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異世界生活5日目
今日はじめて怪我をした兵士さんたちが修道院に運び込まれてきました。
大きな傷、血のにおい、叫び声。
途方もない現実に、気が動転してしまいました。
私以外の人は、みんな自分の為すべきことをてきぱき片づけていきます。
何か手伝おうとしても、かえって足手まといのようでした。
私だけが何もできないまま右往左往している内に、この騒ぎは収束しました。
高い治癒力を持つシスターが治療にあたったので、大怪我をおった人もみんな今は病室のベッドの上で落ち着いています。
今、私はアリスと待機です。
「隣の国との小競り合いだって」
アリスがそう教えてくれました。対魔物ではなく人同士の戦いで負った傷だったのですね。
戦う相手は魔物だけではないようです。
「はじめてだからびっくりしたんじゃない? 最近こういうの多いの。ここ、国境の近くだし、色々あるんだろうね。」
早くも治安が悪そうという予感があたってしまいました。
それにしてもアリスはここの生活が長いせいかさっきの騒ぎも今も落ち着いています。
年下なのに、子供なのに、本当にすごい。
「アリスはすごいね。もう見習いじゃなくてもいいような気がするよ。」
「どうかな。まだまだだよ。」
そう言った私に、ちょっと照れたように笑ってくれました。