、コーディーが再び顔を覗かせる。
「余計なことだと思うんですがね、あっしの主はとんでもないお人好しなんすわ。あんたが何処の誰だか知らねぇが、あんたが望めば、ジオ様は喜んで話を聴いてくれるさ。おいらも、いつまでも恨んじゃいねぇし」
んじゃあな、とそれだけを残して扉は再び締められた。
「……すまん」
仮面の下、濃紺色の瞳を歪ませて騎士は呟いた。
暁の勇者の成婚祝いに湧く王都へ、ネギの勇者たちは再び足を踏み入れる。




