状況をまとめてみますが
前回までのあらすじ
目が覚めたら見知らぬ森の中に居て、ネトゲのマイキャラの姿になっていたでござるの巻。
……なるほどさっぱりわからない。
どうしてこんなことになったのか、現在に至るまでの過去の記憶をほじくり返してみても原因がわからなかった。
昨日は普通に仕事終わって、家に帰ってネトゲしたあと寝た。――いつも通りの一日だ。
それで目が覚めたら知らない森で放置プレイって人生ハードモードってレベルじゃねぇぞ。チュートリアルも無しとかクソゲー以下じゃねぇか。
淡い木漏れ日。木々立ち並ぶ鬱蒼とした森を進みながら誰へ向けてでもなく悪態をついた。
それにしてもかれこれ一時間ほど歩いているような気がするが一向に景色が変わらない。右を見ても左を見ても木、木、木!
……もうやだ、オラお家さ帰ぇりてぇ。キンキンに冷えたビールを飲みながら熱々のローストチキンにかぶりつくんだ。
余計なことを考えてたせいか、足取りは更に重く。段々と喉が乾いてきた。この際ポーションでもいいから飲み物をくれ。アイテムストレージとかないのか。
そんな考えを巡らせた直後、脳内に様々なアイテムの一覧が浮上し始めた。
上級回復薬×852
回復薬×999
最上級回復薬×385……エトセトラエトセトラ。
「は……?」
ざっと流し見た物の種類だけでも優に千は越えようか。
凄まじく見覚えのある一覧表に瞠目する。……これ、FNOでの俺のアイテムストレージじゃねぇか……。
装備品から消費アイテムまで、突如として脳裏に浮かぶ数々の情報量に思わず立ち眩みを覚えてしまいそうになったが、恐る恐るその中から回復ポーションを一つ、選択するイメージをすると微かな消失音と共に覧のポーション個数が999から998に減少。そして俺の右手には青い液体が並々に注がれた三角フラスコのような容器が置かれていた。
「まじかよ……」
完全に非科学的、非常識的な現象を眼にし、回復ポーションを仰ぎ飲みながら思わず俺は呻いた。ちなみにポーションは野菜ジュース味でした。
ふと思い至り、再びアイテム覧を開くイメージをする。現れたのは両手一杯の大きな丸鏡――≪真実の写し鏡≫。
イベントの重要アイテムの一つでアイテムストレージの底に眠っていたがこんな時に役に立つとは。
両手に持った丸鏡を俺はそっと覗き見る。
果たしてそこには、ショートカットに切り揃えられた艶やかな黒髪。
白磁のような小顔の白い肌にぷっくりとした紅色の唇と小さく高い鼻。
ぱっちりとした長い睫毛を瞬かせた大和撫子然とした美少女が鏡越しにこちらを――残業終わりの疲れたサラリーマンみたいな腐った眼で――見据えていた。
「……あかん」
思わずそう呟いて俺は頭を抱え、その場に蹲った。