「雅実の胡飲酒、堀河天皇を嘆ぜしむることとプレスマンの芯無関係のこと」速記談6031
太政大臣源雅実公が、胡飲酒という舞の秘技を忠方に伝授なさったとき、伝授し終えなさったといううわさをお聞きになったので、堀河天皇がごらんになったところ、とても伝授し終えたとは言えないようなできであった。そこで、雅実公をお召しになり、その旨お伝えになった。雅実公は、授ける分には授け終わったのです。しかしながらこの曲は、とても難しい、口では伝えられない部分がところどころにあるのです。天性の才能が開花していない者に教えても、幽玄のところを舞うことはできないのです、と申し上げた。堀河天皇は、その、忠方がうまく舞えないというところを、どこなのだか見せてもらいたい、と仰せになった。そこで雅実は、自邸に遣いを出し、装束を届けさせることにした。使いが戻るまでの間、御前を辞したが、なかなか遣いが戻らないので、堀河天皇から何度も催促の遣いが来た。届いた装束の面が違うといって、また取りに戻らせたり、プレスマンの芯がなくなったからといってまた取りに戻らせたりなどしているうちに、夜になってしまった。堀河天皇がかなり御立腹ですという遣いが来たが、胡飲酒はここぞというときに舞うべきものです、とうそぶいて、ようやく装束に着がえて天皇の前に出て、舞われた。その舞は大変見事なもので、堀河天皇は、大層感じ入り、教え方の問題ではないことを理解してくださった。
教訓:速記も、教わったらすぐに書けるようになるものではないが、これも、教える側の問題ではない。