第385話
首都を出たプヨ軍は一旦『フェルミ要塞』に向かう。
其処で第四騎士団と第五騎士団の援軍と合流する手筈になっている。
プヨ軍は『フェルミ要塞』へと向かう。
行軍中、信康は馬上から見える景色を見ながら考えていた。
(これから向かうアグレブの城塞都市と聞いている。という事は、余程厚い城壁に囲まれているのだろう。現在アグレブに居るのは真紅騎士団だけと聞いているが、流石に援軍を送っている筈だ。幾ら征南軍がまだ編成中とは言え、既に編成完了した部隊を送るぐらいはするだろう。問題は真紅騎士団と合わせてどれだけ居るかだな)
信康はそれで戦況が変わると思えた。
其処まで考えていると、そう言えば前にここら辺近くで盗賊狩りをしていた時に、アグレブから南に行った所に砦があると報告を受けた事を思い出した。
「そうだ。南と西は崖、東は川という所に砦があったな」
信康は今更ながら思い出す。
そう考えていると、馬を寄せる者達がやって来た。
「何、難しい顔をしているの?」
「ふふ、これからの事で考えているのでしょう」
聞いた覚えがある声なので、信康は声が聞こえた方に顔を向ける。
其処には、クラウディアとシャナレイが居た。
「これはこれは、聖女様方。このような場所まで何用で?」
信康は頭を下げながら訊ねた。
「なに、変に畏まった事をしているのよ。似合わないわよ」
「そうですね。貴方は、どちらかと言うと、もっと豪放に振舞うのがお似合いですよ・・・・・・ベッドの時みたいに」
シャナレイはポツリと零したが、誰の耳にも入らなかった。
「そうだな。じゃあ、そうさせて貰おうか」
信康は砕けた態度を取った。
「で、お前等。何の用で来たんだ?」
「ふん、ちょっと顔を見に来ただけよ」
「わたしはクラウが傭兵隊の所に行くというので、何があるか分からないので付いてきました」
クラウディアは目を反らしながら、シャナレイは微笑みながら言う。
「はっ。お暇な事で」
「当然でしょう。今回の戦は、去年の戦で良い事が無かった第三騎士団が功績を立てる為の出兵みたいなものなんだから、あたし達神官戦士団と鋼鉄槍兵団は後詰めみたいなものよ」
「はっはは、その通りと言えばその通りだな」
信康はクラウディアの物言いに思わず笑った。
だが、その言葉に間違いはない。
何故なら、第二騎士団も攻城戦に役立つ砲兵師団も共に来てないのだ。
王国議会が出兵を認めたとは言え、この編成なら第三騎士団の者達が、去年の汚名返上をしたいが為に出兵を求めたと言われても不思議ではない。
「ふふ、クラウは本当に率直ね。寧ろ清々しいくらいだわ」
シャナレイは微笑んだ。
「じゃあ、わたしはこれで」
「もう良いのか?」
「ええ、クラウを此処まで送るだけに来ただけだから。では、御機嫌よう」
シャナレイは頭を下げると、自分の部隊へと戻って行った。
何か話があるのかと思ったが違うのかと肩を竦めていると。
『今度はゆっくりとお話を出来る所で、お話しましょう・・・ね』
何処からかシャナレイの声が聞こえて来た。
思わず、信康はシャナレイの後姿を見た。
(魔法か。どうやら俺以外は聞こえてないようだから、余程制御が上手いのだな)
信康は凄い女と知り合いになったのだなと思えた。
「ねぇ、聞いても良い?」
クラウディアはシャナレイの後姿を見送る信康を睨め付ける。
「何だ?」
「シャナレイとは叙勲の儀式の前から知り合いなの?」
「どうしてそう思う?」
「女の勘よ」
「そうか」
女の勘と言われて、信康は苦笑した。
「でも、気を付けなさいよ。あの女には良くない噂とかあるから」
「良くない噂?」
「ええ、色々な男と寝ているとか。男をとっかえひっかえにして遊んでいるって話よ。まぁ、噂だから本当かどうか知らないけど」
「親しくはしているのか?」
「他の聖女と同じ程度の付き合いよ。でも、ルティシアとは馬が合わないのか、よく喧嘩しているそうよ」
「ほぅ、そうなのか」
信康は面白い話を聞いたなと思っていた。
そして、心の中で思った。
(やっぱりな。だと思った)
信康は予想通りだと思った。




