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アンティーク姫のいる探偵事務所  作者: 赤柴紫織子
一章 遺骨ペンダント
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五話『逃避行in新宿』

 ともあれ、醜態を誤魔化すように話題を進める。


「骨を入れたそれをペンダントにして肌身離さずってわけですか…。なんだかよく分からない感性ですね」


 死体は埋めるものだとしか認識していなかった。

 そういえばお骨を食べる文化みたいなのは日本にもあるって言うしな。骨の味はわずかな塩味だそうだけど、確かめる気にはならない。

 大事な人を自分の一部にしたいという願望を持つ人はいるのか。

 ペンダントも似たような意味だろう。


「ふふ、死んだ後も一緒にいたいだなんてロマンチックね~。遺体だけに?」

「……」

「……」

「そのギャグはちょっと……」


 誰も反応しなかったために仕方なく僕がフォローにまわる羽目になった。

 自分でも無いと思ったのか顔を赤らめて恥ずかしがる百子さんを横に咲夜さんは少し顔をしかめた。


「私はペンダントにされた人はちょっと可哀想だと思いますよ。支配欲丸出しじゃないですか」

「どちらにしろエゴだしね~。でも死んだ後のことなんて当人には分かんないわけだし、生きている人間がどうこうしてもいいとは思うんだ」

「それはそうかもしれませんが」


 ふむ。ふたりには頑固とした思考があってそれが真逆なのだろう。

 僕としてはどうでもいいの一言に尽きる。

 死んだらどうなってもいいし。何やられても痛くない。


「ロマンチックなのか支配欲なのかは個人に任せるとしてだ、んで? サク、お前はどんなトラブルに遭ったんだ」


 所長はにやにやと笑いながらドッカリと机に脚を乗せた。

 容姿も相まって借金取り立て屋のボスみたいだ。

 言われて思い出したのか(実は僕も忘れていた)、咲夜さんは腕を組んでその端正な顔を少しむくれさせた。


「追いかけまわされました」

「経緯は」

「まずロッカーですね。小銭を入れるタイプです。変に人のロッカー内を覗き見る不届き者が居たので、しばらく様子を見て、注意が他所に行った隙に鍵を開けました」

「分かった。…それで?」

「そこにあった封筒を取ってジャンパーにしまいました。そこまでは良かったんですが、どうしたわけか気づかれました」

「…いくらだった? ロッカー」

「300円です。…先払い方式でしたので、追加料金ですね」

「なるほど、じゃあ最低でも二日前にはあそこに置いてあったのか。値段表示で目星をつけられていたのかもしれないな」

「え?」


 何を言っているのかよくわからない。

 駅ロッカーつかったことないし。


「なんだ、知らないのか。時間によっていくら入れろって画面があるんだよ。それを見て時間の見当つけちまえばあとは張り込むだけだ」

「ははぁ…。そんなにうまくいくものかは分かりませんが、とにかくあちらの目論見は成功したと」

「そう言うわけだ。サク、そっからどうした」

「撒いて撒いて、バイクに乗ってそれからまだ追いかけられました。服装までチェックしていたみたいですね」

「ははぁん」

「新宿をあっちこっちふらふらしてようやく撒けたので、ここへ」


 それじゃあコンビニ行く余裕もない上に疲れる逃避行だっただろう。

 ふと重要な事に気がついて僕は聞いた。


「でも、ナンバープレート控えられていたら…」

「ああ。大丈夫です。ナンバープレート外してきたので。バイクの車種はどうしようもないですが」


 一瞬間が空いた。


「おいちゃんと元通り付けたんだろうな!?」


 所長が珍しく顔色を変えた。

 人に貸すわりには大事なものだったらしい。

 いやそれ以前に所長が元から外していたわけではなく、咲夜さんがわざわざ外したってことになるんだけど。


「なんで外したんですか!?」

「え? 念には念をいれようかなって…」


 ふんわりとした理由だった。


「なんの念だよ!?」

「さっきゅんはたまに変な天然ボケかますよね~」


 ケラケラ笑う百子さんと、その隣で姫香さんはつまらなそうにテレビのスイッチをつけた。


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