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信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

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第346話

 ステラとは想定外の場所で出会ったが、これ幸いと話し掛ける信康。


「貴女がステラ・フォン・カマリッデダルでよろしいか?」


「ええ、そうよ。貴方達は? オストルの友達かしら?」


「・・・・・・日頃から、彼にはお世話になっています」


 ステラに尋ねられた信康は、半ば誤魔化す化の様にそう言った。しかしオストルはこの信康の切り返しを、平然と踏み潰す。


「そうなんだよ。最近出来た僕の友達で、シャルの次に親しくしている人だよ」


「へぇ、あの子の次にね。という事は、かなり変わっているのかしら?」


 首を傾げるステラ。ステラの言い分を聞いて、信康は思わず目を見開いた。


(あんたの弟だろう? そんな言い方ってどうなんだ?)


 血が繋がった弟にそんな事を言うのだから、相当変わっていると言う事なのだろう。


「それで、オストル。友達を連れて何の用かしら?」


「うん。ちょっと、ステラに頼みたい事があってきたんだ」


「頼みたい事?」


「うん」


 オストルが頷くのを見てステラは、持っている鋏を脇に挟んで手を叩いた。


 すると何処からかこのカマリッデダル伯爵邸の使用人と思われる、初老の男性が現れた。


「お呼びでしょうか? ステラ御嬢様」


「爺や。客人を客間に通して頂戴」


「畏まりました」


 爺やと呼ばれた初老の使用人が一礼して、顔を上げて信康達を見る。


「それでは、御案内致します」


 初老の使用人が付いて来る様に合図したので、信康達はその初老の使用人の後に続いた。


 


 初老の使用人の後に付いて行くと、豪勢な作りの応接室に通された。


 椅子は何かの動物の革を張っており、その上にはクッションも置かれている。


 テーブルにも真っ白なクロスが掛かっており、その上には高そうな装飾品が置かれていた。


 飾りが付いた戸棚もあり、壁にも絵が数点ほど飾られていた。


「はぁ、流石は五大貴族筆頭分家の屋敷だな。王宮の待合室とは別の意味で圧巻だ」


「そうね」


「そうだね」


「ああ、言えてるな」


 信康が部屋を見ると、ヒルダとリカルドとカインは同意とばかりに頷く。


「よっと、今日はこれを飲もうっと」


 信康達が圧倒されている中で、オストルはまるで我が家に居るが如く振舞う。


 戸棚を開けると、其処には高そうな酒瓶が幾つもあった。


 その瓶の一つを手に取ると、戸棚の下の段を開けてグラスを出した。


 そして椅子に座るなり、そのグラスに酒を注いだ。


「んぐ、んぐ、ぷは~美味しいな~」


 美味しそうに喉を鳴らしながら酒を飲むオストル。


 そんなオストルを見て、信康達は眉を顰める。


「お前、他人の家で其処までやるのは図々し過ぎないか?」


 少しは親しくしているので、全員を代表して信康が苦言を言う。


「ええ~別に良いじゃん。ステラもシャルも、僕の家族みたいなものなんだから」


「そうは言っても、限度があると思うぞ。親しき中にも礼儀ありって言葉、オストルは知らんのか?」


「良いじゃん、別に。君も飲む?」


 オストルは酒瓶の口を信康に向ける。


「・・・要らん」


 そう言って拒否すると、信康は近くにある椅子に座る。


 リカルド達もそれに倣い、思い思いの椅子に座る。




 そして、待つ事数十分後。


「待たせたわね」


 ステラが扉を開けて入って来た。


 先程までの服装とは違い、桃色のシャツに白いフレアースカートに着換えて来た。


 信康達はステラが部屋に入るなり椅子から立ち上がるが、オストルは気軽に手をあげるだけであった。そんなオストルを見ても何も言わず、ただ笑顔を浮かべていた。


「先程はごめんなさいね。オストルが来るとは聞いていたけど、まさか友達を連れて来るとは思わなかったわ」


「いや、こちらも事前に知らせなかったので、礼を失したと思う。お構いなく」


「あら、ありがとう」


 ステラが椅子に座ると、信康達も座り出した。


「改めて名乗らせて貰うわ。私はステラ・フォン・カマリッデダル。第五騎士団の顧問官をしていて、カマリッデダル伯爵家当主補佐も兼任している者よ」


「初めまして、俺はリカルド・フォン・シーザリオンと言います」


「自分はカイン・ド・ホーランドです」


「私はヒルダレイア・オルドレイクと申します」


 ステラは紹介されて行く度に頷いて行く。そして、信康の番になった。


「俺は信康・・・いや、信康・フォン・レヴァシュティンです。よろしくお願いする」


「ああ、貴方と其処のリカルドは知っているわ。事前に王宮から通達もあったし、朝の号外でも書いてあったからね。私の記憶が正しければ此処百五十年間でそれぞれの従属神の祝福を受けて聖騎士に叙勲される例は沢山有っても、六大神から祝福されて聖騎士に叙勲される事例は無かったのに・・・それが今年になって二人も、しかも六大神全てから祝福されて叙勲したと言う話はプヨ中の話題だもの」


 ステラの話を聞いて、本当に凄い事なんだなと信康は強く思った。


「それで、オストル。わざわざ私に、貴方の友達を紹介に来たの?」


「いや、それだけじゃなくて頼みもあるんだ」


「頼み?」


 オストルはステラに、傭兵部隊の兵舎で起こった騒動のあらましを話し出した。


「・・・成程ね。それで、私の所に来た訳か」


「お願い出来るかな? 馬上槍試合トーナメントについて指導出来る人って、やっぱり僕の中ではステラしかいないからさ」


 オストルは頭を下げて頼み込んだ。


 それを見て、ステラは真面目な顔をして考えていた。


「・・・・・・まず聞くけど、二人は馬には乗れるの?」


「ああ、それは勿論大丈夫だ」


「こちらも問題ありません」


 リカルドは実家が男爵家と言う事もあり、馬とは馴染み深かった。実家を出た後も、何度か馬に乗って戦場で戦った事もある。信康に至っては馬の背中で昼寝が出来る程に、乗馬術を極めている。


 そんな二人の事情など知る由も無いステラだが、二人共揃って乗馬に問題無いと聞いて笑みを浮かべた。


「なら、大丈夫ね。良いわ。指導してあげる」


 その言葉を聞いて、信康達は喜びの顔を浮かべた。


「ただし、どんなにきつくても文句は受け付けないわよ。その心算でいなさいね?」


「心得た」


「大丈夫です」


 信康とリカルドは胸を叩きながら言う。


 それを見て大丈夫だと判断したのか、次にステラはオストルを見る。


「それはそうと、オストル」


「うん? 何?」


「貴方の第五騎士団は国境警備の筈だけど・・・どうして貴方は、王都アンシに居るのかしら?」


 ステラは気になっていたのか、オストルに訊ねた。


 事前に来ると聞いてはいても、どんな理由で来るのかは聞いていないようだ。


「ああ、うん。シャルにね。『疲れたから、纏まった休み頂戴っ!』って言ったら『分かった。好きなだけ羽を伸ばして来いっ!』って言って、快く送り出してくれたよっ」


「あの子は・・・・・・・」


 オストルが笑顔で王都アンシに来た理由を話すと、ステラは頭が痛いと言いたげな顔で首を横に振る。


 それを聞いた信康達も、オストルの上官の采配に呆れていた。


((((それで簡単に副団長に纏まった休みをやるとか、どんだけお気楽な団長なんだ?))))


 その後は信康達は早速腕試しがしたいから、準備をする様にステラに言われた。


 信康は指導してくれる事をリカルドと共に感謝して、頭を下げつつ思った。


(結構大きな胸だな。あれだけ大きかったら揉みしだ甲斐がありそうだ。男が寄り付かないって話も本当みたいだし、可能なら口説いてみようかな)


 信康は心中でステラに狙いを定めながら、急いで準備を続けていた。

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