プロローグ:人間なんて信じてられるか!
俺の能力は、倒した敵に触れると、その死体が持っていた特徴をステータスや能力に変換できるという、最強の力だった。
この力でホイホイっとたくさんの魔物を、能力やステータスに置き換えていった。
だが、学校では能力を隠して生きていた。目立つのが嫌いとかいうわけではなく、そっちのほうが後々本気を出した時、かっこいいかな……みたいな感じで。
ある日、学校付近に龍が出現した際も、俺は全七属性の魔法を操り、そいつを一人で倒した。その結果、女子たちが『全属性を使えるなんて!』『かっこよかった!』と黄色い声を上げ、俺の周りに集まってくる。最高に気持ちよかった。
いじめられていた、カチューシャが似合う吸血鬼の同級生。短剣を操る幼馴染は、いつもベタベタにくっついてきた。そして、回復薬を生み出す能力を持つ巨◯のクラスメイト。最高の仲間たちだった。
そうして、仲間たちと漫画のように苦戦を重ね、魔王を打ち倒したのだ。
でも……死んだ魔王の瞳には、楽しさなんて映ってなかった。そう、ぽっと出のズルに、いくらがんばっても覆せないシナリオ……。主人公補正によってやられる魔王の屈辱さ……
「なんだよこれ」
俺はその時から少し変わった。キャーキャー近づいてくる女子に対応すると、あの魔王の瞳が浮かぶ。
そしてヒキニートに。だが苦しかった。自分の屈辱さ、いや、こうやって落ち込んでいる自体、シナリオのイベントだと楽しんでるんだよ! とか。
そんな時、ヴァンパイアで俺の仲間の女子が、慰めるように話しかけてきた。
君が好き。結婚して、と。
唐突だ。でも、今の俺を変えてくれるかもしれない――
ドアを開けた。
グサリ。
やば、と確信したときには腹には激痛が走っていた。
「ぐっ!! どうして」
「あんたの金よ。もうあなたの莫大な資産は私の物。お疲れさまでした」
「……」
ああ、また転生するなら……魔物の王で……欲を言うなら、冥王とかになりたい。いや、神にはなれないか……
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