第115話
リカルドと共に、会議室に来た信康。
信康は何の用で呼ばれたのかは、何となくだが察していた。
会議室に入ると、既に信康とリカルド以外の諸将達が集まっていた。其処にはプヨ王国軍アンシ総合病院に行っていた筈のバーンとロイドとカインの姿もあった。
「ご苦労だった。リカルド」
ヘルムートが労いの言葉を掛けると、二人に座る様に促した。
「さて、呼び出してすまなかった。バーン達が戻って来て会議の再開を希望したので、やはり今日で終わらせられるなら終わらせようと思って招集した。なので引き続き、小隊に入れたい候補奴等を決めてくれ」
バーンが一目惚れしたコニゼリアに返り討ちに遭って負傷したのだが、鎮痛剤を貰って帰ってこれたそうだ。今は痛みを感じていないそうなので、心配する必要は無さそうだった。
「バーン。これからまた気に入った娘が出来ても、先刻さっきみたいに途中で抜けるなよ?」
ヘルムートはバーンに釘を指した。再び同様の出来事が発生して、会議が中断されては困るからだ。
「勿論だぜ。総隊長。それから皆、迷惑を掛けて申し訳ねぇ事をしたっ」
バーンはそう言うと席から立ちあがって、信康達に頭を下げた。信康達がもう良いと言うと、バーンは気を取り直して再び席に着いた。それから真剣な表情で、新兵名簿を見ていた。
ヘルムート達も新兵名簿を見て隊員を選んでいるので、リカルドも信康も新兵名簿を見る。
「ライナ。このコニゼリアは当初の予定通り、俺の小隊預かりで良いのか?」
「良いけど・・・寧ろ、あんなの見ても自分の小隊に置ける?」
「何、要は従える様にすれば良いだけだろう。なら、簡単だ」
信康はさも簡単そう言うが、相手はバーンを瞬殺した実力者だ。
なのに、どうしてこう平然としているのだろうと思っていた。
「無理そうだったら、やっぱりあたしの小隊で預かろうか?」
ティファはそう言うが、信康は首を横に振る。
「大丈夫だろう。まだ、そうと決まった訳じゃあないからな」
そうして信康は新兵名簿を見て行くと、ある人物が目に留まった。
Name 劉 鈴猫。
Age 23
National origin 中華共和国
Sex 女
先程会った、女性傭兵の事が書かれた頁であった。
信康この頁を見るなり、ヘルムート達に訊く。
「この四十八頁の上から二番目の女も、俺の小隊に入れても良いか?」
信康は特に女性陣に念入りに訊いた。
女性陣は信康が言った頁を開き、鈴猫リンマオを見て考えた。
「私は良いよ。ライナとテイファはどう?」
「こっちは同じ」
「私も同じく」
女性陣は全員揃って良いと言うので、鈴猫リンマオは信康の小隊への入隊が決定した。
その後も誰かがこの人物が欲しいと言って、訊いて編成した。
偶に被った事もあった。その場合はヘルムートが硬貨投げで決めさせた。
そして会議が再開して数時間後。食堂から片手で食べられるハンバーガーの差し入れを貰いながら会議続けた結果、何とか小隊編成の会議は終了した。
「ふぅ。漸く、小隊編成が終わったか」
カインは自分の思う通りの小隊が出来て、嬉しそうな顔をしていた。
「総隊長。新しく来た新入りやつらの顔合わせは、明日で良いので?」
「ああ、明日する心算だ」
「その時に小隊のオリエンテーションをするって事で、良いですかい?」
「ああ、その通りだ。明日は医療班も手配しているから、多少は手荒にしても構わん」
暗に跳ね返りが居るだろうから、好きに矯正しろと言っていた。
信康達はそれを聞いて、ニヤリと笑った。
『了解です。総隊長』
そして信康達は、会議室を出た。
全員が揃いも揃って、明日が楽しみという顔をしていた。