第三話:相棒と、四天王の一人
まるで新たな命が宿ったかのように、枯れ果てたその姿が徐々に緑色を取り戻し、触手のように伸びたり縮んだりし始めた。
「待って……俺やっちゃった!?」
俺は驚きながらも、そのツタの動きをじっと見つめた。すると、ツタは俺の方に向かって伸びてきて、まるで「意思」を持っているかのように俺の骨の腕に絡みついてきた。
「なんだこれ……やっぱり、生きてるのか」
言葉ではない。だが確かに俺は、このツタから生命を感じ取っていた。そしてそれは、孤独だった俺の心に初めて触れてきたような、不思議な感覚だった。
「名前は……ローパー! 俺の仲間だ」
俺はそのツタに名前を与えた。「ローパー」。それは、孤独だった俺が初めて得た、本当の仲間の証だった。
ローパーは嬉しそうに巻き付いてきた。そしてツタを伸ばし、洞窟の隙間へと入り込んでいく。そして岩の隙間に隠れていた小さなスライムやアルミラージを絡め取り、俺の目の前に差し出してきた。
「おお、すごいじゃん! これなら狩りも楽になるな」
ローパーは俺の期待に応えるように動き続ける。その触手は自在に伸び縮みし、俺はその能力を活用しながら、洞窟内の魔物を倒していった。
*
洞窟の出口へ近づくにつれ、ローパーとの心温まる交流が続く。
「……何者だ?」
しかし洞窟内に低く響く声。その声と共に現れたのは、一人の甲冑を纏った騎士――いや、中身は骨だけのデュラハンだが、彼の姿は威厳そのもの。
「貴様……どけ。俺はお前の先に用があるのだ!」
デュラハンは俺を見るなり剣を構え、敵意を剥き出しにして襲いかかってきた。
俺は必死で回避しながら応戦するが、彼の攻撃は容赦なく迫ってくる。
「ローパー! 援護だ!」
俺が叫ぶと、腕に絡みついていたローパーが、ツタを伸ばしてデュラハンの足元を絡め取ろうとする。しかしデュラハンはその触手を鋭い剣で切り裂き、再び俺に向かって突進してきた。
「ローパー!! ――強い。今までのどの相手よりも、剣技が洗練されている」
(こいつの能力、ほしい! いや、剣技は吸収できないなら、仲間にするまで!)
俺はアルミラージの角を発射し、距離を取る。しかしデュラハンはその攻撃を甲冑で受け止め、怯むことなく迫ってくる。
(ここからの打開策は……)
「……お前、シナリオに翻弄された者か?」
その言葉にデュラハンの動きが一瞬止まる。彼は剣を構えながら低く問いかけてきた。
「シナリオ。貴様、それを知っているのか?」
「知っているとも。俺もそいつに苦しめられたのさ」
俺はデュラハンに、自分が感じていた「運命」という名のシナリオへの屈辱と怒りを語り始めた。その言葉に、彼の瞳からわずかな戸惑いが見えた。
「……俺もかつては人間だった。国を守り、民を愛し、正義を信じて戦った。だが運命は全てを奪った。名誉も誇りも、この醜い姿も! 俺には何も残されていない!」
彼の声には深い悲しみと怒りが込められていた。それはまるでグールキングが語っていた言葉と重なるようなものだった。
「だが、その怒りは残っているだろう? 俺の仲間になり、シナリオへ共に抗おうじゃないか! 俺もお前と同じ、理不尽な世界に立ち向かう者だ! だから、お前の剣は俺のために振れ」
その言葉に、デュラハンは構えていた剣を、静かに下ろし、その骸骨の顔にはわずかな救いが見える。
「貴様……シナリオを壊せるというのか!」
「ああ、そうだ! 俺は特別だ。倒した敵の能力を吸収できる力がある。いわば、最強。しかし一人では運命を壊せない。だから仲間が必要だ。俺と共に戦え。この世界の理不尽に抗うため! お前のその剣技を、絶対に無駄にはさせない!」
「……ありがとう。我、ここに誓う。あなたについていくことを!」
デュラハンは深く頷き、膝をついて忠誠を誓った。
こうして俺はローパーとデュラハンという二人(?)の仲間を得た。そしてこの洞窟を拠点として定め、「冥王軍」として新たな一歩を踏み出すこととなった。