ふつー、ならこう思うでしょ?かわれるならかわります。
都会、離宮。
ここ、ド田舎。
こんなの比べる意味ってなんなんだろーか?
これって比較に出した時点で選ばなくたってね……、バカにしてんのかって思うよ、まったく……。
ひとつしか無いじゃないか?
そんなの決まってる。
「都に行けるってゆーのに、ド田舎に誰が残るって言うのよ?」
アタシは何よりも都会の方がいい。
ここよりか、退屈じゃないと思うんだよなー…………ここには、何も無い、何にも無い!
森、山、川、自然。
そう、田舎らしく……せいせいするくらい自然だけは充実しまくってるって程度。
その自然にも、外出許可が出ないから触れられてないとか、もうね……はっ!
アプローチするにも断然離宮に近い都会の方がいいじゃん!
選択を間違える理由の方がレアだわ……。
「ただし、条件がある。……なんだ?口は悪いがやはりガキだな。何も無くて、領地を離れられると思ったか?うん?」
「この、───詐欺師」
オーウェンのその言葉に瞳を大きく見開いて凍り付いた。
もう、なんかね、かったいハンマーかソレな鈍器で後頭部思いっきりガツンとやられちゃう。
そんな、叩き落とされた気分。
上げていい気分にしてから落とすとか!
ガーン!
だよ、それ以外ないってくらいに今のアタシの頭の中にその吹き出しに使われてそうで、……使い古された擬音が反響しまくってるよ、チクショゥッ!
リフレインだ、リフレインしまくってるんだよー。
気味が悪いくらいに。
なんだろな、これは。アタシのことは、いい反応する見世物かとでもおもってんじゃないだろうな?
人の表情の動きを見て楽しんでるとみたね、このクソ虫がぁああーーっ!!
にたにた笑いやがって、ぐぐぐ!
ゼリエが、あの怖いのが居なかったら余裕で飛びかかってたっての!
ああ、、、ムシャクシャっする!!
このイライラはどこにぶつけたらいいのよっ!
「まずは、勿論だが……皇帝に謁見を申し入れる。次に婚儀を都で執り───」
「ちょっと待って、待ってみて?……………………えっ?」
違う意味でちょっと息が吸えない。
軽く飛んでた、意識が。
帰ってきたのを呪う。
そのまま逝ってヨシ!なら、幸せだったんじゃないか、なぁ……リズ。
なんだ?
何つった……オーウェン、こ!ん!ぎ!こんぎ、こんぎ……婚儀?!
もしかしなくて、それってさ。
アレか?
「してないだろ?残るというならこっちでやって王族を招待し、……まぁ、難癖をつけて代理が殆どだろうな」
なぁ……リズ、リズってば。
オイ!出てこいよ、代われって。
やだよ、アタシ……そりゃいい女じゃなかったかも知んないよ?
自分でも言葉に品がないな……て、思うしさぁ。
でも、だからって。
来世は化け物と結婚するなんて思わねーえもん!
前世でどんなことしたらこんなしっぺ返しを受けるんですか、神様?祈りが通じてるなら、答えてくださいー、神様ぁぁぁ……。
現実逃避。
いつまでも、やってるわけにいかないから切り替えよ。
リズ、……お前、恨むからな?
ホントに恨むぞ……!
「それを……、する、……ふむ…………パス、したらダメ?」
今からでも遅くないって───リズ、代わって!代わってよ!
「それ、じゃあ無い。ましてや、なんだ?パスとは。コホン、おっといかんな。知らなかったか?言ってみれば、俺と姫様の婚儀、結婚だな。結婚をする儀式のことだよ。畏まって言うなら公爵と殿下の一大婚儀となる。あ……そうだ。そんなわけで、都へ、行くのは決定だからな」
オーウェンの手が大仰な木箱を取りだし、テーブルの上にコトンという音を立てて置いた。
見ただけでなんか解っちゃう。
そんな、飾りがゴテゴテ付けられてて、言ってみればRPGなんかで見かける、ダンジョンとか街中とかにいる───宝箱。
金メッキか金か、それはどうでもいい!
とにかく、高そうな箱。
箱だけでお値段、どれくらいすんですか?
パンピーな日本人はそんなもの生で見ることはまあ、まず……あり得ないですよ?
アタシはゴク!っと唾を飲み込んでから気づいた。
視線が宝箱にピタッと付いて離れなくなってることに……、どんだけ……、どんだけアタシってやつは意地汚いんだろう、……いやあ、きっと大抵こんななっちゃうだろーよ、みんなの総意!
そうだ、総意だよ、みんなの。
アタシ一人で卑屈になる必要ってないだろ?
あんなの見せられたら誰だって……なぁ、リズ……アタシ、それでもやだよ……。
嫌なんだよ……。
結婚、それくらいやり直し人生でいい目見させて欲しいよ……頼むよ……。
「こ、こ、婚儀い?──結婚……結婚……っ?!」
もう、涙目。
頭んなかショート。
アタシ、壊れちゃった。
……その方がいいよ、ずっといい、壊れちゃった方が幸せ。
金と結婚できるよーな大人になりたくなかったよ!
予想は大体出来てた、そう───
「そうですよ、ご主人様とティルフローズ殿下の婚儀です」
箱の中身を見て、意識が遠退いていく気がした。
ジルリットの鈴のなるような凜としたよく通る声がアニメの中の二次元のキャラみたいに耳に残った。
それが、最後の瞬間の記憶……。
「───ん、……ひゃうっ!」
寝返りを打つと、目の前に顔があるって経験は……物心着いてから無い。
あったらヤだろ、親は二人とも朝早かったし。
親以外ったら誰も居ないわけで。
物心つく、その前は家族の顔が普通にあった気がする。
親の顔を見つけて安心したんだ、……その時なんて思ったか、まではちょっと定かでは無いんだ、ゴメンネ?
ああ、でもなぁ……これは無い、無いわー。
目覚めてすぐ肌に刺さる殺気。
起きてすぐ、目の前に感じるのは、殺すつもりの視線だ。
殺気を浴びるほど感じて目覚める気分てどんなか、───知りたい?
じゃ。教えてあげるね、一言で言えば───さいあく!
最悪な気分で目覚めるってどうなのよ?なんなのよ、もう!
お化け屋敷の脅かしてやろう、って狙われる視線もあれでなかなか怖いけど。
桁が違う。
寝汗じゃない汗を起きてすぐ掻いてる……冷や汗。
「……う、……何してんの、ジルリット?」
ん…。
んんー……?
アタシ、彼女にこんなに恨まれる様な事したっけ?
声掛けたんだけど。
無視だ。
スルーされて、じぃっと睨まれてる、無言で。
「…………」
死ね死ね死ね死ね死ね……ってエンドレスで念じられてる気すらしてきた、怖いんですけど。
「あの、……起きましたよ?」
「ふっ……」
言われなくてもなんと無く解るけど……好きなんだ、ううん、好きで好きで堪らない、ジルリットから伝わってくるのはそんな気持ち。
変われるなら、変わってやりますよ。
ハゲでデブでクズでゴミで変態のおっさん。
どこがいいんだか、……ジルリットはオーウェンの事が好き過ぎて、嫁いで来たティルフローズにものっ凄い嫉妬をぶつけてくる。
いい迷惑だ、コレ。
仮に、……仮にだよ?
ゲテモノが好きだとしても、クズよりはまだオークとかモンスターの方がマシとかアタシは言いたい。
それくらい生理的にオーウェンは無理でした。
おっさんに抱かれるorアタシが乗っかる、うん……どっちも吐き気がするんだ、レート爆上げの罰ゲームかな、レートは10万くらいの麻雀で。
それで、おっさんに負けて払えなくて……そんな罰ゲームを容易に想像できちゃった。
アタシ、汚れてるなぁ。
そもそもだ、ぜんせは結婚式とか出来たんだろうか?そこまで生きたのか?
それを考え出すと頭が痛くなる、これはアレか、禁束事項と言う奴。
ぜんせの色々は覚えてて自覚あるのに、その死を知る事はタブーですよと。
ああ、思い出せない事はもういいや。
ジルリットが気絶したアタシを起こしに来た理由は、昼食の準備が出来たとそう言うこと。
屋敷にだって侍女は居るでしょうよ、どうしてジルリッ……え?居ないの?
どうやらあのハゲ、気に入った人間しか側に置かないタチらしく、広い屋敷にハゲ、オルセサリア、ゼリエ、ティルフローズ、シェフのゴンドワ、何でも屋のドュースの6人しか居ない。
えーと、屋敷全体像は解らないけど食堂だけで20人分椅子あったんだけど?
ジルリット曰く、
「このタルタの屋敷は元々は前に住んでいたタルタ家のもの。一族で住んでいた様ですから、色々と多いでしょう。ご主人様は一族を招いて住むつもり無いのです、つまり出来る範囲でわたくし達がやるってことなんですわ」
むぅ、つまり……あのゴミが越してきただけで元々は大人数が住んでいた屋敷らしい。
きっと凄く沢山の侍女を雇って、綺麗にしてたんだろう……でも今は。
言われて天井、部屋の隅などに目を止めると、やっぱり……蜘蛛の巣、それに埃……。
掃除は行き届いてない印象だ。
食堂くらい、頑張れよ……アタシ?
いんだよ、アタシはまだ11歳なんだし、お姫様なんだよ?
何か、もう。
ここの生活に飽きてアタシの選択どうこうなしに、都に逃げ帰ったんじゃないかなって思えちゃうんだが……どうだろー?
いやいや、オーウェンが、だよ?
側室派が矮小な公爵って言った意味が解ったかもだ。
財政難の公爵なんじゃない?
それで、皇帝に無心する為にティルフローズなり、妹のプリムなりを狙ってた……とか!
リズの記憶を頼りに周辺の様子を思い出すけど、人家が余り無くて荒れた大地が目立つんだ。
ディボタルタに金を落としてくれる領民も、領民が耕す農地も無ければそれで暮らす領主は忽ち財政難になってもおかしくない。
ここって、試される大地とか、言うんじゃないよね───荒れ地がさ、そのままって本気で疑うぜ?
───モンスターの巣。
だったり?
───魔王の拠点。
だったり……てそれはさすがに無いか。
「ジルリット、ここってどうして人が少ないの?」
「さあ……ふふふ。妻の意識でも出てきましたか?……よい、こと、……ですね」
聞かなきゃ良かったよ!
ナンテコッタイ!
Oh my God!
ジルリットの気分がダークに染まる瞬間がわかった。
ぞくっとした。
その瞬間、殺されるかもって。
全身を恐怖が走っていった。
ゼリエと違って、スイッチが違うとこに着いてるけど……ジルリットも格段にヤバそ……。
以後、気を付けます……。
殺されるなら、恐怖も何もないまま死にたい、心からそう思った……昼下がり。
読んでて気持ち悪いでしょ?
書いてて気持ち悪いもん♪
次、次で気持ち悪いの終るはず……ティルフローズのこと思うと次々と伝わってくるよーに流れ込んできちゃうのねーって、何の言い訳にもならないことを……
だから、気持ち悪いから。
ふふ、ブクマがガリガリ削られてくんですね?
すぱっときって、ちゃんちゃん!次はがっこうだよっ、てしたいよ……うん