表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
信康放浪記  作者: 雪国竜
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/411

第39話

 ブーランジェリー・グランヒェルの店内に入った信康は、多数の客でごった返している店内を見て辟易した。


(凄いな。こんなに人が来るとは、美味い店なんだろうな)


 朝食は取ったので、今は腹がくちくなっている信康。


 なのでパンは買わず、カルレア又はレズリーを探す。


 信康は直ぐにレズリーを見つけた。


 その本人は既に、買うべき目当てのパンをトレーに乗せて、レジに並んでいた。


 人と人の間に出来ている隙間を器用に進みながら、レズリーの元に行く。


 それでも人が多く、レズリーの所に行くのに時間が掛かった。


「合計で銀貨一枚と大銅貨七枚になります」


 レズリーは財布を出そうとしたが、それよりも早く信康が銀貨二枚出した。


「あんた、何であたしの昼飯を払うんだい?」


「此処まで、道案内してくれたからな。その代金だ」


「別にそんなことしなくても良いのに・・・」


「俺の気持ちだ。気にするな」


「・・・・・・まぁ、良いや。ありがとうよ」


 レズリーは素直に礼を言う。


「後、済まないが・・・カルレアと言う人が此処に居るだろう。ちょっと呼んでくれないか」


「カルレアさんを?・・・少々、お待ち下さい。あっ、お釣りの大銅貨三枚になります」


 店員は信康に釣りを渡してから、カルレアを呼ぶ為に奥へと引っ込んだ。


 少しして白いカッターシャツの上に黒のベストを着て、黒いズボンを穿き黄色い前掛けを着た姿のカルレアが現れた。


「あら? レズリーさんと、貴方は確か・・・・・・」


「信康だ。この前振りだな。セーラの所の大家さん」


「そうそう、ノブヤスさんだったわね。私を呼んでいると聞いたのだけど」


「ああ、それなんだが」


 信康はチラリと周りを見る。


 客の波はまだ引くようには見えない。むしろ、どんどん増えている。


「ちょっと話したい事があったのだが、この調子だと話すのは無理だな。客足が落ち着いたら話がしたいから、外で持っていても良いか?」


「ええ、どうぞ。外には飲食出来る様にテーブルがあるから、其処で待っていてくれるかしら?」


「こっちがアポも取らずに来たのだ。少しくらい待つのは当然だ。寧ろパンを一つも買っていないのにテーブルを占領してしまって、悪いな」


 信康は一度頭を下げてから「じゃあ、外で待つ」と言って、ブーランジェリー・グランヒェルを出た。


 そして外で待っているルノワを手招きして、外に置いてあるテーブルに腰を下ろした。


 外からブーランジェリー・グランヒェルの混み具合を眺めていたら、会計を終えたレズリーが店を出て信康に近寄る。


「取り敢えずカルレアさんには、事情を軽く説明しておいたからな」


「おお、悪いな」


「良いさ、これくらい。じゃ、あたしは学園に行くから」


 レスリーは信康とルノワに手を振って、プヨ王立総合学園に向かう。


 信康はルノワと少し話しながら、ブーランジェリー・グランヒェルのを見ていた。


 やがて行列が無くなり、ブーランジェリー・グランヒェルの店内に居た客の姿が少なくなった。


 そろそろ良いかなと思っていたら、ブーランジェリー・グランヒェルの店内からカルレアが出て来た。


「待たせてごめんなさいね」


「いや。こっちに元々の非があるから、気にしないでくれ」


 カルレアが座ると、店の事を考えて本題を話す信康。


「レズリーからある程度は聞いていると思うが、どうだろうか? 勿論、借りている間はちゃんと家賃は払うぞ。それも前払いでだ」


「その前に聞きたいのだけど、部屋は貴方とそこの人の二人で一部屋を借りるのかしら?」


「ああ、それは部屋次第だ。ルノワの部屋が無かったら、俺と相部にすれば良いだけだ。それにその気になればルノワは、知り合いの所に泊まる事も出来なくも無いんだ。なので正直、一部屋さえ空いていれば問題無い」


「そう。二階が二部屋空いているから、入るのは問題ないわ。でも」


「家賃なら払う。最初に言った様に、前払いでも良い」


「いえ、そう言う訳では無くて・・・暫く使ってなかったから、部屋を掃除しないと使えないのよ」


「そうか。じゃあ、部屋の掃除をしたら使っても良いのか?」


「ええ。貴方達二人がそれで良いなら、こちらも文句ないわ」


「そうか。それなら」


「掃除が終わったら、好きに使っても良いわよ」


 信康とルノワは互いの手を叩く。


 そして部屋の状態をカルレアに聞き、一礼してその場を後にする二人。


「よし、これで住居は問題ないな」


「はい。総隊長に届け出を出しておきます」


「後は、家具とか買わないと駄目だな」


 カルレアに話を聞いた所、借りれる部屋は家具が一つも無い状態なので、買わないと駄目だと言われた。


 それで二人は、今から家具屋に向かい下見に行っていた。


 ただ買い物に向かっているだけなのに、ルノワは嬉しそうに顔を緩ませる。


(そう言えば、こいつと二人で歩くのは久しぶりだな)


 パリストーレ平原の会戦が始まる前に一回だけ歩いただけで、その後は一度も一緒に出掛けていない。


 だからだろうか。ルノワはまるで、主人と一緒に散歩出来た事を喜んでいる飼い犬の様な雰囲気を出している。


 信康の目には幻かもしれないが、ルノワに犬耳が尻尾が見えた。


 その尻尾は嬉しそうに、ブンブン振っている様に見える。


(・・・・・・・見間違いだよな。多分)


 信康はそう思いながら、買い物をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ