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信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

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第376話

 信康と職員が屋敷の敷地内に入ると、職員は続けて玄関の扉を別の鍵を使って解錠して入った。


 職員は入って直ぐに、明かりを付けて室内を明るくした。信康も続けて入ると、屋敷内を見渡した。


 人に紹介する為か、綺麗に清掃されており埃一つ無い状態だった。更に高級品と思われる、家具もそのまま残されていた。


「・・・外から見ても思っていたが、やはり立派な屋敷だな。早速だが、屋敷の説明をして貰って良いか?」


「はい。この屋敷は地下一階と地上一階の合わせて、二階建ての建物です」


 職員の説明を聞いて、一階建ての屋敷と思っていた信康は驚いていた。


「地下は物置や食料保存庫などがあります。地上一階は部屋数は、全部で二十二部屋。風呂場や食堂、厨房なども含まれます。ザボニーは使用人を住み込みで、雇用していたみたいです」


「成程。部屋の多さは、それも理由の一つか」


 信康は屋敷の部屋数に再び驚いていたが、職員の説明を聞いて納得していた。


「この屋敷だが、厩舎はあるのか?」


「はい、ございます。屋敷の裏手にあるのですが、御覧になられますか?」


 職員にそう尋ねられた信康は、少し思案した後に首を横に振って不要だと伝えた。


「分かりました・・・こちらの書類に署名(サイン)を頂けましたら、その時点でこの屋敷は正式にレヴァシュテイン卿の所有物になります。お願い出来ますか?」


 職員は書類を信康に見せると、信康はペンを受け取ってから二枚の書類に署名した。


 署名した書類を目視で確認した後、一枚の書類と共に鍵の束を手渡した。


「確認しました。これでこちらの屋敷は、レヴァシュテイン卿の所有物となりました」


 手元にある書類を畳んで懐にしまうと、職員は続けて説明を行った。


「そちらは屋敷内にある、解錠に必要な鍵になります。鍵の交換なさる場合は、全て自己負担になるので御了承下さい」


「道理だな。他に注意点はあるか?」


「そうですね・・・内装や外装、庭などは好きに弄っても構いません。ですが塀の外は、隣の屋敷の住人と相談してから決めて下さい」


 信康は職員の話を聞いて頷くと、職員は一礼してから外に置いてある馬車に向かって歩き出した。


 しかし数歩だけ歩くと、職員は振り返って信康に話し掛けて来た。


「私はこれから馬車で役所に戻りますが、レヴァシュテイン卿は如何なさいますか? 役所まででしたら、御送り出来ますが?」


「そうだな・・・いや、良い。俺は屋敷を見て回りたいから、帰ってくれて良いぞ。ご苦労だったな」


 信康がそう言って職員を労うと、職員は再度一礼してから馬車で去って行った。


 職員が居なくなった直後に、信康の腹部からグゥ~と空腹音がなった。


 その空腹音が聞こえたと同時に、シキブが信康の前に現れた。


「少し早いですが、御昼御飯になさいますか? 御主人様(マスター)


「・・・そうだな。頼めるか? シキブ」


「直ぐに掛かりますので、食堂の方で御待ち下さい」


 シキブはそう言うと、早速昼食作りに取り掛かった。


 信康のシキブの言われた通りに、屋敷内の食堂の方へと向かった。



 プヨ歴V二十七年六月二十九日。昼。


 信康はシキブが用意してくれた昼食を食べ終えると、屋敷改め信康邸を一通り見て回った。


 厩舎の方には馬が二十頭程居たのだが、信康が目利きしてみたらどれも良馬ではあったが、所有したいと思う程の名馬は居なかった。


 其処で信康は馬の売却をシキブに依頼し、更に信康邸も任せてファンナ地区内を斬影に騎乗して移動していた。


「厄介払いも兼ねているかもしれんが、あんな上等な屋敷が貰えるなんて嬉しい誤算だったな」


 信康はそう言って、予想外な優良物件を得られた事を喜んでいた。


(あれだけ大きいなら、家政婦(メイド)も雇った方が良いんだろうか・・・?)


 すると信康は家政婦を雇うべきか否かを悩み始めた。何も言わずに、静かに思案を始める。


(費用対効果や効率化だけを考えるなら、全部シキブに丸投げにすれば良い。機密性も保持出来る訳だし、人数ならシキブの分身で誤魔化せば言い訳だしな)


 信康はシキブに全て屋敷を任せる方が、余計な費用も掛からず屋敷内の秘密が守れると思いそう決めようと考えていた。


(・・・いや、駄目だな。来客時や人目がある時、その対応が面倒臭くなる。素性不明な人間が、何十人も居る訳だからな・・・それにどうせなら、美人の家政婦(メイド)を何人も雇うのも悪くない)


 信康はシキブのみに信康邸を任せる事を止めて、家政婦を雇用するのも良いのではないかと思案を始めた。


 それから暫く無言で思案を続けていると、漸く結論が信康から出た。


「・・・雇用を生み出して経済を回すのもまた、上に立つ奴の義務だからな。シキブには俺の傍に居て貰う必要もあるし、此処は何人か家政婦(メイド)でも雇う事にしようか」


 尤もらしい言い訳を並べて、信康は家政婦を雇う事にしたのだった。

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