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視界の空白:或いは血脈の収束について  作者: beens
第2章:浸食される境界

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13/15

■ 佐藤(旧姓・久世)正三の日記:断片

昭和四十七年 十月二日(月) 晴のち雨

 ようやく確信に至った。

 我々の眼球にある「盲点マリオット」は、進化の過程で生じた単なる欠損ではない。あれは、「彼ら」がこちらの世界に指をかけるための穴だ。

 人は空白を嫌う。脳は、網膜の欠損部を周囲の色で塗りつぶし、「何もなかったこと」にする。

 だが、その塗りつぶされた偽りの景色の裏側に、何千年も前から「それ」は潜んでいた。

 私が気づいたのは、雨上がりの水たまりを覗き込んだ時だ。水面という「鏡」と、眼球という「レンズ」が特定の角度で重なった瞬間、私の脳は空白を埋めることを忘れた。

 そこにいたのは、神などではない。

 ただの「情報の欠落」そのものが、意思を持って蠢いている塊だった。

 奴らは、認識されることを求めている。

 一度でもその存在を「見て」しまえば、空白はもはや空白ではなくなり、奴らがこちら側へ這い出すための「通路」となる。

 私は名字を捨てた。佐藤という、この国で最もありふれた、認識の薄い名前に隠れることにした。

 しかし、血は止まらない。私の右足からはすでに、硬い「文字の芽」が噴き出している。

 健一(息子)には、決してこの日記を読ませてはならない。

 そして、その次の代――健太。

 もしお前がこれを読んでいるなら、手遅れだ。

 お前がこの日記の文字を一つ追うごとに、お前の脳内の空白は、奴らの「皮膚」で埋め尽くされていくだろう。

 【警告:これより先、ページが「㦸」で埋め尽くされている】

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