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キモチ
「・・・私ね、失恋したの」
「ずっと、ずっと大好きだった彼氏に、好きなコができたって、ふられたの・・・」
涙とともにこぼれ落ちる言葉。初めてあった日のこと。好きだと気付いた時のこと。苦手なオシャレも頑張った時のこと。告白され、付き合いだした日のこと。初めてデートした日のこと。手をつないだときのこと。初めてキスをした時のこと。少しずつ心がすれ違っていったこと。ふられた時のこと。それでもまだ好きだということ。流音はしゃくりあげながら話す花凛を優しく見守っていた。やがて花凛が落ち着くと彼は言った。
「な、花凛。あんたさ、まだその男が好きなわけ?残酷なことを言うけど、そいつにはもう新しい彼女がいるんだぞ?」
「それでもいいの。彼女さんには申し訳ないけど、あたしはあの人を諦められないの…」
声は弱々しいがはっきりとした返事に、流音は笑った。
「そうか。ならさ、花凜はどうしたい?」
流音の問に、花凜は薄く笑った。