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「……嘘でしょ」

 私の名前はオリヴィア・サンチェスト。サンチェスト公爵家の長女であり……前世で流行りまくっていた、《運命のあなたと恋をする》という乙女ゲームのヒロインである。


 初めに言っておく。このゲームは、「くそつまんねーゲーム」、略して「く(そ)つ(まんねー)ゲー(ム)」、「くつゲー」であった。

 そういわれていた理由は、まずヒロインの言動が偽善者すぎるものしか用意されていないのだ。

「孤児院の子たちがかわいそうだわ」や、「孤児院の子たちの環境を改善したほうがいいのかもしれないわ」等々、偽善者、または脳内お花畑な人間としか思えない言動しか用意されていないのである。当時プレイしていた者たちは、「何やってんだ運営!!!!!!!」と思ったことだろう。

 そして、攻略対象たちの好感度を上げるのが簡単すぎた。

 例えば、「孤児院の子たちの環境を改善したほうがいいのかもしれないわ」とヒロインが言ったのなら、「なんて優しいんだ!」と言って、好感度が爆上がりするのである。

 しかも、攻略対象たちの性格がおかしいのだ。

 王太子であったら、冷酷王子のくせにヒロインには初対面からやさしい。それはもう、何年も前から知っているかのように。まあそんなことはないのだが。

 騎士であったら、脳筋で、対して話してもいないヒロインに向かって「おもしれ―女」という。

 さらに、バッドエンドもなければ、大団円エンドもないのである。


 ……という風に、設定がくそなのである。つまらないのである。


 しかし。


 前世では、これが大変流行った。それはもう、本当におかしいくらい流行った。スマホを持つのと同じくらい、当時の女子はこの《運命のあなたと恋をする》を持っていた。プレイしていた。

 理由は簡単だ。

「くつゲーすぎるから」である。

 くつゲーすぎるが故に、逆に流行ったのである。

「#くつゲー」「#あなこい」が流行語大賞に選ばれるほどに……。


 という感じの乙女ゲームのヒロインに転生してしまった、私。

「いやあああああああ」

 震えが止まらない。だって私は、前世あのゲームをプレイしてからというもの、ずっっっっと毛嫌いしてきたのだ。それなのに、寄りにもよってヒロイン。悪役令嬢とかモブ令嬢ならまだしも、私が転生したのはヒロイン。それも、ゲームの舞台となる王立魔法学園に入学する三年前の、十二歳のヒロインに!

「……終わりだわ」

 そうして私はショックのあまり、倒れたのだった。

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