第185話
コニゼリアを部屋に招き入れた信康は、取り敢えずコニゼリアを寝台に座らせた。
そして信康は対面のなる様に、椅子を動かして座る。
「それで、一体どうしたんだ?」
「・・・・・・」
信康がそう尋ねると、コニゼリアは口籠る。
それを見て、信康は首を傾げる。
戦場で集中する為に、信康は誰も夜の相手として誘わなかった。
なのでその分の相手をしてもらいたいと思い、コニゼリアは来たのだと思う信康。
其処の所は所詮は予想でしかないので、本当にそうなのかはっきりさせるべく信康は訊ねたのだ。
何も言わないので、今度は信康がコニゼリアの隣に座る。
すると、コニゼリアは控えめに身体を寄せる。
「どうした?」
「・・・・・・その、こういう場合って、どうしたら良いか分からなくて」
「分からない?」
コニゼリアの意味が分からず、首を傾げる信康。
信康は続きを促した。
「ですから・・・こういった場合はどうしたら、良い雰囲気を出して殿方を誘えるのでしょうか?」
「いや、普通に甘えたら良いだろう」
「その甘え方というのが、分からなくて」
「はぁ?」
「性技とかは教わったのですが、そう言った雰囲気の出し方が分からなくて」
「いや、その性技を教わった人に教えて貰えば良いだろう?」
「教えたのは母なのですが、母曰く『男は美女に弱い。だから、夜部屋に行って身体を寄せたら、向こうが勝手に始める。その流れに乗って、喘ぐ演技をしたりして男をその気にさせれば、後はこちらの思うがままだ』と言ったので」
「あながち間違ってはいないが・・・・・・それはそれでどうだろう?」
確かに、男性はそう言った者が多い。しかし多いと言う言葉は、全員と言う意味ではない。
少ないかもしれないが、逢瀬を楽しむ男性も一定数居るのだ。
そして信康は、逢瀬を楽しむ男性の一人である。
そう言えば、最初に抱いた時も身体を寄せて来たなと思う信康。
(ふむ。処女を奪った、と言うのもあるからな。此処は一つ、俺流のやり方に教えるか)
そうと決めると、信康は行動が早かった。
信康はコニゼリアの肩を抱き、そして自分の方に寄せる。
そのまま引き寄せられる様に、コニゼリアは信康の胸元に倒れ込む。
「~~~~~~~」
コニゼリアは自分の顔を、信康の胸元に擦り付ける。
まるで犬のマーキングの様であった。
信康はコニゼリアの好きにさせて、信康は信康の方でコニゼリアの身体を弄り回す。
プヨ歴V二十六年九月一日。朝。
コニゼリアを抱きながら、信康は眠っていた。
このまま、適当な時間になるまで寝ている二人だと思われたが。
ゴンゴン。
激しいノックの音で、眠っている信康達を起こす。
「あん、何だ?」
「あう~どうしたんでしょうか?」
気持ち良く寝ている所を、無粋な音で起こされて信康は不機嫌にそう声をあげる。
コニゼリアも目をこすり、意識を覚醒させる。
「誰だ? こんな朝っぱらから」
「私です。ノブヤス様」
「ルノワか」
どうしたんだと思いながらも信康は礼儀として、洋袴だけ穿いて扉を開けた。
「どうした?」
「お楽しみの所、申し訳ありません」
扉を開けて開口一番が、それであった。
五感が鋭い黒森人族ダークエルフであるルノワなのだから、信康の身体から漂う匂いで部屋で何をしていたか分かった様だ。
「ああ、うん。それで、何用だ?」
信康は何とも言えず、話を誤魔化す為にルノワが訊ねた訳を聞く。
「先程ノブヤス様に会いたいという、プヨ軍の者達が来ています」
「俺に? 何の用だ?」
「さぁ? 分かりかねますが取り敢えず言えるのが、只事ではないと思います」
「そうか・・・・・・ちぃ、先手を打たれたかもしれんな。取り敢えず、コニー。お前は着替えたら、第四小隊の連中を集めておけ」
何か嫌な予感がすると思いつつ来訪者を待たせたら信康は余計に不味いと思い、舌打ちしながら部屋に引っ込み着替える事にした。