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鋼鉄の十二本のバラ

リリアンデ王国は、美しさと優雅さ、

そして十二人の王女たちの卓越した才能で知られていた。


彼女たちが共有していたたった一つの情熱――

それは「舞うこと」。


その舞は有名で、


祭礼でも、

式典でも、

城の中庭でも、


人々を魅了し続けた。


母は王女たちに教えた。

「踊りは、生きるということ。」


しかしその母は、ある日、謎の待ち伏せに遭い命を落とした。

十二人の娘たちを残して。


それ以来、叔母のセラナが彼女たちの後見を務めることになった。


王アルドレンは娘たちを深く愛し、

そしてその傍らにはいつも、

王国随一の忠義を誇る兵士――

ダエロン・ヴァリスがいた。

1. アルダラ(18)

燃えるような赤髪、ルビーの瞳。背が高く、体格も強い。

特技:乗馬、運動全般、アクロバティックな舞。


2. セラフィーヌ(17)

銀髪、淡い灰色の瞳。

特技:プロ級の化粧とファッション、優雅な舞。


3. ロズウィン(17)

パステルピンクの髪、蜂蜜色の瞳。

特技:音楽とリズム、旋回する舞。


4. ルナリア(16)

青みがかった黒髪、紫の瞳。

特技:薬草学と簡単な医術、柔らかな舞。


5. セリーヌ(16)

空色の髪、ターコイズの瞳。

特技:星と天候の研究、流れるような舞。


6. エヴリーヌ(15)

金を帯びた茶髪、ヘーゼルの瞳。

特技:織物・裁縫・刺繍、調和の舞。


7. イリーナ(15)

深緑の髪、エメラルドの瞳。

特技:動物の扱い、軽い狩猟、野性の舞。


8. メイリス(14)

赤みのある栗髪、琥珀の瞳。

特技:打楽器・太鼓・リズム、鼓動の舞。


9. テイラ(14)

灰金の髪、茶色の瞳。

特技:機械工学と工具、機構の舞。


10. ヴィヴィエット(13)

黄金のブロンド、淡い蜂蜜色の瞳。

特技:地図読みと方位、旅路の舞。


11. ネリエル(12)

濃紺の髪、紫の瞳。

特技:沈黙、隠密、滑るような静の舞。


12. イゾルダ(8)

白い髪、金色の瞳。

特技:歌声と調和、天使の舞。


彼女たちはまだ誰一人として魔法を使えない。

ただ――人生を愛し、踊りを愛する、才能ある十二の舞姫だった。

森──すべてを失った夜


森は暗く、湿り気を帯び、動く影で満ちていた。

十二人の王女たちはまだ舞踏服のまま、

土と煤と涙でぐしゃぐしゃになっていた。


アルダラは膝から崩れ落ち、息ができなくなった。


「……お父様……」

かすれた声が夜に吸い込まれる。

「お父様……」


ロズウィンは自分の体を抱きしめ、歯を鳴らしながら震えていた。


「こんなの嘘……こんなの現実じゃない……」

それだけを何度も繰り返す。


セラフィーヌは虚ろな目のまま呟いた。


「王が……そんな……ありえない……そんな……」


その声は途中で崩れ落ちた。


ルナリアは耳を塞いだ。


「やめて……! 喋らないで……! 考えさせて……! お願いだから黙って!!」


だがその手は激しく震えていた。


イリーナは叫びながら木を殴った。

両手が血まみれになるまで。


「殺してやる!! 絶対に殺す!!

あの女……! あの裏切り者の叔母を!!」


ダエロンが慌てて駆け寄り、後ろから抱き止める。


「やめろ、イリーナ!! 自分を傷つけるな!」


彼女は暴れた。


「離して!!

生きてて何の意味があるの!?

もう王国も……お父様もいないのに!!」


末っ子のイゾルダは、エヴリーヌの裾を掴んで泣き叫んでいた。


「お父様は……?

ねぇ……どうして来ないの……?」


エヴリーヌは涙をこぼしながら、必死に抱きしめた。


「大丈夫……大丈夫よ、イゾルダ……

お姉ちゃんがいるから……ね……」


ヴィヴィエットは小鳥のように震え、自分の指先を見つめていた。


「指が……止まらない……ふるえて……止まらない……」


テイラは地面に座り込み、頭を抱えた。


「戻れる……?

これが夢なら……目が覚めるはず……」


ネリエルはアルダラの影に隠れ、一言も発せず震えていた。

紫の瞳は恐怖で大きく見開かれている。


その混乱の中で、

ダエロンは大きく息を吸い込み──


「――全員、聞け!!!」


怒号が森に響き渡った。


王女たちは凍りついたように動きを止める。


ダエロンは膝をつき、彼女たちと同じ目線に降りた。

その声は力強く、だが優しかった。


「辛いのは分かっている。

父上を失った痛みも……

裏切られた苦しみも……

全部分かってる。」


「だが……ここで泣き続ければ……

互いを責め続ければ……

お前たちは死ぬ。」


ロズウィンが唇を噛み、涙を落とした。


「死んでも……いいよ……

もう……何も残ってない……」


ダエロンは彼女の肩をつかみ、強く言い切る。


「残ってる。

お前には、お前の舞がある。

お前には──お前の姉妹がいる。」


「お前たち全員にだ。

自分自身が、まだ残っている!!」


アルダラは赤く腫れた目で彼を見つめた。


「じゃあ……どうすれば……?」


ダエロンは深く、強く息を吸い込み……


「――生きるんだ。」


「生きている限り……戦える。」

地獄の始まり ―― 学びたくないことを学ぶ日々


その後の日々は、拷問のようだった。


◆ 初めての狩り


ダエロンは、アルダラを無理やり連れて行った。


茂みの中に倒れた鹿。

震える手でナイフを握るアルダラ。


「……む、無理……」


かすれた声でつぶやく。


ダエロンは、そっと彼女の手に自分の手を重ねた。


「お前がやらなければ……

お前の姉妹たちが飢える。」


アルダラは唾を飲み込み、深呼吸し──

切った。


素早く、正確に。

だが、頬を伝う涙は止まらなかった。


その様子を見たロズウィンは、

そのままバタリと気絶した。


「ロ、ロズウィン!!」

何人かが悲鳴を上げた。


◆ 初めての料理


ルナリアは震える手で肉を洗おうとしていた。


「……お母様がやってた……

見てはいたけど……

まさか自分でやることになるなんて……」


メイリスは引きつった笑いを漏らした。


「ま、まあ……

爆発してないだけマシだよね……」


完成したスープは、真っ黒に焦げていた。


ヴィヴィエットは恐る恐るすくって口に運び、ぼそりとつぶやいた。


「……炭……と、絶望の味がする……」


◆ 傷


イリーナが腕を血まみれにして戻ってきた。


「イノシシに襲われた……」


ルナリアが慌てて駆け寄る。


「動かないで。これくらいなら……

たぶん治せる……」


だが手が震え、うまく触れない。


エヴリーヌがそっと手を添えた。


「大丈夫。私と一緒に……息を合わせて。」


二人で丁寧に洗い、布を巻いた。


◆ 避けられない喧嘩


ある日、ロズウィンが叫んだ。


「全部セラフィーヌのせいだよ!!

あの日、おば様を部屋に入れたのはあなただった!

あれがなければ……こんなことには……!」


セラフィーヌは立ち上がり、怒りで顔を歪めた。


「知らなかったのよ!!

どうして私が裏切りなんて分かるのよ!!」


「アンタはいつも分かったふりするじゃない!!」

ロズウィンは泣きながら叫び返す。


アルダラが二人の間に割って入り、強く押しのけた。


「やめなさい!!

喧嘩したいなら……

食べて寝てからにしろ!!

今じゃない!!」


ダエロンが低い声で言った。


「お前たちが互いを傷つけるたびに……

あの女(叔母)がまた勝つことになる。」


重い沈黙が落ちた。

人生を変えた発見


ある夕暮れ、ヴィヴィエットが悲鳴のように叫んだ。


「見つけたの!! 早く来て!!」


岩壁に、細い亀裂。

その奥へと続く穴。

そしてその先には――

水晶の光に満ちた巨大な洞窟が広がっていた。


そこには、

古代の図書館があった。


壁画には魔法を操る舞姫たち。

儀式の巻物。

古めかしい武器。

「動き+エネルギー」の原理を書いた指南書。


アルダラは息をのんだ。


「見て……この絵……

踊り……だわ……」


セラフィーヌは、幻のように分身を描かれた舞姫の壁画にそっと触れた。


「……それに、魔法も。」


祭壇には、乾ききった老人の遺体が安らかに眠っていた。


イリーナが呟いた。


「この場所の……持ち主だったんだろうね……」


エヴリーヌは手を組み、目を閉じた。


「埋葬しましょう……敬意をもって。」


彼女たちは静かに土を掘り、

その老人を丁寧に弔った。


その日から、

十二人の姉妹は読み、学び、練習し……

初めて“魔法”という力を手にした。


そして気づいた。


それぞれの“得意な踊り”が、

そのまま魔法と結びついていることに。


アルダラ → 火


ロズウィン → 風


ルナリア → 毒素


セリーヌ → 星の力


エヴリーヌ → 祝福バフ


イリーナ → 獣・動物の魔法


メイリス → 音・振動


テイラ → アルカナエネルギー


ヴィヴィエット → 魔力の“道筋”


ネリエル → 半透明化(部分的な消失)


イゾルダ → 光の治癒


セラフィーヌ → 幻術・錯覚


初めて炎を生み出したとき、

アルダラは震えながら炎を握りしめ――

ぽろりと涙をこぼした。


「……お母様……

私たちを、見ていてくれていますか……」

王女たちの再誕


テイラとエヴリーヌは、それぞれの才能を合わせた。


――裁縫。

――機械工学。

――洞窟で見つけた特殊素材。

――マナを織り込んだ布。


そうして生まれたのは、

“戦うためのバレエ衣装”。


それぞれの姉妹の魔法と舞に合わせて作られた、

十二通りの戦闘舞踏装束。


踊れば光り、

流れ、

切り裂き、

変形し、

まるで生きているように彼女たちの動きと同調した。


ダエロンは、炎をまとったアルダラを見つめ、思わず息を呑んだ。


「……まるで、フェニックスの伝説だ。」


アルダラは真っ赤になって目をそらす。


「な、なに言ってるのよ……ばか……」

十二人は手を取り合った。


アルダラがゆっくりと口を開く。


「私たちが愛してきたのは――舞。」

「私たちが学んだのは――魔法。」

「そしてこれから終わらせるのは――戦い。」


「今日から……私たちは――」


十二の声がひとつになった。


「――鋼の薔薇ローズ・オブ・スティール!!」

鋼の薔薇たちの旅路 ―― 初めての“戦”への行軍


森を進むたび、木々がまるで彼女たちに道を開けるように揺れた。

新しく生まれた戦闘舞踏衣が木漏れ日にきらめき、

十二人はそれぞれの決意を胸に歩み続けた。


先頭にはアルダラ。

その隣を、ダエロンが静かに歩く。


ロズウィンは落ち着かず、小さく跳ねるように動いていた。


「ほんとに……ほんとに兵士と戦うの……?

盗賊じゃなくて……“敵国”の兵士と……?」


喉を鳴らして唾を飲む。


セラフィーヌがそっと彼女の腕を取った。


「やらなきゃいけないの。

もう戻れないんだから。」


イリーナは遠くの空をにらむ。


「今度こそ……もう逃げない。

絶対に。」


ダエロンは拳を上げ、皆に向けて力強く声を放った。


「忘れるな。

お前たちは一人じゃない。

俺がついている。」


小さな手がすっと上がった。


イゾルダが優しく笑う。


「わたしも、みんなと一緒だよ。」


アルダラは思わず彼女を抱き上げ、ぎゅっと抱きしめた。


「あなたは……私たちの光だよ、イゾルダ。」

初めて交差する──舞と戦


アルサーズ河近くの草原にたどり着いたとき、

角笛が鋭く鳴り響いた。


フォオオオォォン!!


暴王ヴァルクトルの兵士たちが隊列を組んで現れた。


「あそこだ! 逃亡した王女ども!」

「ヴァルクトル王の命だ、全員殺せ!!」


ロズウィンは震え上がった。


「ど、どうすれば……?」


アルダラは槍を掲げた。


「――踊るのよ。

でも今度は……

私たちの“舞”が武器になる。」


ダエロンが叫ぶ。


半月陣ハーフムーン!! 構え!!」


鋼の薔薇たちは、

回転し、前進し、後退し、跳び、

まるで“死のバレエ”のように完全に息を合わせた。


✦ ロズウィン・スピン


「風のワルツ……!!」


彼女の回転から刃の風が生まれ、

敵の馬の蹄を一斉に切り裂いた。


✦ ルナリア・ポイズン


「ちょっと……吸ってみて?」


淡い毒粉が舞い、

吸い込んだ兵士がその場に嘔吐して倒れた。


✦ セリーヌ・オービット


星環オービタ……回れ!」


青い結晶が敵を取り囲み、動きを極端に鈍らせた。


✦ イリーナ・ビースト


「来い……私のけもの!!」


茂みから霊体の黒豹が飛び出し、兵士を押し倒す。


✦ メイリス・ビート


ドン!!


太鼓の一撃が爆風のように広がり、

二列の兵をまとめて吹き飛ばす。


✦ セラフィーヌ・ミラージュ


無数の彼女が同時に笑う。


「私、どこにいると思う?」


兵たちは幻を斬り続け、無駄に疲弊する。


✦ ネリエル・サイレンス


空気から消える。


「……後ろ。」


囁きと同時に、敵の背中へ短剣が刺さった。


✦ テイラ・アーク


「起動──スパークライン!」


金色の電糸が地面を走り、敵兵の足を絡め取る。


✦ エヴリーヌ・ブレス


「守りの糸よ……!」


彼女が広げた祝福の糸が盾となり、

放たれた矢を次々と逸らした。


✦ ヴィヴィエット・トレース


「この道を辿って!」


地面に描いた魔道線に乗るたび、

姉妹たちの速度が倍増する。


✦ イゾルダ・ライト


「ひかって……きらきら……」


柔らかな光が傷を癒し、

姉たちの体力が息を吹き返す。


✦ アルダラ・フレイム


片足で回転し、槍を振り抜いた。


炎が舞い、踊り、唸り、敵を焼く。


彼女の舞はまさに火の旋風だった。


戦いが終わる頃には、

兵士たちは恐怖し、散り散りに逃げていった。


アルダラはゆっくりと槍を下ろした。


「……初勝利。

でも、これが終わりじゃない。」


ダエロンがその肩に手を置く。


「誇りに思うぞ、アルダラ。」


アルダラは耳まで赤く染めた。

小さな、焼け落ちた村にたどり着いたとき――

村人たちは彼女たちを見て息を呑んだ。


「王女様だ……! 本当に生きておられた!」

「鋼の薔薇ローズ・オブ・スティールだ!」


ひとりの老女が、震える手でアルダラの前にひざまずいた。


「……ありがとう……

私たちのために戦ってくださって……」


アルダラはすぐに彼女を抱き起こし、優しく首を振った。


「ひざまずかないでください。

私たちは同じ心を持つ者……

同じ王国の民です。」


セリーヌが、打ち捨てられた家々を指さした。


「兵士たちが近くを見回ってるはず。

ここに長くはいられないわ。」


イリーナは拳を固く握りしめる。


「あいつらが生きてる限り……

民はずっと怯え続ける……」


アルダラは静かに、しかし鋼のように言った。


「なら――生きられないようにするだけ。」

勝ったつもりの悪女に訪れた“恐怖”


黒い玉座の間で、セラナは報告を聞いていた。


使者は震え、声を詰まらせる。


「し、し、失礼します……

河川の部隊が……全滅しました……」


セラナは細い目をさらに細めた。


「誰にやられたの。」


使者は喉を鳴らし、青ざめながら告げる。


「じゅ、十二人の少女たちです……

彼女たちの衣……まばゆいほどで……

動きは……舞のようで……

でも……すべてが“死”に変わる舞で……」


セラナの目が大きく開く。


「……そんな……

そんなはず……ない……

ない……

ないッ!!

私は――確かに殺したのよ!!

生きているわけが……!!」


その瞬間、

重い扉が乱暴に開かれた。


暴王ヴァルクトルが、不気味な笑みを浮かべて入ってくる。


「何が“不可能”なんだい、セラナ。」


セラナは震える声で答えた。


「あの子たちが……

あの十二人が……

生きております……!」


ヴァルクトルは喉の奥で笑い、肩を揺らす。


「面白い。私は“逃げる獲物”が一番好きだ。」


指を鳴らす。


「連れてこい。

――黒き十二狩人ブラックハンターズ。」


十二のフード付きの影が、骨の仮面をつけて現れた。


「……獲物の名を。」


ヴァルクトルはゆっくり手を上げる。


「鋼の薔薇ローズ・オブ・スティールを狩れ。

ただし“生かしたまま”連れて来い。

――私が“彼女たちの舞が終わる時”を決める。」


骨の仮面たちは、同時に口元を吊り上げた。

鋼の薔薇ローズ・オブ・スティールは、

城領の外縁へと歩みを進めていった。


焼け焦げた畑を越え、

見捨てられた村を抜け、

黒く煤けた森をくぐり、

巡回兵の影を避けながら――。


そのすべてを、彼女たちはひるまず進んだ。


アルダラが振り返り、力強く宣言する。


「私たちが道を切り開く。

その後ろを……民が続く。」


ダエロンは深く頷いた。


「王国は一日では取り戻せない。

一歩ずつ……

振り付けのように積み重ねるものだ。」


セラフィーヌが微笑む。


「なら……完璧な舞にしましょう。」

王国奪還の第一歩――各地で咲く“鋼の薔薇”


日々、彼女たちは戦い続けた。


◆ オニキス橋の奇襲


ネリエルは影に溶け、敵の背後へ忍び込む。

メイリスは一撃の鼓動で、増援の兵を音の衝撃で吹き飛ばした。


◆ 深紅の森の戦い


イリーナが呼び出した霊猪れいちょが突撃し、敵陣をかき乱す。

セリーヌは空中の矢を凍らせ、花びらのように砕き散らした。


◆ テラル村の解放


ロズウィンは捕縛された村人たちの縄を一瞬で切り裂いた。

イゾルダは泣きながら、倒れた人々へ小さな光を与え続けた。


勝利するたび、

民は彼女たちの名を叫び、

新たな仲間が列へ加わっていった。


鋼の薔薇ローズ・オブ・スティール


その行進は、日に日に大きくなっていった。

影の襲来


木の上から、

“生きた影”のようにフードの男が落ちてきた。


「バラを探している……

バラは、血を流すものだ。」


アルダラが叫ぶ。


「隊列を組んで! 絶対に離れないで!!」


だがその狩人は速かった。

常識外れの速さだった。


ヴィヴィエットへと迫る。


ダエロンが体当たりで彼女を守った。


「下がれ、ヴィヴィエット!!」


アルダラが炎を爆ぜさせる。


「――私の姉妹に触るな!!」


狩人は影のように後退しながら笑った。


「面白い……

バラは“燃える”のか。」


そして、闇に溶けて消えた。


ルナリアが唾を飲む。


「まだ来る……絶対に。

あれは普通の兵士じゃなかった……“別物”よ。」


アルダラは拳を握る。


「なら……もっと強く踊るだけ。」


黒き城へ


彼女たちの前に、

暴王の黒い城塞がそびえ立つ。


暗く、巨大で、

数百の兵に守られていた。


ダエロンが真剣な声で言った。


「ここが旅の終点だ。

この門を越えたら……もう後戻りはできない。」


アルダラは深く息を吸った。


「初めから戻るつもりなんてなかった。

取り戻すの……私たちの“家”を。」


十二人が、

一歩、また一歩と前へ進む。


最終決戦 ―― “融合の怪物”


城門がゆっくりと開く。

階段を降りてきたのは、ヴァルクトルとセラナ。


セラナが叫ぶ。


「ここで死ね!!

この手で殺してあげる!!」


ヴァルクトルが手を差し出す。


「セラナ。融合だ。」


セラナがその手を取った。

闇が渦になり、二人を包む。


呻き声。

歪む肉体。

混ざり合う魂。


そして現れたのは――


二つの頭、四本の腕、

黒い液体の皮膚を持つ巨大な化け物。


イゾルダが震え声で叫ぶ。


「あれ……人じゃない……!」


アルダラが槍を掲げる。


「姉妹たち!!

――最終舞踏フィナーレ!!」


✦ 十二の舞が同時に咲く ✦


火。氷。風。毒。光。


✦ ロズウィン

「ピンク・トルネード!!」

風が渦を巻き、敵を切り裂く。


✦ ルナリア

空気を毒霧で濁らせる。


✦ セリーヌ

「星環凍結!!」

怪物の脚が氷に縛られる。


✦ イリーナ

霊狼が咆哮し、怪物へ噛みつく。


✦ テイラ

エネルギー爆弾を連続起爆。


✦ メイリス

太鼓の衝撃で地面を震わせる。


✦ セラフィーヌ

無限の鏡像で怪物を惑わせる。


✦ エヴリーヌ

防御を極限まで強化。


✦ ネリエル

視界から消え、急所を刺す。


✦ ヴィヴィエット

最速で走れる“攻撃ルート”を地面に刻む。


✦ イゾルダ

光の柱を天へ放つ。


「……ひかってぇええ!!」


怪物が悲鳴を上げ、膝をついた。


アルダラは炎を纏いながら跳んだ。

全身が灼熱の舞。


「父のために――

母のために――

私たちのために!!」


槍を、

怪物の心臓へ――貫いた。


眩い光が城を包む。


怪物は砕け散り、

ヴァルクトルとセラナは塵となって消えた。


新生の王国


民は泣きながら歓声を上げた。

ようやく、苦しみの夜が終わった。


ダエロンは埃だらけの体で、

ゆっくりとアルダラへ歩み寄る。


「やったな。……いや、やったんだよ、君たちが。」


アルダラは涙と笑みで彼を見た。


「支えてくれて……ありがとう。」


ダエロンは膝をつき、頭を下げる。


「守るだけじゃ足りない。

君の……人生の隣にいたい。

舞も……旅も……すべて。」


アルダラは彼の手を取り、そっと引き上げる。


「なら……最後の一歩まで一緒に。」


二人は静かに口づけた。

その光景の中で、王国は再び息を吹き返していく。


✦ 新たな役目 ✦


セリーヌ:星読みの学者

ルナリア:薬草師

ロズウィン:宮廷楽師

セラフィーヌ:王家の衣装職人

イリーナ:獣の守護者

メイリス:リズム研究家

テイラ:王国技術士

ヴィヴィエット:大探検家

ネリエル:影の諜報員

エヴリーヌ:聖なる巫女

イゾルダ:神聖治癒師


そして語り継がれる伝説となった。


十二の鋼の薔薇ローズ・オブ・スティール


舞によって国を取り戻し――

運命すら踊り変えた王女たち。

気に入っていただけたら、コメントや評価、お気に入りへの追加など、ぜひお力添えください。また、著者プロフィールから他の作品もぜひ読んでみてください。ありがとうございます。

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