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The Black Gate  作者: しょぼ
1/9

プロローグ ―崩壊の幕開け―


その日、空は晴れていた。

東京湾に吹く風は穏やかで、海上をゆく観光船の上で、人々が写真を撮ったり、ソフトクリームを食べて過ごしていた。


平穏な、ありふれた午後。

人々が「いつもの日常」に疑いを抱くことなど、なかった。


だが――


空が、裂けた。


無音だった。

音もなく、青空の中央に直径数百メートルにも及ぶ黒い裂け目が、突如として口を開けた。


形容しがたい圧迫感。

光を吸い込むような闇が、空そのものを“侵食”していた。


「……は?」


最初に声を漏らしたのは、防衛省の早期警戒レーダー担当だった。


「識別不能……衛星では確認されず……これは……!」


東京・永田町、首相官邸地下にある災害対策本部。

鳴り響くアラート、駆け回る職員、操作パネルに浮かぶ赤い警告文字。


――未確認空間歪曲発生。

――想定エネルギー規模:特級災害クラス。


だが、何よりも衝撃だったのは、その“口”から出てきたモノだ。


「……映像出たぞ! なんだ、アレ……!」


大型スクリーンに映し出されたのは、地獄のような光景だった。


翼を持つ獣、超巨大の巨人、長い尾を引く虫の群れ、そして人の形をした何か――

見た目こそバラバラだが、すべてが“こちら側ではない”ものだった。


それは、かつて災害のたびに開いた“小規模ゲート”から現れる魔物とは、明らかに異質だった。


数、規模、強度、魔力――

まるで世界そのものが侵略されるかのように、奴らは空から“落ちてきた”。


「……バケモノだ……!」


現場の警官隊は叫びながら武器を構えたが、何の意味もなかった。

着地と同時に爆発的な魔力が炸裂し、地上のすべてが吹き飛ばされた。


赤ん坊を抱いた母親が、すぐ横で塵になった。

駅前ビルのガラスが、骨のように砕けた。

バスが宙を舞い、地面が裂け、人々の叫びが無音に飲み込まれていく。


――世界が壊れ始めていた。



「やはり来たか……」


神崎涼真は、首相官邸の制御室にいた。

国家公安特災対策局・局長として、十数年、あらゆる災害と向き合ってきた男。

現場叩き上げで、常に冷静、部下には恐れられ、上司には煙たがられていた。


「現場連絡を優先しろ。後手に回ったら終わる。勇者部隊は――」


「指示待ちです。だが、首相命令が――」


涼真の額に青筋が浮かんだ。


「またか。状況を把握してない奴が、命令だけは一人前か」


そして、通信が入る。


《勇者連合、先行出撃。敵勢力に対し、正面突破を試みます》


《第一隊、全滅……第二隊……ああっ、く、来るなぁああ――!》


――通信、途絶。


絶望が静かに、現場を包んでいく。


「勇者も……持たないか」



その瞬間――


空から、何かが“降って”きた。


魔物の大群を率いる、巨人のような影が、東京中心部へと直降下。

地鳴りと共に、官邸庁舎が崩れる。

逃げる暇などなかった。


「……このままでは、国は……」


涼真は思った。


(だが、変えるには、今のこの国を一度“壊さなければ”ならない)


そう思った直後、建物が爆裂し、瓦礫に巻き込まれ、涼真の視界は赤黒く染まった。


焼けつくような痛み。

肺に入るはずの空気が、血に変わる。

耳鳴りと共に、意識が遠のいていく――


――だが、彼はその中で、確かに“何かの声”を聞いた。


「ようやく見つけた……器として、最適だな」


「こいつを回収しろ。面白くなりそうだ……」


その声は、人間のものではなかった。


そして神崎涼真の死体は、瓦礫の中から消えた。



彼の葬儀が行われることはなかった。

彼の記録は“殉職”として処理され、静かに人々の記憶から薄れていった。


だが、彼は死んでなどいなかった。


(次章「第一章 再起動」へ続きます)

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