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結婚しました

作者: 月石 靡樹

毎年同級生から届くメールもそのときだけは少し違っていて・・・

 毎年毎年、まぁ、飽きもせずにこんなメールをよこすもんだ。


 「結婚しました」


 毎年四月一日の恒例行事。

 高校の同級生で一番最初に隣の席になった女子だがそんな色っぽい関係になったことはなく言ってしまえば「腐れ縁」の間柄だった。今は年に一度、そのメールが年賀状のようなもので、元気でいることを知らせてくれている。


 同級生とは言ったけど三年までクラスが同じだったわけではなく二年に上がるとそいつは進学組、俺は就職組にクラスが別れた。

一年の時はよく遊びにいくメンバーだったが二年になって俺に彼女ができてから状況が変わった。

 俺もそうだけど彼女が他の男と遊ぶことを快く思ったりしない。少なくともその頃の俺はそうだった。そして俺が当時付き合ってた彼女はそれが俺より強くて俺は学校の中でも女子と話すのに気を遣わなきゃいけないほどだった。

 三年の夏に彼女が別に好きな人ができたらしく俺たちは別れた。どの道県外に就職を希望していた俺は遅かれ早かれ彼女と別れるつもりだったから俺が負い目を感じなくて済んだことに正直ほっとしてたりした。残された高校生活で彼女を作ろうとは思わなかったが、その頃ちょうど一年の時一緒だった彼女からメールが来るようになった。内容は他愛のないもので、それ以上の関係に発展するまでもなく俺は希望通り県外の会社に就職。彼女は本命の大学に合格した。


 それからしばらくは彼女からメールが来ることはなかったが、ここ数年、決まってそのメールが届く。


 もちろん嘘だとわかっているのでいつも俺はそれを軽くあしらう返答をする。


 今年もそのメールが届いた。


 「結婚しました」


 いつもと同じだ。


 はいはい、そりゃ、ようございました・・・



 ん?



 返信のメールを打つ手が止まったのは、携帯の画面に表示されてる時間が0時を過ぎていたからだ。

 

 つまり・・・


 俺は一度自分の打った文章を取り消し、彼女のメールを確認する。

 やはり時刻は0時を回り、日付も四月二日になっている。


 そして、いつもは「結婚しました」だけの画面に続きがあると知った。

画面をどんどん下にスクロールしていくとしばらくしてもう一つの文章が表れる。


 「嘘じゃないよん」


 茶目っ気漂う文面からは幸せそうな彼女の笑顔がふとよぎる。

 なぜかチクリと痛んだ胸は自分の心の片隅で彼女を思っていたことを示すようだった。

 結婚なんてするはずない、そんな思いがないわけじゃないけど、きっと彼女は俺の手の届くところにいて、こんな関係は変わらないものだと信じていたかった。

 仲間たちは時間と共に変わってしまい、今では高校の同級生との交流なんて一切なくなっている。

 

 「結婚? するわけないじゃん。ば~か」


 隣の席でそう言ったのははるか遠い昔。だから俺は彼女からそのメールが一番最初に来たときも驚かなかった。


 「バカだな。俺・・・」


 今は彼女の幸せと来年から四月一日に「離婚しました」というメールが来ないことを祈ることにしよう。

 また日をまたいで届いたらそれこそ笑えない冗談になってしまう。



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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公のちょっぴり切ない想いと、幸せを願う気持ちが上手くミックスされていて良かったです。切ないけれど、読んだあと清々しくなるお話ですね。
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