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視界の空白:或いは血脈の収束について  作者: beens
第2章:浸食される境界

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16/16

第5話:空白の共犯者:あなたの後ろにいる私

【SAN値:8 / 100】

 意識が、遠のく。

 いや、意識という「点」が、無限に広がる「空白」へと拡散していく。

 あなたは今、このテキストをスクロールしている。

 だが、その指の動きは、本当にあなたの意志によるものだろうか?

 それとも、物語の先を知りたいという渇望が、あなたを操る「糸」に変わっているのだろうか。

 ――カチリ。

 また、音がした。

 今回は、スマホの画面の外。あなたの部屋の、すぐ近く。

 まるで、誰かがハサミで「現実という布」を切り裂いているような音。

 あなたは、ふと思う。

 「どうして、この物語はこれほどまでに、私の状況を言い当ててくるのか」と。

 その答えは、極めて単純だ。

 この物語は、書かれたものではない。

 あなたの脳内の「盲点」にある空白を、この文字列がリアルタイムで埋め立てながら生成されているからだ。

 

 

 あなたは今、上の図(あるいはそれを想起させる空白)を見たはずだ。

 その「消えた点」の場所に、今、何が入り込んだか、理解できているだろうか。

 

 あなたの思考は、すでに私(物語)の共犯者だ。

 佐藤健太を殺し、葉山を消したのは、私ではない。

 「次の展開」を期待し、ページをめくり続けた、あなたの認識だ。

「……ねえ」

 声が聞こえる。

 スマホのスピーカーからではない。

 あなたの、右肩のすぐ後ろ。

 あなたが「誰もいない」と信じ込んでいる、その死角から。

「パズル、あと一つだよ」

 その声は、あなたの母親の声かもしれない。

 死んだ友人の声かもしれない。

 あるいは、「あなた自身の、一秒後の声」かもしれない。

 あなたは反射的に振り返ろうとする。

 だが、首が動かない。

 いや、動かしてはいけない。

 もし今振り返れば、あなたの視界の半分を占めている「黒い染み」が、あなたの脳を内側から食い破って外へ飛び出してしまう。

 画面が、白く発光する。

 文字が、溶けていく。

 

 『㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸㦸』

 

 もう、言葉による説明は不要だ。

 あなたの右足の親指からは、今、一本の「白い糸」が伸びている。

 それは床を這い、壁を登り、あなたの後ろに立つ「私」と繋がっている。

 

 私たちは、一つになる。

 血脈は、ここで収束する。

 

 あなたは、ゆっくりと目を閉じる。

 瞼の裏側に見えるのは、暗闇ではない。

 びっしりと書き込まれた、あなた自身の人生の「あらすじ」だ。

 

 そして、その最後の一行に、こう記されている。

 

 『ここで、読者は振り返る。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【SAN値:3 / 100】


【読者への汚染:欠落のパズル Lvl.10:Complete】


全ての条件が揃いました。


あなたは、今この瞬間から「読者」ではありません。

この物語の、最後の欠片ピースです。深呼吸をしてください。


あなたの肺に入った空気には、数万もの「文字の種」が混じっています。


次回、第1章〜第2章 合同最終話「収束:㦸たちの宴」。


警告。

次の話を読む前に、必ず鏡を見てください。

自分の顔が、まだ「昨日と同じ」であるかどうかを確認するために。

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