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信康放浪記  作者: 雪国竜
第三章

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第318話

 カロキヤ公国の諜報員である、宝石達をシキブが捕まえてから数十分後。




「・・・・・・う、此処は・・・・・・?」


 四人の一人が目を覚ました。


 そして直ぐに自分がどんな状況になっているか理解した。


 服を剥かれたり覆面を取られたりはしていないが、四肢に触手が絡み付き拘束していた。


 どんなに力強く引っ張っても、触手は千切れる気配はない。


 それでも引っ張るのを止めないで暴れていると、その音で一緒に捕らわれていた三人も目を覚ました。


「此処は?」


「雛。此処は、何処?」


「私も目を覚ましたばかりから、何も分からない」


 自分の暗号名を呼ばれたので、答える雛。


「これって、触手よね? 宝石。魔物か何かに捕まえられたと考えた方が良いのかしら?」


「瑠璃。これは魔物と言うより、魔物の肉で出来た牢屋かも知れないわ。どうして私達は此処に居るのかしら?」


 宝石はそう言って、自分達の置かれているの考察を始めた。


「私達はカロキヤの諜報員(スパイ)よ。捕まえたのなら、牢屋にでも入れるべきでしょう。それなのに、何処だか分からない場所で拘束されているわ」


 宝石の意見を聞いて、瑠璃達は確かにと同意していた。


「なら、此処に居る理由は何?」


「それは」


「おっと、其処からは俺が話そう」


 何処からか、男性の声が聞こえて来た。第三者の声を聞いた事で、自然と宝石達に警戒心が強くなる。


「何処に居るの?! 出て来なさいっ!」


「こっちだよ」


 男性の声は、宝石達の背後から聞こえて来た。


 宝石達が振り返ると、其処に居たのは信康であった。


「黄色い肌の・・・東洋人? 待って、その顔は何処かで・・・?」


 瑠璃が信康を見て何か思い出そうとしていると、宝石が声を上げた。


「まさか最近海賊を潰して戻って来たって言う、傭兵のノブヤスかっ!?」


 宝石が思い出した様子で信康にそう問い詰めると、信康は笑って肯定した。


「はははっ。その通りだ。流石にお前等も知っていたか・・・・・・確認するが宝石、瑠璃、団栗、雛で合ってるよな?」


 信康は一人一人指を差しながら言う。


 自分の暗号名を言われて、驚く宝石達。


 覆面の下からでも驚愕の顔をしているのが信康には分かった。


「じゃあ、その覆面の下の顔を見させて貰おうか」


 信康は覆面を取って行った。全員の覆面を取り、少し距離を取り顔を見た。


 全員が綺麗な顔立ちであった。


 髪色だが雛はセミロングの茶髪。団栗は栗色のセミショート。瑠璃は青髪を一つ結び。宝石は金髪をセミロングにしていた。


 雛は黒色。団栗は緑色。瑠璃は碧眼。最後の宝石は。珍しい瞳を持っていた。


「へぇ、重瞳とは珍しいな」


 信康は宝石の瞳を凝視した。


 重瞳とは、一つの目に瞳孔が二つある瞳の事言う。


 滅多に表れない瞳で信康も十九年生きて来た中で、この重瞳を持っている人物は両手の指で数える位の人数にしか会っていない。


 信康は興味深そうに、その瞳をジッと見た。


「成程。その瞳孔の一つが宝魔眼か。これはかなり珍しいな」


 信康が宝石の瞳孔の一つを見ながら言う。


 信康が言う通り宝石の瞳孔の一つが、カッティングされた宝石が埋め込まれていた。


 この宝石は魔力を込められた、魔石の一種だ。先天性と後天性の二種類に分かれるが、その魔石を持った瞳の事を宝魔眼というのである。


「重瞳で宝魔眼の奴は初めて見たな。名前を聞いても良いか?」


 信康がそう訊ねたが、宝石は口を噤んだ。


 まるで天岩戸みたいに、固く引き締められている。


「もう一度聞くが、名前は?」


 信康がそう尋ねると宝石は唾を、信康の顔に向かって吐き出した。


 しかし唾は信康の顔に、当たる事は無かった。


 何故なら地面から触手が伸びて来た、その唾が信康に当たるのを防いだからだ。


 更に制裁とばかりに壁から触手が伸びて来て、宝石の身体をきつく締め付けた。


「う、ううううっ・・・・・・」


 身体を締め付けられているが、宝石は苦痛に耐えていた。


「「「宝石」」」


 瑠璃達は、苦しんでいる宝石を見て声を上げる。


「シキブ。もう良いぞ」


 信康がそう言うと、触手は締め付けるのを止めて壁へと戻っていった。


「やれやれ、忠誠心が厚いのも考え物だな。いや、この場合は愛国心とでも言うべきか」


 信康は宝石の強情さに、肩を竦めた。


「一応聞くが、お前等も名前を言う心算は無いのか?」


 信康は残りの三人にも訊ねるが、宝石と同様とばかりに口を噤む。


「じゃあ、仕方が無いな。シキブ」


 信康が指を鳴らすと、壁から触手が四本出て来た。


 その触手の先端じゃ、注射針みたいに尖っていた。その尖った先端が、宝石達の首元に刺さった。


「「「「くっ?!」」」」


 尖った先端から何らかの液体が、宝石達の身体の中に流し込まれて行った。


 何かを自分達の身体の中に流し込まれて行く事を、感覚で感じ取った宝石達は信康を睨み付ける。


「何をしたの?」


「そうだな。直ぐに分かる」


 信康がそう言った途端に、宝石達は自分の身体の異変を感じ取った。


「あ、あああ・・・」


「なに、これ?」


「からだがあ、あつい・・・・・・」


「これは、いったい・・・」


 宝石達は頬を上気させて、身体を捩らせた。


「な、なにをしたの?」


「まぁ簡単に言えば、薬を注入したんだよ」


「薬?」


「そうだ。それも通常の薬よりも、効果が百倍にした物だ」


 信康の話を聞いて、宝石達は自分が発情している事が分かった。


「感度が百倍になった状態で、何処まで耐えれるかな」


 信康はそう言って、宝石達に背中を向けた。


「シキブ。後は任せた。絶頂させなかったら、何をしても良いぞ」


「承知しました」


 シキブから了承の声を聞いたので、信康は歩き出した。


「じゃあな。精々俺が次に来るまでは、耐えていろよ」


 信康が手を振ると、宝石が発情している中で声を荒げた。


「覚えていろっ。この状態で私達を放置した事を、後悔するが良いっ!」


「楽しみだ」


 信康はそう言って、その場を離れた。

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