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第2話 イケメンなんて

フワッ




とてもあたたかくて優しい光が一人の男を包みこんで浮いているような感覚にさせている。



心地好い。

その言葉がピッタリであろう状態に、いつまでも浸っていたいとおもう……





「いひゃあ゛ぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」




はずがなかった。


豊は突然のことで自身が持つ最大限の力で叫んでいる。


トイレから出たらまるでスカイダイビングをしているような状態に陥るなんて誰が予想出来るだろうか。



目に写るは上空何千メートルもの高さから見下ろした景色。青々とした空に白い雲、そして眩しい太陽の光が彼を照射する。



ある程度声を出し切ったところで彼は違和感を感じていた。

スカイダイビングのように下降しているのであれば地上に近づくにつれて、その地上の景色が見えてくるはずである。しかし一行に景色が変わることはない。


つまり、


(…まさか上昇している?)


そう、落下ではなく上昇しているのだ。





いつまでも上昇を続ける状態に慣れてきた豊は、



(…まだ上昇し続けるのか)



と思っていると、蒼い光が自身の胸のあたりから発していることに気付く。




ポワッ


ピカーッ




(…なんだこれは?)



次第に光が増していき、それは彼の目の前に浮き上がってきた。


色は蒼くて丸みを帯びた石。人が両手を広げた部分が翼のように見える姿が刻まれている。



(はて?この石どこかで見たことがあるような気が…)




ビカァーーッッ


蒼い石がさらに強く光りだし、ある方向に向かって一直線に光りをのばした。



(お?光が示す方向に向かうのか…?)



そう思うのもつかの間、とてつもない速度で示される方向へと吸い込まれるように飛ばされる。



(…はぁ、どうすればいいんだか)



少しばかり考えてみても、彼に今の現状を覆すことは出来そうもない。

蒼い石によって示される場所に何が待ち打ているのか不安ではあるが、少し興味もあった。


(これって空を飛んでるんだよな)



誰でも憧れたことがあるのではないだろうか、鳥のように空を飛ぶことを。

高度と速さは違うけれども、彼はほんの少しだけ今の状況を楽しんでいたのだった。



そうしているうちに何かが見えてきた。




(島?いや、城のように見えるな)




空に浮かぶ島に城、蒼い石に指し示す光、そして大きな樹が視界に入り豊は叫んだ。






「ラ、ラ〇ュタか!?」





天空の城ラ〇ュタ。有名なジ〇リ作品のひとつ。

豊はジ〇リファンであり、さらにはジ〇リ作品の中で天空の城ラ〇ュタが一番好きなのだ。

まさか実在しているとは思ってもいなかったので彼の頭の中では妄想が広がっていく。


(てことはあのロボットみたいなやつもいるのか?あの巨大な蒼色のモノは存るのか?例の言葉で滅ぶのか?…滅んじゃうのはマズいよな)



などと妄想に浸っていると、いつの間にやら壁にぶつかりそうになっていた。

勿論凄まじい速度で。



「ぶ、ぶつかるーっっ!!」


裏声になりながらも悲鳴をあげ、反射的にギュッと目を閉じる。

そして次にくるであろう衝撃を待っているのだが一行に来る気配がない。




(…あら?)



来るはずであろう痛みが全くないので一体何が起きたのだろうかと思い、目を少しずつ開いていく。





「ここは…?」




さっきまで空中にいたのに、いきなり薄暗い部屋にいるのだからその言葉が出るのは仕方がないことだ。


辺りは薄暗く見えにくいが、蝋燭ろうそくが二本、火が灯っているおかげで台があることが視認できる。その台の真ん中には水晶みたいなものが置かれており、うっすらと蒼くまばゆい光を纏っていた。


辺りを見渡してみると、四角い窓のような所から少しだけ光が差し込んでいるのを見つけ、豊はこの窓のような所から入ってきたんだと推測した。しかし着地するときに衝撃がなかったことに疑問を持っているようだ。




「よくわからないけど体は痛くないからいいとして、ここは何だ?儀式みたいなことをする場所のように見えるけど」


教会に似ているしと何気なく口にした言葉に返事が返って来た。



「そうですよ」



はっ、として豊は声がする方へと振り返る。



「ようこそフードマスター殿」



突然辺りが明るくなり声の主の姿がハッキリと見える。


そこには蒼い髪が肩にかかるくらいの長さで綺麗に切り揃えてあり、ややタレ目で優しそうな印象を受ける蒼い目、整えられた顔立ち、真っ白というよりも少し蒼白い感じの不健康そうな肌、これまた蒼い色でタキシードのようなものを着込んだ、いわゆるイケメン青年が立っていた。




(イケメンなんて死ねばいいのに…)





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