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ダイアーの密かな楽しみ

 日常系のコメディです。世界観は『正しい地球への帰り方(仮)』とリンクしてはいますが、別にそちらを読んでいなくても大丈夫です。


 注意したいのは、登場人物のほとんどがむさくるしい男だということです。BL要素こそないのですが、日常モノにあるまじき様相をなしてゆくと思います。


 また、しばしばシモネタが現れますので苦手な方は注意してください。

 ここはとある銀河のとある熱帯星。

 その星は都市部での犯罪増加に悩まされていた。

 そこで政府が郊外に建てた刑務所は、ほぼ無人であるにも関わらず、導入された最先端の科学技術によって、入ったものを刑期満了以外では絶対に逃がさない。

 通称ハイテク刑務所。誰が言い始めたかはわからないが、絶望的なネーミングセンスである。


 「3571! 3572!」

 

 ジョーはうんざりしたような表情をしてその様子を眺めている。視線の先には、海パン一丁という奇怪ないでたちで、誰かにアピールするみたいにでかい声で腹筋した回数を数えているハゲの大男。海パン一丁という姿から、水辺であることを連想できるが、残念ながらここは真夏のビーチとはほどとおい刑務所内である。この刑務所では、囚人は危険物所持への警戒から海パン一丁というスタイルが義務付けられているのである。

 「うっせーよ筋肉バカ」

 ジョーがそういうと男は腹筋をやめ、息を整えてから言った。

 「体を鍛えることが楽園への近道だと俺は思うのだ」

 楽園とはジョーとこの大男――ダイアーと、その他一部の囚人の間にだけ通じる、脱獄の隠語である。隠語を使うのは、定期的に巡回にくる警備ロボットにそういったワードを聞かれると、懲罰対象になるからである。

 ダイアーは体中の汗をタオルで拭きながら続けた。

 「それ以外に何か楽園に行くアイデアでもあるっていうのか、ジョー」

 「かといって体を鍛えて電流を耐えるってか? 無理に決まってんだろ」

 電流に耐える。この言葉の意味を知るには、このハイテク刑務所における脱獄の可能性について語らなけばならない。

 先に述べた通り、ハイテク刑務所は特定の時期、時間を除いてほぼ無人である。警備にはロボットが当たっているため、人間には有効であった贈賄なども通用しない。しかしながら、何かとうるさい人権団体の功績により、服役者の自由は比較的守られているといってよいだろう。まず二人で一部屋の牢屋には監視カメラがない。部屋の出入りこそ自由にできないが、一日に三回、決まった時間に奉仕労働や運動の時間が与えられており、その間は刑務所内を自由に歩くことができる。

 ハイテク刑務所の外壁は以外にも低く、およそ2m程度である。それにも関わらず、この刑務所を難攻不落にしているものこそが、件の電流である。刑務所の外壁はセンサーとなっており、囚人がそれをまたぐと手足につけられた電極から高圧電流が流れる仕組みとなっている。つまりこの刑務所を脱走するには少なくともこの電流をなんとかしなければならない。

 「無理かどうかはやってみなければわからないだろう」

 ダイアーはそういうと、ベッドをごそごそとあさり、テープでぐるぐる巻きのばかでかい黒い箱に、スプーンとフォークが刺さった奇妙な物体を取り出した。それはダイアー自作のスタンガンである。音楽プレーヤーをほかの囚人から集めてコツコツ作ったらしい。

 「ジョー。いつものやつ頼む」

 ダイアーはそう言うと、ベッドの上で胡坐を組んで瞑想するように目を閉じた。

 いつものやつ頼むとはつまりジョーにスタンガンの試用を要求しているのである。もちろんダイアー本人にである。

 ジョーがスタンガンのスイッチを入れると、スプーンとフォークの間にバチバチと流れた。

 「おまえってホントあほだよな」

 ジョーはやれやれといった様子でつぶやく。

 「アホではない。現にそのビリビリ君の電圧は現時点で20万ボルトにまで達している」

 絶望的なネーミングセンス。この星のネーミングの神はすでに死んだのだ。

 「そういう意味じゃなくてだな......」

 脳みそまで筋肉でできていそうなダイアーにはもはや何を言っても無駄かとあきらめたジョーは、スプーンとフォークをダイアーの肩にあてた。

 「いいか? 流すぞ」

 「構わん。やってくれ」

 ジョーが心底いやそうにスタンガンのスイッチを入れると、バチバチバチバチと電流がダイアーの体を伝わった。

 「んんんんおおおおおおおおっほおおおおおおおおお」

 ダイアーは何とも言えない声を上げて顔を目いいっぱい縦に引き伸ばして白目を剥いている。

 「お、おい大丈夫か?」

 いきなりバカでかい声で叫びだしたダイアーに不安を覚えてジョーは声をかけた。

 「んんんんんっだいいじょおおおおおおおおおおおおおぶうううううんんん」

 全然大丈夫そうではないが、ダイアーがやめたいというか気絶するまでというのがルールである。

 「ああああああ、よぐなっでぎだああああああよぼぼぼぼぼ」

 だんだんと恍惚の表情に変わっていくダイアー。しゃべるたびに口からだらだらとよだれが零れ落ちている。実にやばそうである。見た目的にも相当やばい。

 「おいもうこれくらいでいいだろ?」

 不安になってたまらずジョーは尋ねた。

 「んんもおおおちょっとおおおおおおんんん」

 何がもうちょっとなのか。ジョーの表情はどんどん曇っていく。

 「よおおおししいい、これはクリアああああああ!もうちょい強いのいってみみみみイイイイイイイイィィィイイイイイ!」

 ひときわ大きい声を上げてダイアーは気を失った。ダイアーは泡を吹きながらも不自然なくらいの笑顔で気色悪い。

 「てめぇ、ただやりてーだけだろ」

 ジョーは恍惚の表情で失神しているダイアーに悪態をついた。


 

 

こんな感じで、適当に短編の形で続いてゆきます。

飽きたら完結ということです。

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