第五話:決勝
第五話の手直しと文を追加してます。
それではどうぞ
決勝の舞台も【次元門】があった場所だが今回は次元空間は存在していない。
そこは、空間がなく外にいる観客の声が聞こえた。
今回の戦闘場所は闘技場の中で行うのだ。
流石にその周りには【慈母】の効果を展開装置を克夜の両親が作りあげたという。
「本当に俺の両親って何者なんだよ」
試合前に三人は会場の控え室の椅子に座り心を落ち着かせていた。
曖菓は前回もここまで勝ち残っていたって話していたし落ち着いているんだと思う。
エリシアの場合もこういう大会ではないが戦場に居たと言っていた。
コチコチと時計の針の音が響く。
時計の音と克夜の心臓の音が合わさったように聞こえる。
早鐘のように聞こえてくる。
すると、《トントン》と扉の叩く音が聞こえた後にワッペンを付けた男子が控え室に入ってきた。
「そろそろ時間です。会場前まで案内します」
三人は顔を合わせて頷いた。
今日で最後の戦い……学年対抗戦であるが。
そして、ベンチから立ち上がり扉に集まった。
「今日でラストです。そういえば、優勝したら何かあるんですか?」
「確かね、一つだけ願い事が言えたかな。私の場合は、ね……そこまでないから」
「それって何でもか?」
「困難なことじゃなければ可能だよ。私は使ったことないけどね」
出ると会場は人で埋まっていた。
そして、上空から下に強い風が吹き込んできた。
吹き飛ばされないように踏ん張り、そして上空を見ると……
「あら、やっとこられましたのね……待ち焦がれましたわ」
竜の背中にまたがっている少女が克夜をみてそう答えた。
そう、そこにいたのは金髪の縦巻きロールの女の子だった。この決勝戦の最終関門の一人でこの学園の上位に位置する。
あの龍こそが相棒である【古龍:火種】であろう。独特の赤い鱗と戦闘種族と思わせる荒い魔力を肌で感じることふができた。
「さて、我が名はレイナ=F=フランメルトと相方ラージャンがお相手させていただきますわ」
そのレイナの声に答えるように龍が……ラージャンが咆吼を上げた。
それは、地を揺らし三人を縮こませるほどの物だが……
『……黙れ。小童が!!』
隣にいたエリシアは斧を形成し柄を地面に叩きつけた。その衝撃は龍の咆吼を打ち消した。
『流石に煩いというものだわ。そんなの見栄をはってるしか思えませんわよ?』
「あら、流石は【古種:石動】ですわね……」
相手もエリシアのことは気がついているってことか、流石は決勝の相手だ。
「そうね、けど……怪物がどうやってこの時代まで生きていたのかは流石に不思議に思うわ?」
『それは……うん、秘密と言っておきましょう。ただ、私たちはアナタに負ける気はないということだけは言っておきます』
二人は、しばらくにらみ合ったあとにエリシアは小さく笑っていた。
レイナは、龍が地面に着地したと同時に地上に降りた。龍は擬態し人間の格好に戻った。
擬態に戻ったとしても相手は龍である、スペックとしては怪物以下かそれ相当の能力なのは言うまでもない。気を抜いたらこっちが不利になるのは確実だ。
「それでは学年対抗魔法大会の決勝戦!!」
ソルビルト国の王の声が闘技場に響いた。
「両者、悔いが残らないように……始め!!」
三人は三方向にに動いたと同時にラーシャンの頭上には直径2メートルほどの火の玉が作り出されていた。
『火炎爆弾!!』
そのまま、思いっきり投げてきた。そのまま地面にぶつかり爆発するかと思った。
だが、その考えは愚策に終わってしまった。
『散弾!!』
「って、アリなのか!?」
地面にぶつかる寸前に火弾が分裂したのだ。
二段階の魔法効果の変化ってある意味で高等魔法なのに!!
「二人とも『駿足の天馬』!!」
曖菓は散弾を回避したあとに移動式の重複詠唱を使用して魔力と回避速度の効果を付加させた。
克夜は支点を付いて全ての火弾を打ち消し、エリシアの場合は水壁を作り出し回避した。
しかし、それを見ていたレイナは小さく微笑んでいた。
「流石、『華優の姫』ですわ。あの技を回避後に支援魔法を出来るのですから」
「……何が言いたんですか?」
何かを仕掛ける?、そう考えた瞬間、背後から《ズドン》ど物凄い音が聞こえた。
●○●○
『……まったく、何ていう馬鹿力なんでしょうか?』
エリシアの戦斧をラージャンは刃をずらし、戦斧の威力を殺し対峙していた。
『それは言われたくないですね、さっさと貴方を倒してマスターの方に加勢したいものなんですけど?』
『貴方を止めること……それが私のお役目でございますので』
相手の獲物は刀でそれもほぼ身長とほぼ変わらない。
私の見立てでは180cmほどの背丈で刀としては160程の大きさになるだろう。しかも、その刀は魔力形成したものではなく本物だということ。
けど、止めるってことはどういうことだろう?
『……付属【水】水刃剛激』
斧の刃の部分が水色に変化して横に斧を振り切ったが、再度ラージャンの刀に接触したが刃をずらされそうになった。
が……
『さっきのお返しです。【拡散】!!』
『なっ!?』
斧を物質変換させ属性はそのままで散弾に変化させたのだ。
魔力で作った斧ならこそ出来た芸当だ。
だが、相手は思いっきりバックに飛んだが三段と同じ方向に飛んだから無事では済まないだろう。
着弾した所は土煙がまっていたがそれがゆっくりと消えた。
『いやはや、さすがに焦りましたよ……けど、残念ですがそんな攻撃は私には通りませんよ?』
土煙が消え、そこには炎壁と展開しながら笑顔で立っているラージャンの姿があった。
やっぱり。腐っても【古龍:火種】の戦闘龍という事かな?
『まぁ、そこは考えていたけど、本当にされると気分が良いものじゃないわね』
『それは光栄の至りでございます』
嫌味も通用しないとはそこらへんの小童と思わないほうが良いわね。
再度、戦斧を形成し構え直した。
まったく、本気で遣り合いたいけど、ここの競技場がブッ壊れる訳にもいかないしね。
『さて、そろそろ策の一つでも投げたほうがいいでしょうね?』
『策? 何をするつもりなのかな?』
『大丈夫です。貴女の主にするのではありませんので……それでも、耐え難いものですけど』
小さく笑ってみせた。
それは、奇妙な笑いであった。
○●○●
「さて、そろそろ【美月】さんにはここ辺りで退場してもらいましょうか?」
「えっ?」
二色の青と赤の魔法球を無数に作り出し再度、曖菓と俺の方に突っ込ませた。
曖菓は二重の混合壁を形成させ踏ん張り、俺はAMAを使い回避を同時に攻撃を割いていた。
「さて、貴女の本名はどっちが正しいのですか? 【美月】ですか【深月】のどちらなんですか?」
「……何を言ってるんだ?」
「……!!?」
いや、美月は美月だろ?
そう思って曖菓をみた。その瞬間、曖菓の顔から血の気が引いていた。
「どっちなんですか? 美しい方ですか……それとも」
「ダメ!!」
その言葉を遮るように曖菓は叫んだが……
「……深い方の名前なんでしょうか?」
そう言いながらレイナは笑みを浮かべていた。
そして、周りの方もざわめきが大きくなった。
……深き月?
「そう、そこの人は【深月】の名を持ってる人殺しの家系ですわ!!」
「い、いや……止めて!!!!」
そのまま曖菓はその場に座り込み、頭を抱えながら大きな声を上げた。
「いや、普通に考えて大戦から連なる家系で考えれば人殺しどころか天使や悪魔も倒してると思うんだけど?」
「残念……そこの家系は魔法の発動媒体に【人】を使っていたのですよ」
「はぁ?」
霊薬等なら鳥などの生き物を使用したものを使ったのは俺の生まれた場所でもあったけど……
流石に人体でそんな物は聞いた事ないが。
「それって薬とかって事か?」
「いいえ、魔法媒体……深月家は【呪系】や【暗術】ですわよ?」
「……ふ〜ん、で?」
そう思いながら興味なさそうにそう答えた。
そして、バックステップで曖菓の近くに寄った。
曖菓はと言うとうずくまりながら気を失っていた。
「その人は人殺しのか……」
ズドン!!
次の瞬間、レイナの横を衝撃波が瞬時に通り過ぎた。
「……なぁ、そろそろその口を閉じてくれないかな? そんな戯言は飽きた」
それは、手を翳して作られた物。
そして、その衝撃波を作り出したのは目の前にいる人物……克夜だ。
「え、な?」
「悪いがあんたの言葉に耳を傾くのはもう嫌気がさしてきた」
「あら、そうなんですか? けど、貴方だけでは私は倒せないですわね。魔法も固定式は持ってないでしょう?」
たしかに、最初の戦いではエリシアと【同調】でやったし、準決勝でもおなじだったし。
何回か【オリジナル】を作ろうとしたが作る事が出来なくって劣等生ってよく言われていたけど。
だけど、そろそろ……
「最初だけ、言い忘れていた事がある」
「何でしょうか?」
「俺の大事な【人】の悪口を言われたらね……」
次の瞬間、魔力の風が克夜の回りに奔流し始めた。
「誰であろうと……許さない」
「……!!?」
その言葉と同時にレイナは二・三歩後ろの方に下がった。
その笑みは綺麗な笑みでそして……
その眼は【殺意剥き出し】だった。
渦は二人を囲んでしまった。
●○●○
私は右手にある紐を見た。
紐の色は【青色】になっていた。
そして、私は小さく笑った。
『おや、何を笑っていらっしゃるんですか?』
笑っていた私に気がついてい聞いてきた。
そりゃ、笑うしかないでしょうねぇ。
『笑ってますか……私は』
『えぇ。笑っている以外何て言えばいいのでしょうか?』
「それに、貴方を攻撃するのは二人もいるのですわよ?」
後方から【氷槍】が無数に前方からも【炎槍】が前方から無数に飛来してきた。
だが、私は演舞するようにその攻撃を回避。
流石に最小限のダメージ判定は入るが。
「本当にあなたは何ものなんですか?」
『あれ、気が付いてなかったんですか? 私は【古種:石動】ですよ』
「こ。古来種!?」
『本来の名前は【エリシア=フォーラトリエ】と言います』
右手に黄色……【雷槍】を左手には【光槍】を無数に展開した。
展開と同時に双方は一気に後ろの方に下がり攻撃の射程外まで移動していた。
飛来槍系は射程が短距離型の移動式の魔法で初期に覚える魔法の一つでもあるから射程距離は知ってるはず。
だけど……
『その距離でも貴方達は既に射程内ですよ』
すると、エリシアの足元から緑色の魔法陣が作り出される。
『我の声に風精霊よ、力を授けよ。我を狙う敵を定める力とし力を貸したまえ!!』
「追尾効果!?」
それぞれの左右の魔法に追加効力を付け加えたのだ。
そして、一気に解き放つ。
ラージャンとレイナはその攻撃を凌いでいた。
私は渦の方を見た。
『まさか、こんな所で見れるとは思わなかったですよ……聖龍王防壁を見れるなんて』
この技を一般の人が使うなんて思ったとたん寒気がした。
『違う……この防壁は普通の人間には使うことできない。使うことが出来るのは【古龍:聖種】かそれを伝授人のみ』
だけど、聖龍は100年前に滅んだと聞いたことがあるのだけど。
だけど……
『私のことを【規格外】と言った主の方が余程に【規格外】ですよ』
それじゃ、マスターと曖菓さんが戻るまで私はここを死守するしかないですね。
魔法をすべて回避した二人が再度私の方に移動式の魔法を展開していた。
『さて、私は頑丈ですよ? 簡単に倒すなんて思わないでくださいね』
そして、二人を見て笑った。
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